2014年12月30日火曜日

サーファー波乗りたいしからクリエイター波乗りたいしへの道


僕はいま、有料メルマガを3つ購読している。
一つはホリエモンこと堀江貴文氏の「ブログでは言えない話」、もう一つが藤沢数希氏の「金融日記」、そしてハックル氏こと「もしドラ」著者である岩崎夏海氏の「ハックルベリーに会いに行く」だ。

その中でも、最も熱心に読んでいるのがハックル氏のメルマガで、今年(2014年)の7月から半年間は、氏が主宰する「岩崎夏海クリエイター塾」というものに参加させてもらってもいた。

そのハックル氏が毎週火曜日に連載中の「競争考」をとても楽しみにしているのだが、その記事がいつもにも増して興味深いものであった。
内容は、自分にとって苦手なことを行なうことで圧をかけ、成長へと向かう具体的な方策についてだ。
>>>競争考:その31「自分への圧のかけ方」(2,199字)
http://t.co/QMUYCn6E43 ※有料コンテンツです。

というわけで、今日は「成長への道程」というテーマで書いてみたい。成長とは何か。僕はなぜ、そしてどのように成長していくのか。

これはものすごく重要あると同時に、ひどく語ることが困難なテーマでもある。
なぜ成長について語ることが困難なのか。それは「成長の物語」が持つ二面性がネックになっている。その二面性とは、「成長」が最も人の心を引きつけるということと、最も人を苛立たせるということだ。

成長がなぜ人を惹きつけるのかは、ハックル氏のブロマガに詳しい
>>>競争考:その19「夕陽的とは何か?(後編)」
http://t.co/LmImbRetBZ ※有料コンテンツです。

それと同時に、成長は人を苛立たせる。なぜなら成長を認識しようとすると、その相手を理解しなくてはならない。成長する前は当然未熟なので、その未熟さを受け入れなければならないのだ。

その証拠に、僕のYouTubeチャンネルのあるサーフィン動画の評価を見てもらいたい。現時点で高評価25に対して低評価が31と上回っている。この動画を見ようとする人が、台風の大波を乗る様子を期待してくるのだから当然だ
>>>GoPro Surf:024 Scared By Big Swell 台風スウェルサーフィンで涙目:波乗りたいし
http://t.co/AHbSByBwv0

検索や関連動画でやってくる人たちの多くは、僕の未熟さに耐えられない。そしてそっとダウンサムをつけて去っていく。

しかし、波乗りたいしには一筋の光明が差している。その未熟さと苛立たしさを乗り越えて、波乗りたいしに興味を持ってくれる人がいる。
現時点(2014年12月30日)で767人の方が僕のYouTubeチャンネルを登録してくれている。
>>>チャンネルページはこちら
https://www.youtube.com/user/Howtobreaktherule

そこで僕は調子に乗って、更に大きな分野で挑戦することを考えた。だが、いい加減なコンテンツを作る訳にはいかない。そして、自分にとっても意味のある挑戦でなければならない。それは、クリエイティブな挑戦であるべきだと思ったのだ。

だが、そんな挑戦が具体的にどのようなものであるべきかを、なかなか見つけることができなかった。別チャンネルを作って幾つか動画をアップしてみたが、しっくりこなかった。サーフィンのように情熱を燃やすことができなかったのだ。

そんな時に、ハックル氏の「岩崎夏海クリエイター塾」開催を知った。僕はここぞとばかりに飛びついた。書籍を270万部も売り、クオリティの高いブロマガ(メルマガ)を2年以上、毎日、遅滞無く発行し続ける方に、直接教えを受けることができるこのチャンスを逃す訳にはいかないと感じた。

7月から始まった「岩崎夏海クリエイター塾」はすでに最終回を迎えたが、ここで受け取ったものの大きさは計り知れない。まだ自分でも整理しきれないほどのものを学んでいるので詳しい言及は避けるが、一番すごいと感じるのは、いま僕が必要としていることが全部話されるということ。

僕が岩崎夏海クリエイター塾に求めていたのは、過去の挫折の原因を知り、今を勝ち抜く力を身につけることだった。それが十全になされるばかりか、僕の想像のはるか上をいくものだった。毎回自分に対するカタルシスが、あぁそうだったのか、と突き抜けていくのだ。

僕はレポートブログを書かせてもらっているのだが、これを書くことの効用もかなり大きい。その内容を2時間の中で受け取るのは非常に難しい。だがレポートを時間をかけて書くと、何度も氏が言わんとすることに「潜る」ことになるので、理解が進む 。
>>>波乗りたいし・岩崎夏海クリエイター塾レポート

というわけで波乗りたいしは、サーファーとしての成長に加え「クリエイター」としての成長をコンテンツとしたいと思う。そこで重要となるのが、冒頭で紹介した、「自分に圧をかける」ということだ。
>>>競争考:その31「自分への圧のかけ方」
http://t.co/QMUYCn6E43 ※有料コンテンツです。

クリエイターとしての成長にはこれも重要となるだろう。
>>>成長には負荷が不可避(2,098字)
http://t.co/DYCVCJtZ31 ※有料コンテンツです。


ということで長々と書いてきたが、畏怖するような存在でもあるハックル氏に教えを請い、自分に負荷をかけることで成長し、いつの日かそれが美しい物語としての軌跡を描いているようでありたいと願う。

そして一介のサーファーが描く物語は、こんなタイトルになるだろう。



『海辺の過負荷(カフカ)』

2014年12月20日土曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第十一回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2014年12月6日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する「岩崎夏海クリエイター塾」の第十一回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

2014年7月から始まった第一期・岩崎夏海クリエイター塾も残すところ二回となりました。
一週間後に衆議院総選挙を控え、時代の変化が確実になろうとしているなか行われた授業でメインテーマとなったのは、「物語を紡ぐ」ということでした。
物語の担い手たるクリエイターに求められるものは、一体どんなものなのでしょうか?

一時間目

  • 話すことで得られる気づき
  • クリエイター塾の役割
  • 浮遊層たるクリエイター
  • アベノミクスの行く先は格差の拡大
  • 進歩を予測する

二時間目

  • パロール(発話)


一時間目

話すことで得られる気づき
ハックル氏はあるとき、議論好きのお父様とのやりとりの中で、議論そのものよりも、話しながら自分自身と対話することが重要であることに気がついたそうです。
この気づきを得るためには、聞き流してくれる人の方が良く、伝えることではなく、話すことで自分の考えが整理されることに意味があるのだと言います。

以前、ハックル氏が体調不良の話をブロマガに書いたところ、考えが整理されて体調不良の原因に思い当たったのだそうです。
実際にその原因が正しいかどうかは別として、それが「説得力のある物語」であるかどうかが重要で、これはこれまでの授業で話された「神話」的な働きをしているとハックル氏は言います。

黒い★が教えてくれるもの(1,100字)
( 注:「★」は伏せ字です。お食事中のかたはご注意ください)
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar679042


クリエイター塾の役割
そして、クリエイター塾の塾生に求められるのは、物語の担い手・語り手となることであるとし、状況をgainする方策を提供し、なぜそれをやるのかを説得するために、相手も主体となれる物語を紡ぐことが必要だとハックル氏は説きます。

奇しくも政治が変化の局面を迎えようとしています。
政治の物語はーーその善し悪しは別として、なぜ人々の胸を打つのかを考えることで、どのような物語を紡ぐべきなのかが見えてきます。

多くの人が政治的な傾向として、すでに陳腐化しているものにすがりつこうとしていると、ハックル氏は指摘します。
日本という物語は陳腐化している。しかしながら、国体の維持ーー日本を大切にという物語には間違いがない。というところに安住してしまうのだと。

なぜでしょうか。
時代に甘やかされている、故に歴史に学ぶことができないので、日本がーーひいては自分が恵まれすぎていることを理解できないという病気に冒されていると、手厳しい言葉が並びます。
だから、より国体ーー陳腐化した日本という物語にすがるようになるのだと言います。

そのような人々は、「新しいもの」が来ていることを感じながらも乗っかっていけないのだそうです。
「新しいもの」とは、ホリエモンこと堀江貴文氏のような方の存在であったり、「日本という国体が沈む」という考えのことで、「日本人がババを引く」ことはもはや避けられないとハックル氏は言います。

このことはハックル氏がポリタスに寄稿された記事に書かれています。
"日本という国は今よりも不幸せになるはずだ。"
【総選挙2014】今度の選挙でほとんどの人が対応を誤るたった一つの理由(岩崎夏海)|ポリタス 「総選挙」から考える日本の未来
http://politas.jp/articles/311


浮遊層たるクリエイター
こういったことは、声高に叫べば叫ぶほどに理解されないが、それ故に「出し抜く」ことができる「正論吐きの利」があるのだとハックル氏は言います。
このような混迷の時代にあって、クリエイターは富裕層ならぬ「浮遊層」となることが必要で、ある意味では卑怯ととられることもあるが、「利する方につく」という姿勢で、人として生き残るために物語を紡ぐのだと。
それは陳腐化した物語を捨てることでもあり、陳腐化した物語にすがりつく人々を出し抜き、リーダーシップをもって皆がまだ見えていない、新しい物語を紡ぐことが求められると説きます。


アベノミクスの行く先は格差の拡大
なぜ安部氏の物語は支持されるのでしょうか。
それは「日本を富ませる」という一点の論旨に集中しているところにあるとハックル氏は指摘します。

この「日本を富ませる」という政策は、言い換えれば他国を出し抜き、犠牲にするということであり、
競争を勝ち抜く
→富者を讃える
→トリクルダウン
という構図になります。
これは誰が一番喜ぶかというと、貧困層が一番乗っかりたい構図なのだと言います。
なぜなら他国を犠牲にして日本が儲かれば、自分が働かない状況に安住できるからだという、身も蓋もないものなのだそうです。

しかし実際にはこの政策で競争社会が激化し、富裕層は規制緩和などで更に富み、貧困層は競争にさらされ更に沈んでいくという、格差拡大が待っているとハックル氏は言います。
その理路をブロマガで説明されています。

"「競争に向いていない人」というのは、(中略)競争に負けるとすぐに「社会が悪い」と言い出す。「社会が不平等だから自分たちは負けたのだ」と責任転嫁する。そして「規制撤廃」を叫ぶ。「既得権益の打倒」を目指す。そうして、とことん自由な競争社会を志向するようになるのだ。
そうなると、競走に強い人はもちろん、競争に弱い人も「競争社会」を志向するようになる。おかげで、競争社会は雪だるま式に激化する。加速度的に進行するのだ。"
格差時代の箱船(2,702字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar685629

※引用は塾の後に発行されたものです


進歩を予測する
大きな物語が通用しない今、市井のシャーマンとして生きるためには、どんな物語を描くのか、誰に貢献するのか、どのようなメリットを感じさせ、非金銭的な豊かさを提供すればいいのかという視点が必要であるとハックル氏は言います。

そこで世の動きと呼応するように進化・発展してきた物語のスタイルを知り、さらにこれからの変化を予測することで、いま求められる物語を探ります。

例えば大航海時代にはロビンソン・クルーソーなどの冒険譚が、20世紀に入ると科学の進歩からSF(サイエンス・フィクションorスペース・ファンタジー)小説が流行しました。いつの時代も未踏の地へと誘う物語が人を惹きつけてきたのです。
これはこれまでも話されてきた、「アーリーアダプター」であるということにも繋がります。

そこで実践として、いま世の中の人が予測しているものーーこうなっていくだろうと予測している変化には、どうのようなものがあるかを予想して発表するということが行われました。

まずはハックル氏が例として幾つかの予測を挙げます。
ハックル氏:男女交際する人がますます減っていくだろう。
ハックル氏:YouTubeがコンテンツの価値を変えるだろう。
ハックル氏:4K映像の価値が上がるだろう。映画の価値は代替されないだろう。

続いて塾生が発表し、それに伴って起こるであろう社会の変化を、ハックル氏が一言コメントします。(コメントなしの場合もあります。)

塾生:人工知能が発達するだろう。
ハックル氏:人間の仕事が減るだろう。

塾生(波乗りたいし):バーチャル(VR・SR)が発達するだろう。
ハックル氏:人間存在の意義を脅かすことになるだろう。

塾生:旅行が盛んになるだろう。
塾生:延命措置を望まない人が増えるだろう。

このような変化を土台に、実際にその変化が訪れたらどのような問題が起きるだろうかという「問いたて」をすることが、物語を紡ぐのに役立つとハックル氏は言います。


二時間目

パロール(発話)
後半は、前半の冒頭で話された「話す」ことの重要性を敷衍します。
「話す」ことによるメリットを最大限に活かすためには、アイディアを発表するスキームを早くする、思いついたらすぐに話すというパロール(発話)が重要となるのだそうです。

ということで、ハックル氏によるパロールの実践として、まだ誰にも話していない「ここだけの話」がありました。
※この話の正式発表は数ヶ月先になるそうです。

パロールを実践する環境を整える、話す相手を作ることも重要で、宮崎駿監督は話す内容に応じて、望ましいリアクションをしてくれるであろう話し相手を選んでいたそうです。
ハックル氏の場合はそれをブログで実践しており、ボールを投げることで社会の感触を確かめていたのだそうです。


まとめ
パロールが重要だ!そのための環境を整えることもクリエイティブな活動の一環としてとらえ、自分の考えを整理することで「説得力のある物語」を生み出すんだ!

「市井のシャーマン」たるクリエイターとして物語を紡ぐには、陳腐化した物語を捨て、世知辛さを受け止めたうえで、フラットな視点で未来を見ることが求められるぞ!


終わりに
冒頭のごあいさつでも書きましたが、2014年7月から始まった第一期・岩崎夏海クリエイター塾も残すところ二回、つまり次回で最終回となりました。
この半年で、クリエイター塾のまとめブログを書くことにしたり、SNSでの活動を始めたり、自身の生活を変えたりと、いろんな変化がありました。
それでもまだ、自分の心の中で何かがゴトゴトと音を立ているのを感じ、もっと継続してハックル氏に学びたいと思い、第二期・岩崎夏海クリエイター塾への参加を決めました。
岩崎夏海先生を始め、関係者や塾生の方々におかれましては、どうぞよろしくお願いいたします。


岩崎夏海クリエイター塾、第2期開講のお知らせ

岩崎夏海クリエイター塾、第2期開講のお知らせ。
http://genjiyamaro.com/archives/684


最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html

2014年12月13日土曜日

Mom's 1st Birthday ママも1歳サプライズやってみたω


皆さまこんにちは、波乗りたいしです。


以前ネットで話題となっていた、パンパースによる宣伝動画「MOM’S 1ST BIRTHDAY ママも1歳、おめでとう」を見て、これはやらなくては!と思っていました。
そこで、息子であるもとむくん1歳の誕生日にサプライズを仕掛けました!


公式サイトはこちらです
http://www.jp.pampers.com/moms-1st-birthday


話題のパンパース公式動画はこちら


いろいろなサイトで紹介されていました。

Rocket News24
『赤ちゃんの1歳はママの1歳』をテーマにした日本の宣伝動画に海外ユーザーが「ボロ泣きした!」「妻が夫から一番聞きたい言葉」と感動の嵐に!!
http://rocketnews24.com/2014/10/08/495160/


Huffingtonpost
「ママも、おめでとう」赤ちゃんの誕生日にパパが仕掛けたサプライズ【動画】
http://huff.to/1ALYvb6


ねとらぼ
赤ちゃんの1歳はママの1歳 パパからのサプライズに思わず涙 - ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1408/05/news105.html


僕が仕掛けたサプライズの様子はこちら!
Mom's 1st Birthday ママも1歳サプライズやってみたω ベビちゃんねる

僕が仕掛けたサプライズは、誕生日に自宅へ帰ってきたら壁に妻ともとむくんの1年間の写真が飾ってあるというもの。
誕生日当日は妻のご両親が経営する実家の料理店で、親兄弟を呼び誕生会を開催する予定でした。

そこで、自宅を出て歩いて10分程度の実家に向かい、誕生会が終わるまでのどこかで写真をセットする必要がありました。
抜け出すチャンスは一箇所のみ、予約していたケーキを取りに行く時でした。
急いで写真をセットし、何食わぬ顔で――妻には遅いと思われていたようですが――誕生会を開始。

問題はサプライズの様子を撮影するカメラをいつ設置するか、ということでした。
僕が考えていたシナリオは、自宅に帰る途中で妻に夕食の買い物に寄ってもらい、僕ともとむくんは先に帰ってカメラを設置するというもの。
GoProとiPhoneで別角度の映像を撮影するつもりで、予行練習をしていました。

ところが、お義父さんが荷物が多いからと車で送ってくれることになり、その時間を作ることができなくなってしまいました。

車が自宅マンションの下についたとき、苦肉の策として僕はとっさに「(荷物が多くて大変だから)荷物は俺が全部運ぶから下で荷物を見てて!」と言いました。
自宅は3階建てマンションの3階なので、階段で運ばなくてはならないのです。

妻は少し訝しげな顔をしながらも、一旦は了承してくれました。
ところが3階についたところで、妻が荷物を持って階段を上がってくるではないですか。
慌ててGoProだけを予定していた場所に設置し、録画をスタートした瞬間に妻が玄関から入ってきました。

ギリギリでしたが、何とかサプライズに成功(・∀・)!!
妻も喜んでくれたようで良かったです。


それでは皆さま、またあそぼーね!


2014年12月3日水曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第十回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2014年11月22日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第十回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

前半では映画と音楽を通して、クリエイティブの本質に迫ります。
後半は、これまでの「本質」を巡る旅を一休みし、「表面」について学びます。

本日のメニューはこちら!

前半
  • クリエイティブの本質は演技に宿る
  • 感情の駆け引き
  • 不幸への志向
  • 生と死を超越する歌
  • 生きる構え

後半
  • 協力者を「倒す」6ステップ
  • 美的感覚を磨く


前半

クリエイティブの本質は演技に宿る
演技というのは、非常にクリエイティブな営みです。
そして演技のクリエイティビティとは、常に二つの問いに直面することで生まれるのです。

 ・自分を役に近づける
 ・役を自分に近づける

ユダヤ人俳優は前者、イタリア人俳優は後者からアプローチする傾向があるものの、やはりこの矛盾したふたつのアプローチを同時に行なうことになります。
この、相反する要素を携えていることはクリエイティブおいて重要な意味を持ちます。

「似ている」というのが「同じ」と「違う」を持ち、「夕陽」が「昼」でもあり「夜」でもあるというように、その境界線に人は否応なく惹かれるのです。


感情の駆け引き
宿題となっていた映画「セント・オブ・ウーマン(Scent of a Woman)」の名シーンから、演技の真髄を感じとることができます。

高校生のチャーリーと訪れたニューヨークのホテルで、スレード中佐はチャーリーを買い物に向かわせます。
心の引っ掛かりを覚えたチャーリーが途中で引き返すと、スレード中佐は軍服に身を包み、かねてから計画していた自殺を実行に移そうとしています。




ほぼインプロヴァイゼーションで行われたこのシーンでは、生と死を巡る崖っぷちで、ギリギリの感情の駆け引きが展開されます。
スレード中佐は「本気で自殺をしたいが本気で止めて欲しい」というアンビバレントな感情の中、死ぬきっかけと生きるきっかけを同時に探します。
そしてこの戦いの末にチャーリーもが死を覚悟したとき、人は引き裂かれた感情の発露を認知するのです。

この映画でアル・パチーノは演技の極北を見せつけ、ゴッドファーザー PART IIで逃していたアカデミー主演男優賞を受賞しました。

アリストテレスは演劇について、架空のものとして認知しながら、感情移入してしまう矛盾にこそ本質的スパークがあり、「嘘」こそが最大の舞台装置であるとします。
演技におけるリアリティとは、嘘であることを表現するということなのです。


不幸への志向
多くの人が武器のないままにクリエイションの世界に飛び込んできます。クリエイションを分析すればするほど、人生が世知辛く、本質的に耐えがたい苦痛に満ちていることがわかるのですが、それを理解していないのです。

人間は幸せになりたいとは思っていないのです。幸せな状態にあると死ぬことが辛くなるので、本能的にブレーキをかけるのです。これはフロイトの「タナトス」という言葉で定義されています。

だから人は少しずつ小さな不幸を集めていく必要があるのです。それがブルーハーツ「情熱の薔薇」の歌詞にも現れていますが、多くの人が十全に理解できません。

なるべく小さな幸せと
なるべく小さな不幸せ
なるべくいっぱい集めよう
そんな気持ち分かるでしょう

こういった本質に触れることは、パンドラの箱に手をかけるようなものでもありますが、人間という存在自体の虚しさを超越した「メタ視点」で捉え、エンタテインメントに落とし込むことで、人々に幸不幸の入り混じったしみじみとした感情を引き起こさせるのです。


生と死を超越する歌
森進一のヒット曲「襟裳岬」は、女性問題とそれを苦にした母親の自殺から苦境に立たされた森進一と、同様の問題を抱えていた吉田拓郎が互いにシンパシーを得て、共鳴するように乾坤一擲の曲を生みだし、大ヒットとなったものです。

この「人生って何なんだろう」というやるせない感情の元に吐き出される「えりぃ~~ものぉ」がロンギヌスの槍となって森進一を貫き、その様が鑑賞者にカタルシスを与えるのです。

この生と死の交錯する瞬間こそが人生の本質であり、森進一が「えりぃ~~ものぉ」と歌い上げ、フランク・スレード中佐が「I'm in the DARK!」と叫ぶとき、彼らは「素晴らしいもの」を超越した「クリエイティブの真髄」に到達しているです。

ハックル氏はこの瞬間を、「Touch」するという表現で、クリエイターがたどり着くべき境地として定義します。


生きる構え
そこまでしてクリエイションに向かわなければならないのかと問われれば、「仕方がない」と返すほかないこのクリエイターが果たすべき役割ですが、人々の犠牲になることで「Touch」に至ることができ、世知辛さの中に一服のしみじみとした感情を鑑賞者に引き起こすのです。

ここまで話されたような心持ちを得るには、ヘーゲルの「ジンテーゼ」という概念が役立ちます。

テーゼ(命題)とアンチテーゼ(反命題)を総合的に一つのテーゼとして説明できることを言う。
ジンテーゼとは - はてなキーワード
http://d.hatena.ne.jp/keywordtouch/%A5%B8%A5%F3%A5%C6%A1%BC%A5%BC


普段の生活とそのオポジット(対極)、そして課題と課題を拒むもの、両方を同時に達せられることは何か、という問いを立てることが重要なのです。

例えば、「伝える」ということについていえば、テーゼ・「伝える」に対するアンチテーゼ・「伝わらない」があり、このジンテーゼは「伝えようとしないほど伝わる」というものになります。


後半

協力者を「倒す」6ステップ
クリエイティブは一人ではできないため、協力者が必要です。
では質の高いクリエイションに向かうとき、その協力者とどのような関係を築けばいいでしょうか。

それは、「Win-Win」を越える関係ーー「倒す」。
さらに言えば「圧倒する」ことが必要です。

「倒す」ことを学ぶには、塩野七生「ローマ人の物語」のカエサルの章を読むといいでしょう。

クリエイションは内容が大切と思われがちですが、多くの人はその良し悪しを判断することができないためーーもちろん自分自身は判断できなければなりませんがーーもっと大切なことがあります。

それは、
1.外見
2.相手を理解する
3.弱点を演出する
4.予測と裏切り
5.三手先の嘘
6.感情を出す
というもの。順に見ていきましょう。

1.外見
ファッション、身のこなし、話しかた、話すタイミング、相づちの打ちかたが重要です。
こと声の発しかたについては、低音で相手の「肌のうぶ毛を震わせる」ように話します。
オタクの声が高いのは、相手に拒否を示す無意識の抵抗なのです。

2.相手のことを理解する
前提として、人は相手を理解したくないという壁があります。クリエイションに向かうためにはその壁を乗り越えなければなりません。
相手の来歴、目的、志向などをプロファイリングし、嘘をつき、説得し、誘惑するのです。人を人とも思わない姿勢と、「自分のための犠牲にする」という断固たる決意が重要です。

3.弱点を演出する
・気が狂っている
・感情的
・子どものようだ
・利己的
・ひとりよがり
などの欠点を演出します。特に「気狂い」であるというのは、「気狂いだからクリエイティブ」という交換の概念が働きやすくなります。
3年程度は気狂いとなる覚悟を決めて、人を倒す道を極めるべきです。

4.予測と裏切り
村西とおる監督の愛人とされるAV女優・黒木香がヒットした要因である、
・お嬢様「なのに」AV女優
・上品「なのに」わき毛
という「なのにの演出」を参考に、どのような予断を抱かせるのかの戦略を立てる必要があります。
自分がやろうとしていることのイメージを反転させるような予断を演出します。例えば「身なりのいい人が気狂い」などがわかりやすいでしょう。

5.三手先の嘘をつく
予断を抱かせるというのは、「ばれる嘘をつく」ということでもあります。そうすると相手に「利用できる」と思わせることになるのですが、ここで相手に嘘がばれていないと思っているフリをすることで、先んじることができます。

6.感情を出す
嫌われることを怖れるのは、自身の無価値性への怖れでしかありません。
これを乗り越えるには、自分が無価値であることを認めることが必要です。
感情を出すことによって人間関係が上手くいかなくなる先に「倒す」道があるのです。


美的感覚を磨く
これまで見てきたように、相手を「倒す」道を進む決意をした人間が、「Touch」していなければ、クリエイティブの道はうまくいきません。
これには「美」が助けとなるでしょう。

人間の目はすぐに汚れてしまうので、美のセンサーの感度を常にメンテナンスする必要があります。
美的感覚を養うというのは「違いを見抜く」ことであり、「美しい歪みとは何かがわかる」ということです。
「違いを見抜く」ことは田山幸憲「パチプロ日記」で紹介されているパチンコ台の釘を見る方法が、後者は「開運!なんでも鑑定団」の中島誠之助氏が持つ審美眼が参考になります。

この能力を磨くには、美しいものに囲まれる生活をすることが必要です。
「歪みの美しさ」を知るには、順に
・ポール・セザンヌ
・ゴッホ
・アンリ・ルソー、サルバドール・ダリ
がお勧めです。

アンリ・ルソーとサルバドール・ダリは、ハックル氏が高校生のころ折に触れて図書館にこもり画集を見ていたそうで、いま振り返ってみるとその経験が審美眼を養うこととなったということでした。

そして、審美眼を養う副次的な効用として、自分と接する人の能力を測ることができます。
ハックル氏に接する方の評価は、
・モテる or モテない
・頭がいい or 頭が悪い
・文章が上手い or 文章が下手
というようにさまざまな点で両極端に分かれるのだそうですが、そこで悪い評価を下してしまう人を「美的感覚が劣っている」と判断し、リストから除外することができるそうです。


まとめ
「演技」と「歌」から導き出される人生の本質は、やるせないほどに世知辛いものだ。でもその矛盾する要素に感情が引き裂かれるような場所にこそ、「Touch」は待っているんだ。

クリエイションは中身が大切?いえいえ、大事なのは「見た目」。そこをきっかけに、協力者をいかに「倒す」かを考え続けよう。美的感覚を養うことも忘れずにね!


終わりに
前回のまとめにも書いたのですが、11月はあらゆる面でハックル氏漬けの一ヶ月でした。

ハックル氏がクリエイティブについて語るとき、それは心の奥底にある大切なものをそっと掬い出してくれるようでもあり、触れたくなかったもの、思い出したくもないことをかき乱されるようでもあります。
そしてクリエイティブへの道のりは素晴らしく光り輝いても見えるし、とても苦しい受難の道にも思えます。

この相反する思いに魂を揺さぶられ、意識の変容を受け入れるとき、それが自身のこれまでの人生を質し、生活態度や身のこなし、話し方にまで影響を及ぼしていることに気がつきます。

この旅も残すところあと二回となりました。
どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。

今回授業の関連メディアはこちらです。
※Amazonアソシエイトリンクを使用させていただいております。

セント・オブ・ウーマン(Scent of a Woman)


ゴッドファーザー PART II


アリストテレス


フロイト


ブルーハーツ「情熱の薔薇」


森進一「襟裳岬」


ヘーゲル


黒木香「SMぽいの好き」
SMぽいの好き 黒木 香 [DVD]

田山幸憲「パチプロ日記」


中島誠之助「「開運!なんでも鑑定団」の十五年 」


塩野七生「ローマ人の物語」




最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html

2014年11月26日水曜日

神はいるか


朝日と夕陽は、僕にとっての神である。
僕は最近そのことに気がついた。


子どもの頃、僕はマンションの4階に住んでいて、その南側のベランダから見える景色を眺めるのが大好きだった。特に気に入っていたのは、沈んでいく夕陽が空を赤く染め、遠くに見える富士山をシルエットだけに切り抜いていく夕焼けだった。


二十歳前後の数年間、僕はトラックの運転手をしていた。
まだ暗いうちに出発して目的地に向かうとき、少しずつ本来の力強さを取り戻しながら昇っていく朝日を浴びながら運転するのが大好きだった。


僕がサーフィンを始めたのもちょうどその頃だった。
まだ暗いうちに海に着き、白み始めた空が朝と夜のグラデーションを描くうちに、ひっそりと海に漕ぎ出すことは、何か美しい世界の神秘の裏側にそっとふれるような感覚があった。


その後、僕は雷に打たれるようにしてクリエイターを目指すことになったのだが、うまくいかなかった。挫折したのだ。数年ののち、転がるようにしてそこから逃げ出した。


僕は朝日からも夕陽からも遠ざかってしまった。僕はクリエイターになるためにサーフィンを一度やめたのだ。好きなことを我慢して挑戦しなくてはいけないと思ったからだ。
だが、それらの価値についてわかっていなかったことが、僕が挫折した原因の一つと考えるようになった。


挫折の経験は僕にとって苦いものだった。僕は自分の人生を損なってしまったと感じていた。その先には何も希望はなかった。悔しさと情けなさと苦しさだけが残った。
だが僕には、サーフィンがあった。
僕は、また美しい世界の神秘の裏側に触れ始めたのだ。


そんな時に、ある人に出会った。その人は、僕がまだ正確に掴むことのできない、美しい世界の神秘の裏側について語っているように思えた。

美しい夕陽を見ることの意味(2,114字)
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar68390


そして紆余曲折を経て、僕はまたクリエイターを目指すことにした。
7月から半年間かけて、岩崎夏海クリエイター塾でクリエイティブの真髄について学んでいる。
表現の形式はなんでもいいと思う。
僕はただ、あの頃に見た美しい夕陽の、その裏側にそっとーー愛する人の髪を撫でるように、触れたいのだ。


そして神とは、圧倒的な沈黙の中で自分の進むべき道を指し示す存在なのだ。
その道は誰かのドグマに従うことではなく、自身の生活の身近なことに聖なるものを見いだす心性への道のりなのだ。

2014年11月21日金曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第九回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2014年11月1日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第九回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

本日のメニューはこちら!

前半
  • 盗作で屠られる人々と本質を盗むハックル氏
  • 名作が教えてくれる本質へのアプローチ
後半
  • 凡庸で無個性な主人公
  • 共感アンケート
  • 問題の本質にアプローチする
  • 簡単だけど難しいクリエイト


前半

盗作で屠られる人々と本質を盗むハックル氏

コンテンツの価値とは何かを探る、岩崎夏海クリエイター塾。今回はコンテンツを巡る、ある問題が取り上げられました。
ネット上でフォロワーを稼ぐための「パクツイ」や、ネット上で盗用するならまだしも、それらの画像を集めて出版までしてしまったK氏などの「盗作」にまつわる多くの問題がありました。

こうした問題を見るにつけ、ハックル氏の胸にはいつも複雑な思いが去来するのだそうです。

なぜなら、ハックル氏は自身を「盗作家である」と自認し、オリジナリティーなどというものを持たず、盗作しかしていないにも関わらず、誰からも訴えられず問題にもならないからだと言います。

そのようなハックル氏自身の意識との乖離がなぜ起こるのか。それは、多くの人が作品の表面的なものにしか価値を置いておらず、世の中で騒がれているものは盗「作」などではなく、ただの「横流し」で何の価値もないからだと断じます。

両者の違いとは何でしょうか?
それは、「本質に目を向ける」ことだとハックル氏は説きます。
「本質」はいくら盗んでも訴えられることはなく、作品を世に出すのならば、本質に目を向ける能力を身につける必要があると言います。

著作の一つである「もしドラ」で何を「盗んだ」のかがわかるブロマガ記事です。

[連載第4回]「もしドラ」はなぜ売れたのか?「アーカイブからの引用」 (2,592字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar14359


ここで、社会における「理想論」とは何だろうか、という問いかけがありました。
このひどくあいまいで、主語のない言葉は、誰にとっての理想なのかと。
そして「競争社会」はなぜ行われているのか。
なぜ人間、ひいては動物がこの世に出てから今日に至るまで、あらゆる社会で競争が行われ、これからもそれが続いていくのか。

それは、「適度に殺される」ことが合理的で理想的であり、「競争」こそが社会にとっての「理想論」だからだとハックル氏は説きます。
そして「競争社会」においては「皆が幸せ」は不可能で、競争に勝ったものだけが幸福に浴するのだと言います。

ハックル氏は正義的な想いから、本質に目を向ける能力を身につければ、訴えられることなく作品を作ることができるということを伝えようとしてきたそうです。
しかしながら、その思いが伝わらないという経験を多くした後、この考えに至ったそうです。
そして彼らーー著作権絡みの問題を起こす人間は、嬉々として「屠(ほふ)られる」側として生きているのだと結論付けます。

物事の表面をなぞるようにして問題を起こし、敗れて叩かれて社会や業界から屠られる、競争社会であるが故に生まれてくる存在を「STAY」する必要性を学んだのだそうです。

この残酷さをどう受け入れるのかについて、ブロマガ連載の競争考で触れられています。

だから、論理的に考えれば、人間は死や敗北を肯定的にとらえるしかなくなるのだ。死ぬことはいいことだ、負けることはいいことだ――ととらえることで、初めてその人生や存在を肯定できるようになるのである。競争考:その7「残酷さの受け入れ方」(1,813字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar544482


名作が教えてくれる本質へのアプローチ
では、どうすれば表面的なものにとらわれず、本質に迫ることができるのでしょうか。
これには判断の難しさがあり、なかなか本質にたどり着くことができないため、本質にいかにアプローチするかを学ぶ必要があると、ハックル氏は説きます。

そこで、宿題となっていた、小説「第九軍団のワシ」を「疑いようもなく面白いもの」として読むことができたか、ということが重要であるとして、なぜ著者であるローズマリ・サトクリフがこのような魅力的な作品を上梓できたか、執筆に伴う数々の障害をどのように「ジャンプ」したのかについて話されました。

ハックル氏によれば、著者は本質にアプローチする方法を学ぶことで、
・女性でありながら魅力的な男性的世界観を描く
・脚が悪かったにも関わらず疾走感あふれる描写を行なう
というように、空想で現実の壁を破るーー「ジャンプ」することに成功したのだそうです。

では、著者が採った本質へのアプローチとはどんなものだったのでしょうか。
それは、主人公・マーカスがある特徴ーー「矛盾した要素」を持っていることがヒントになります。

多くの鑑賞者がマーカスの矛盾が壁となり、魅力を感じることができないそうですが、この作品で魅力的に思えないシーンがあったとすれば、それは鑑賞者に問題があるのだとさえ、ハックル氏は言います。

これは、本質を見抜こうとする心持ちが、矛盾や葛藤ーー自分自身のものでもあれ鑑賞の対象となっているものであれーーを携えて生きていく、という決心の向こう側にあるのだということを教えてくれるのです。

このことを始めとして、作品中やハックル氏の日常の出来事や分析の中から、矛盾と葛藤を受け入れる心性の例が話されましたが、ここではトピックの提示のみに留めたいと思います。

・制限された中に美を見出す
・信用しないことの価値
・幸運は不幸の形をしてやってくる
・失敗はあえて怒る
・純粋なまでに不純な子ども
・自分を他人のように見る客観性
・無個性に怯える個性派


しかしながら、ものをつくるために価値観の本質に迫る道は、ある意味では社会性や生きやすさに逆らうバイアスを持つために、非常に生きづらくなってしまう可能性があるとハックル氏は指摘します。
その過程でよくないものーー反社会的なものに頼ってしまう人もいます。
ハックル氏が好んで見るテレビ番組のひとつである「なんでも鑑定団」で紹介される偉人たちが、早死にか長生きかのどちらかであることを例に挙げ、バランスをとることに成功するかどうかが、その命運を分かつことになると言います。

このようなリスクがあるにも関わらず、好奇心を満たすこの道は、その代償を払うに値する面白さがあるのだとして、授業の前半を結ばれました。



後半
前回の授業では、物語に洗練された世界観を付与する方法として、「問題解決思考」について話されました。
今回はクリエイトの本質である「換骨奪胎」において壁となる「味付け」についてが語られました。


凡庸で無個性な主人公
多くの人がコンテンツを作る際に陥りがちな過ちとして、「主人公が個性的である」というものがあるそうです。
ですが、主人公は凡庸で無個性であることが必要であるとハックル氏は言います。

そして、これまでに日本で生み出されてきたあらゆるコンテンツの中で最も理想的な主人公は誰か。日本人なら誰でも知っている、凡庸で無個性な主人公は誰かという問いかけがありました。

それは、「ドラゴンクエスト」の主人公であるとハックル氏は言います。鑑賞者ーードラクエで言えばプレイヤーは、無個性な主人公に自分を反映させることでその物語に入り込むのだそうです。
これは第三回授業での「究極のコンテンツは『観ている者の内面を反映する鏡』のようなものである」ということと繋がる部分があります。

そして、さらに共感を得る効果的な方法として、「欠点」を与えることが提示されました。
人は自分の持つ欠点に惹きつけられるため、多くの人が共有できればできるほどいいとハックル氏は言います。

ハックル氏はこの例として「電車で酔っ払いに注意できない」ということを挙げます。
これは「自分には勇気がない」という、多くの人から共感を得ることができる欠点であり、
・スターウォーズ
・バックトゥザフューチャー
・ドラえもん
などのコンテンツでこの欠点が使われていると指摘します。


共感アンケート
続いて、どんな欠点が共感を得ることができるのかを全員が考えて発表し、それに対してそれぞれが一人三票の持ち票で投票するという形式で、共感アンケートが行なわれました。

その結果を上位3位まで発表します。
一位・お金がない(10票)
二位・コミュ障(7票)
三位・友だちがいない、感情的、お金を稼げない、人から評価されない(各5票)

このように、人が何について悩み解決できずにいるのかを考え、ーー解決できるものではないが、何が根本的な問題となっているのかを見つけることが重要であるとハックル氏は言います。




問題の本質にアプローチする
問題の本質を見抜き、どのように向き合っていくべきなのか、ここでは幾つかのケースを例に挙げながら、このプロセスについて説明がなされました。

小説「第九軍団のワシ」で、主人公のマーカスは旅の終わりに、心の拠り所として苦しみのなかで思い描いていた故郷を、捨てることを選択します。
このことが「親を大事にすることは、本質的ではない」という考えに繋がることを示します。
なぜなら多くの場合、親や老人を大切にすることは、自分もそうして欲しいという感情からきているからだとハックル氏は指摘します。

本当に大事なのは、人の生命は軽いが故に世界が回っているという厳然たる事実を受け止め、その生命の循環に思いを馳せる心性なのだと。ある意味では、前半で取り上げた競争社会で敗れて屠られる人と同様に、いつかは自分もその循環の中に否応なく飲み込まれていくのだという覚悟を持つことだと、ハックル氏は説きます。

※再掲※だから、論理的に考えれば、人間は死や敗北を肯定的にとらえるしかなくなるのだ。死ぬことはいいことだ、負けることはいいことだ――ととらえることで、初めてその人生や存在を肯定できるようになるのである。競争考:その7「残酷さの受け入れ方」(1,813字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar544482

つまり、マーカスは故郷に帰るか現在の場所に留まるかという問題に対し、「親ーーひいては故郷を大事にしない心性」で故郷を捨てて辺境で生きる決断を下したのです。

他にも幾つかの例が挙げられましたが、ここではひとつだけ取り上げるに留め、他はトピックの提示のみとさせていただきます。

・努力放棄の非モテスパイラル
日本の底辺層に欠けている加害者意識
・武井壮氏のセクハラ炎上は三方よし


簡単だけど難しいクリエイト
そして最後に、次回の宿題となった映画「セント・オブ・ウーマン(Scent of a Woman)」のワンシーンを手掛かりに、クリエイティブへと向かう心持ちを敷衍します。

アル・パチーノ演じるスレード中佐が、ベアード校の公開討議で窮地に立たされたクリス・オドネル演じるチャーリーを救うために演説を打つ感動的なシーンです。

私も何度か人生の岐路に立った
どっちの道が正しい道かは判断できた
いつも判断できた
だが、その道を行かなかった
困難な道だったからだ
Now I have come to the crossroads in my life.I always knew what the right path was; without exception, I knew. But I never took it. You know why? It was too...damn...hard


多くの人は誤った道を選んでいく。
正しい道は、自分を犠牲にする道に踏み込んでいくことである。正しい道に飛び込んでいくことは、困難を選び取ることである。
困難と向き合いクリエイティブな道に進めば、その真髄にたどり着き、素晴らしいコンテンツをいとも簡単に生み出すことができるのだとして、授業を締めくくられました。


まとめ
クリエイターならば、物事の表面的なものに価値を置かず、本質に目を向けよう。そのためには、矛盾や葛藤を携えて生きていく決心が必要だよ!

問題の本質を見抜き向き合うためには、受け入れ難いことを受け入れる心性が必要だ。正しい道は困難な道だが、その道を進めばクリエイティブの真髄にたどり着くよ!


終わりに
今月は岩崎夏海クリエイター塾が二回と池袋のニコ生本社でのヘヤカツイベント、岩崎夏海エンタメサロンとハックル氏主催のイベントに参加し通しの一ヶ月です。

そして、毎週月曜日のハックルテレビに加え、毎日のブロマガ、時々YouTubeのハックルTVと、さらにはこのまとめブログもかなり時間をかけて書いているので、その間も過去のブロマガを何度も読み返してまさにハックル氏まみれです。

それでもまだハックル氏の持つコンテンツの奥行きには、底が見える気配がありません。まだ潜っていかなきゃいけないのかと、時々息苦しさを感じるほどですが、これこそが僕が求めていたものという確信があり、好奇心は尽きません。


最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html

2014年11月11日火曜日

波乗りたいしはアートである


「波乗りたいしはアートである」そのことに気がついた、というよりもそう思っていいんだと知った、と言った方がいいだろうか。
とにかく僕はある映画を観た後に、深々とため息をつきながらこう思ったのだ。
「そうか、僕がやっているのはアートなのか。」


その映画とは、ハックル氏のブロマガで紹介されていた、「イル・ポスティーノ」という映画だった。

週末に見たい映画#010「イル・ポスティーノ」(2,651字)
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar124820


映画「イル・ポスティーノ」は、イタリアの小さな港町に住むさえない青年ーーマリオが、世界的に有名な詩人ーーパブロ・ネルーダが亡命してきたことをきっかけに美しい詩の世界に触れ、その人生が大きく変わっていく様を描いた、とても美しい映画だ。
主人公は映画の中で、祖国へ帰ってしまった詩人ーーその時には彼にとってかけがえのない友人となっていたーーのために、詩人の詩に触れる前は気にも留めていなかった自分の住む島の美しさを、何かにとりつかれたように熱心に、録音機に収めて回るのだ。


僕はそれを見て、あぁこれがアートっていうことなんだろうなと、これがアートという何か正体のつかみづらいものの、しっぽのようなものなんだろうなと思ったのだ。
アートの原点は、自分の身近にある紛れもなく美しいものを、いま自分が持っている最大限の技術で誰かに伝えようとすることだと思ったのだ。


翻って波乗りたいしの美しさとはなにか、ひいてはサーフィンの美しさとはなんだろうか。それは、「移動」と「変化」である。
寝静まった街をこっそりと抜け出し、まだ寝ぼけまなこの首都高を走り、大いなる自然へと向かって行く、この「移動」のダイナミズムが美しい。サーフィンはサーフィンに行くことそのものが美しいのだ。


そしてサーフィンは「変化」のスポーツだ。上手くなる一歩ごとに、見える景色が変わっていく。
初めは板の上に這いつくばった景色が、立てるようになると一気に視点が上がる。
さらに横に進むことを意識するようになると、その奥行きに感動を覚える。もっと上手くなればもっと違う景色に出会うはずだ。


そして当たり前といえば当たり前なのだが、波は常に「変化」する。変化する波の奧へ奧へと「移動」する。このときに感じる高揚感は、紛れもなく「変化」と「移動」が組み合わさった、無意識に感じる美しさからくるのだ。


そういうわけで、僕はサーフィンをとても美しいものとしてとらえていて、それに取り組む「成長」という名の「変化」を、いま僕にできる最大限の技術でYouTubeを通じて公開している。

そう、波乗りたいしはアートなのだ。
https://www.youtube.com/user/Howtobreaktherule


またあそぼーね!

2014年11月10日月曜日

苦手を克服する


皆さまこんにちは、波乗りたいしです。

ハックル氏ブロマガのシリーズである「競争考」が実践的な内容に突入し、面白味を更に増してきた。
せっかくなので、実践してみようと思う。

競争考:その27「苦手を克服する」(2,051字)
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar652409


ハックル氏は苦手意識というのは、怠けるための言い訳に過ぎないと指摘する。正にそうだと思う。僕にとっての苦手意識は、「昼行性」と「規則正しい生活」である。
なので、この2点について掘り下げて行き、どう改善すべきかを考えたい。
ところでなぜ「昼行性」と「規則正しい生活」を獲得したいかというと、ひとつにはハックル氏のブロマガでクリエイティブであるための重要な要素として挙げられていたからだ。

クリエイト活動に最適な環境とは?(2,400字)
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar345039


岩崎夏海クリエイター塾に通うくらいなので、何としてもクリエイティブな能力を身につけたい、そして価値の高いコンテンツを生み出したいと思っている。
それにはハックル氏の言うことを無条件に信じてインストールする必要がある。ハックル氏と同じマインドであることがまず必要なのだ。
そしてもう一つは、正にこの苦手意識から数々の苦い思いをしてきたからだ。人生を毀損してきたと言っても過言ではない。
そしてハックル氏はこういった苦手意識は克服しなければならないと説く。


話しは逸れるが、競争考に度々出てくる「全てを兼ね備えた圧倒的な勝利」という言葉が大好きだ。
話しが逸れたついでに、この「昼行性」と「規則正しい生活」に対する苦手意識がいつから、どのように僕の心を占めるようになったか考えてみたい。
それはかなり遡るが、「小学校に行きたくない」更に言えば「幼稚園に行きたくない」と言う感情が源泉となっていることに気がついた。


いま思えば、学校や幼稚園に行きたくないと思うに至った理由など些末な問題でしかないが、その感情を叶えるために、「昼行性」「規則正しい生活」に対する苦手意識を育て始めたというのは間違いないだろう。以来30年に渡って育て続けたこの苦手意識をようやく克服するときがきたのだ。感慨。


さて、では苦手意識はどのように克服するか。その一つの方法として、その逆の能力について考え、それに擬似的に苦手意識を持つという提案がされている。
僕のケースで言えば「夜行性」「不規則な生活」となる。なんと驚きである。正にこの2点は僕の大の得意分野である。


「昼行性」「規則正しい生活」が苦手意識を持ったために、「夜行性」「不規則な生活」に得意意識を持つに至った僕は、8時間勤務の日勤と16時間勤務の夜勤がランダムに組み合わさったシフト勤務の会社で働いてる。
そんな僕には週5平日勤務など考えるだけでも恐ろしい苦行に思えるのだ。


実際には、週5平日勤務の仕事をしていた時期もあるのでちょっと大袈裟に言ってしまった。それでも、不規則で人がやりたくないようなことを好んで選んでいる自覚はあったが、実際にこのように掘り下げて考えることはなかった。


さて、今ここに生活態度に関する一見相反するふたつの要素が洗い出された。
「昼行性」「規則正しい生活」に対して「夜行性」「不規則な生活」というものである。前者には苦手意識を、後者には得意意識を持っている。これを一気通貫に解決する方法はあるだろうか。


それには一つしか方法はない。
この不規則な生活を送りながら、規則正しい何かを毎日同じ時間にーー昼行性的な時間にーー行なうことだ。それが相反する要素の両方に対する得意意識を持つための唯一の方法ではないだろうか。


と、いうわけで毎日朝6時前後に、クリエイティブに関するツイートをするという生活を始めてみようと思う。日勤と夜勤明けのときは大丈夫そうだが、休みの日、特に夜勤明けの次の朝はきつそうだ。。。


因みにこれは、文章を書くのが苦手であるという意識に対する挑戦でもあることを付け加えよう。


こうやって苦手意識を克服しようと考えを巡らせているうちに、苦手なものについて考えるのが楽しいと思う自分に気づいた。こんなに挑戦すべきものがある!


またあそぼーね!

2014年11月9日日曜日

誰得なのか全く分からないauスマートパス・修理代金サポートサービスの申請方法



auではスマートパスに加入しているとApple Care+の修理代金(今回は\4,400-)を補填してくれるのだが、それが機種変更の間際であったためにどうもややこしいことになって、修理代金サポート窓口のおねいさんに怒鳴ってしまった。


■下取りのために修理が必要だった
なぜ2年間使用したiPhone5を、機種変更の間際になってApple Care+で修理することになったかというと、iPhone6へ乗り換えるにあたって下取りプログラムを利用しようと考えていたのだが、背面にヒビ割れがあって下取りできないと言われてしまったからだ。


下取りができないとなると34,000円分のポイントがもらえなくなるので困っていると、どうやらau経由でApple Care+の2年間保証とやらに加入していたようで、それを使って直せるとアドバイスをもらったのだ。
しかも同様に加入したauスマートパスで修理代金を補填するサービスがあるので実質無料で直せると。


ラッキーとばかりにiPhone5の修理(今回は代替機との交換)を終わらせたところで、ある疑問が浮かんだ。
それは、すでに明日機種変更予定なのだが、修理代金サポートの申請は大丈夫なのだろうか、というものであった。


■機種変更前に手続き完了する必要が!?
しかしながら、自分の中では、auスマートパス加入期間内に行なった修理なのだから大丈夫なはずだ、そうあるべきだという予断があった。


そのような予断があって修理代金サポート窓口に電話したせいもあって、事情を説明後の第一回答が「機種変更前に手続きを完了する必要がある」だったために前述の怒鳴りに繋がった。
そんなバカな話しがあるかと。


ところが散々怒鳴り散らした後で、向こうで予め用意されていた代替案が提示された。
それは、Appleの修理明細がなくてもauの申請書を送付する際の消印日を以って有効とするというものであった。


■その案内は誰得なの?
その代替案を以って僕は溜飲をさげたものの、なんだか微妙な感情が残った。
それができるなら、Appleの修理明細の受付日なり修理完了日を正として判断すればいいのでは?そして「機種変更前に手続きを完了する必要がある」というのを第一回答とするのをやめればいいのでは?


しかもこの方法ではauの申請書とAppleの修理明細を2度に分けて送付しなければならず、
更にAppleの修理明細を送付する前に再度電話連絡する必要まである。余計な手間がかかるのだ。


なので、この案内の仕方はおかしいのでAppleから修理明細が届いてその旨を連絡した際に、窓口の方に陳情しようと思っていたのだが、驚いたことに「auの申請書を送付する際の消印日を以って有効とする」という案内をしたことが引き継ぎされておらず、「機種変更前に手続きを完了する必要がある」と言われてしまったのだ。


■被害者を守る会結成
なんだかなぁ、と思いつつも云々と事情を説明し、最後にその案内はおかしいですよと、変えたほうがいいですよと陳情したのだが、いかにも早く電話を切りたそうに話す窓口のおねいさんの声を聞いていると、もうどうでもよくなったというのが正直なところだ。


というわけで、機種変更に際して下取りサービスの利用を検討している人は、申請がギリギリにならないようにするか、この茶番的ご案内について予備知識と愛を以って接すると窓口のおねいさんの被害者を減らせますよというお話でした。


またあそぼーね。。。

2014年10月31日金曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第八回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2014年10月18日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第八回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

前回(第七回)のブログをハックル氏がTwitter上で紹介してくださいました。
いつもありがとうございます。



自身の話し方を「わかりにくい」と評するハックル氏、そしてそれを受け取るためには、幾つかの壁を乗り越えなくてはいけないと言います。
ただ最近は、「わかりにくい」ことを積み重ねてきたことで、ここに来てわかりやすさに繋がっていく、そんな実感を持っています。
そうでもなければクリエイティブについて教えることは到底出来ないのではないでしょうか。
このジワジワ来る感じ、知的欲求の満たされ方が半端じゃないです。

それでは本日のメニューはこちら!

前半

  • アンコントローラブルな要素と向き合う
  • コンダクターであれ
  • 自分を消す
  • 気狂いのすゝめ
後半

  • 洗練された世界観を導き出す
  • 問題解決思考


前半

前半では、クリエイティブの鍵となる三つの姿勢と、それらを以ってクリエイティブに向かうために避けては通れない、「気狂いゾーン」という領域の存在についてお話しがありました。


アンコントローラブルな要素と向き合う

岩崎夏海クリエイター塾では、これまで過去の「価値の定まった」作品を紐解きながら、「価値とはなにか」を探ってきました。
これら「価値の定まった」作品は、製作における不確実性ーーアンコントローラブルな要素を乗り越えてきており、それは決して偶然ではないとハックル氏は指摘します。

前回(第七回)宿題の、映画「ゴッドファーザー」においては、ヴィト・コルレオーネを演じたマーロン・ブランドが、また、今回の宿題となっていた映画「ロッキー」では、脚本・主演であるシルヴェスター・スタローンの妻がアンコントローラブルな要素となったそうです。

マーロン・ブランドは「セリフを覚えると演技に集中できない」という謎の持論から、演技するときにカンペが用意されたというアンコントローラブルな要素を持っていたものの、当時40歳代で60歳代の設定であるドン・コルレオーネを演じるにあたり、口に綿を含んで演技するという解決策を編み出し、アカデミー賞・主演男優賞に輝きました。

そしてロッキーにおいてシルベスター・スタローンは、自身が主演することについては強情を貫きながら、脚本のエンディングについては妻ーー映画や脚本のプロではないーーに「こんなロッキー嫌いよ」と言われてニューシネマ的な暗い結末からハッピーエンドに変更するという柔軟性をもってアクシデンタルな一言に対応したそうです。
結果、ロッキーはシリーズとして大ヒットし、ニューシネマの終焉とハッピーエンド全盛のアーリーアダプターとなったといいます。

このように、クリエイティブはアンコントローラブルな要素をコントロールすることが必要な営為であり、メイキング映像を見ることが勉強になるとハックル氏は説きます。


コンダクターであれ

では、どのようにコントロールするのか。
このことについては、何故コッポラが30歳でゴッドファーザーを撮れたのかを手掛かりとして話しが進められます。
プロデュースとビジネスを学んでいたコッポラは、映画の製作に当たって信頼と権威を自分の味方にすることの重要性を知っていました。
では、バックボーンとなったのは誰か。
それは、原作者であるマリオ・プーゾであり、この49歳にして遅咲きのベストセラー作家となり、映画業界でも影響力を持っていた人物を味方につけることが、映画の成功に大きな役割を果たしたそうです。
このことを象徴するように、映画の冒頭で表示されるロゴの傍らには「MARIO PUZO'S」の文字が刻まれています。

さらに、いかに人を動かすかという点について、前述のマーロン・ブランドの例を引き合いに出し、信頼して任せることでその人のモチベーションや情熱を引き出すことができると言います。

その人にとってのモチベートは何かを考えるとき、お金や名声は誰もが求めるものであるが、ネガティブな側面もあるため、ポジティブなモチベートを引き出す必要があると言います。
ポジティブなモチベーションにつながるものは、何か。それは、やりがいや変化であるとし、特に人間は変化の奴隷といっても過言ではないとのことです。
変化を演出し、成長を促すコンダクターであれとハックル氏は説きます。


自分を消す

クリエイターを志向する人は、クリエイティブを自身の子供、分身であるという考えに陥りがちです。
これは浅い考えであるとハックル氏は指摘し、「腕のある料理人が、良質な素材を活かすために軽く茹でて塩をさっとふるだけ」のような一種の割り切りを持つべきと説きます。

その姿勢を学ぶのに、「演技」が役に立つとハックル氏は言います。
なぜなら演者の役割は自分を表現するのではなく、他者を表現する、見てきたものを話すようなものであるため、「模写」から始まるからだそうです。
クリエイティブは換骨奪胎であるという前提に立てば、まねることの効用は尽きることがなく、「クリエイティブは演技の中に宿る」ともハックル氏は言います。

この逆に、オリジナリティを大事にするダメなワナビーは、企画などのアイディアはパクってはいけないと思ってしまうし、自分には個性が無いという強迫観念から、人と違うことができない弱さから抜け出すことができないのだそうです。


気狂いのすゝめ

さて、このようにクリエイティブの鍵をつかんでいざクリエイティブに向かうとき、様々な障害が襲ってきます。
そこで必要になるのが、「彼だったらしょうがないよね」という周囲からのコンセンサスを得ることだと、ハックル氏は言います。
では、どのようにコンセンサスを得るのでしょうか。
それは、「気狂いゾーン」に踏み込むことである、とハックル氏は続けます。

「気狂いゾーン」を言い換えれば、「クリエイティブに対するまっとうな狂気」を持つことであり、さらに言えば、命をかけてやっている場面で対立する相手を殺し切ることの重要性を知っているか、ということでもあります。
前述のコッポラやマーロン・ブランドの例を始めとしたクリエイター達は、「クリエイティブに対するまっとうな狂気」という点で結びついていると言います。

そしてクリエイティブな領域は、そのような「気狂いゾーン」に包含されているのだそうです。

クリエイティブ ⊂ 気狂いゾーン

そして、ネット上での炎上について一家言持つハックル氏の直近の炎上案件をもとに、「気狂いゾーン」へ踏み込む具体的と、そこからある種の信頼を得る方法が提示されました。

多くの人がハックル氏に対し、ある「恨み」をもっているとハックル氏は分析します。
それはハックル氏は発言が自由である、という恨みであり、炎上時にハックル氏にアンチコメントを寄せてくる人は、ここぞとばかりに「恨み」を晴らそうとします。

その時にどんなことが起こるかというと、自己の義憤を周囲に見せつけることで彼(彼女)は満足し、恨みが燃焼される。そして恨みが燃焼されたあとで、必ず二つの感情がのこるのだそうです。
それは「ハックル氏は気狂いである」というものと「信頼」であるとハックル氏は言います。
特に後者の「信頼」が重要で、炎上後にはハックル氏の首尾一貫性にキラキラした信頼が残るのだそうです。

このように、自分自身がどのような人物であるのかを周囲に知らしめる言動を「ポジショニング」と言い、多くの人が無意識に行なっているこの「ポジショニング」を意識的に演出すること、さらにはそれを「気狂いゾーン」に寄せていくことがクリエイターには求められるとハックル氏は説きます。



後半

洗練された世界観を導き出す

後半では、物語をいかにして作るかということについて、ジョセフ・キャンベル(Joseph Campbell)の神話論をフォーマットとして製作する手法が紹介されました。
※神話論の詳細は省きます。
そしてこの構造に則って作られたコンテンツで有名なものとして、映画「スター・ウォーズ エピソード4」や小説「第九軍団のワシ」などが挙げられました。

この手法を採ることで物語の組み立てが容易になる反面、世界観が陳腐なものになりがちなため、さらにここでは、物語のテーマ設定が重要になるとして、洗練された世界観を生み出すためにはどうすべきかについて論じられます。


問題解決思考

前回の授業で、物語の役割が「恐怖の緩和」であることを学びました。
なぜ人々が恐怖を感じるのかといえば、ある種の類型を持った人間に無意識の不安を感じるからに他なりません。
そこでクリエイターは、その無意識の不安を炙り出すことが必要になるのだとハックル氏は言います。
そして、そのセンサーの感度を高める在り方として「オーバーフロー」状態を目指すということが提示されます。

ハックル氏はオーバーフロー状態を目指すに当たり、シシューポスの神話を引き合いに出します。

"神の罰により大岩を山頂まで押し上げるシシューポス
でも、やり遂げるとゴロゴロ麓まで転がされて
ハイ、もう一回といわれる
非常に不毛な訳だが
やってるうちに気持ちよくなったシシューポスが喜々として山を駆け下りていくという様なお話"
シシューポスの神話とは #hatenakeyword http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%B7%A5%E5%A1%BC%A5%DD%A5%B9%A4%CE%BF%C0%CF%C3

その一見無意味に思えることにクリエイティビティを見い出す心性や、夢中になっているオーバーフロー状態を実生活の中で得る方法として、ハックル氏は「掃除」を挙げます。
掃除をしても結局はまた汚れるけれど、それでも夢中になってやるということが重要なのだと説きます。

そんなハックル氏が発見した、問題解決思考を鍛える3つのケース、
・自分のダメさの虜になったお笑い芸人
・倒錯した価値観のジェンダー研究家
・堀江氏(ホリエモン)に対してルサンチマンを持つワナビー
が紹介されました。

これらの人物それぞれについてハックル氏が行った分析に、簡単に触れたいと思います。

・自分のダメさの虜になったお笑い芸人
人は自分のダメさの虜になってしまうことがある。
自分の弱さを知っていることが素晴らしいと思っているために、いつまでたっても成長しない。
そこから抜け出すためには自分をフラットに見る、三人称で自分の短所や長所を語る視点を持つ。

・倒錯した価値観のジェンダー研究家
年齢はジェンダー的な問題ーー女性は若さに価値があるという風潮ーーがあるため隠したいが、嘘は吐きたくないという倒錯した価値観を抱えていることが、Twitterのプロフィールで年齢を「60年代生まれ」と記すことに現れている。
Twitterはこのような一貫していない人が自己満足している場である。
Twitterで問題を見つける能力を磨くことができる、なぜならTwitterは価値がない人間が醸成される土壌になっているからである。
自分自身をリトマス試験紙として、問題を炙り出す視点が必要。

・堀江氏(ホリエモン)に対してルサンチマンを持つワナビー
ホリエモンという存在に対して「なんであんなやつが」「ホリエモンは悪いことをしている」というルサンチマンを持つ。
自分は運がなく、もっと恵まれるべきで、様々な局面において、相手が自分に合わせるべきなどと考えるためにうまくいかないという悪循環に陥る。
救いようの無い人物ではあるが、社会の中で敗者となり、汚濁を飲んでくれているという側面もある。

クリエイターとしては、なぜそのような問題を抱えるに至ったのかを掘り下げていくことで、そこに隠れている深遠な哲学を伴った物語のテーマを見出すことができるのだと、ハックル氏は説きます。


まとめ

クリエイティブであるためにはアンコントローラブルと向き合う、コンダクターである、自分を消すというマインドを以って、気狂いゾーンに特攻んでいくことが大事だよ!

物語の型を使うと作品を作りやすいけど、洗練されたテーマを設定するには、無意識の不安をに対するセンサーを磨いて、問題を掘り下げていくことが重要だよ!


終わりに
コンテンツを作るための考え方ばかりでなく、物事の本質に迫ったりクリエイティブに向き合うための在り方みたいなものが併走しながらどんどんと深みを増していくというか、不可侵領域に入っていくというか、すごくワクワクする内容になってきました。

この授業の内容の90%くらいは包み隠さずお伝えしていると思います。
こういった形で公開することを許可してくださっているハックル氏の寛大さに感謝しつつ、残り4回となってしまった第一期授業に臨みたいと思います。

最後になりましたが、ハックル氏ご本人も告知されていたように、11月8日(土)に「岩崎夏海のエンタメサロン2014年秋」が開催されます。
このブログを読んで興味を持った方は是非ご参加ください!
もちろん僕も参加予定です!


最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html

2014年10月18日土曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第七回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいしです。

2014年10月4日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第七回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

前回(第六回)のブログをハックル氏がTwitter上で紹介してくださいました。
その中で、「知の向上」について語られております。








継続してハックル氏のコンテンツに触れていると、折にふれて「つながる」感じを得ることがあります。
同じ目的地でも道は複数あり、同じことを別の見方で見たり、同じことを言っているけど別の文脈で語られたりするので、いつも新たな学びがあるように感じます。

ハックル氏が塾やブロマガで伝えようとしていることは、そう簡単には身につかないでしょう。
しかし、だからこそやる価値があると思いますので、心して臨みたいと思います。


さて、今回の宿題は、「映画『ゴッドファーザー(1,2,3)』を見てくること」ということでした。
授業と授業の間は2週間ありますが、全編観ると9時間の超大作はかなりのボリューム。
小説版(上・下)も読みたかったのですが、結局上の後半、2部の始めまでしか読めませんでした。

週末に見たい映画#003「ゴッドファーザー」(2,222字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar25538

そして、授業はどうだったのかというと?



ツイート内容に訂正があります。
(訂正)
岩崎夏海クリエイターサロン

岩崎夏海エンタメサロン


衝撃のゴッドファーザーへの言及ゼロ。
ハックル氏のスタンドが「ザ・ワールド」であることが判明しました。

しかし、そんなことも忘れてしまうくらいの充実の授業内容。
そして今回のレポートをまとめていて、すごく感じたのは「シャーマン」としてのハックル氏の能力がとてつもないものであるというでした。

シャーマンとは古代から続く最も伝統ある職業の一つなのだけれど、その場の空気を読んで居合わせた人々に最も必要とされている言葉を述べるということを仕事としていた。
シャーマンとして生きる(2,832字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar15110


今回の文脈で言えば、ハックル氏がシャーマンたることというよりも、「クリエイターはシャーマンたるべし」というお話しでしたが、最近のブロマガニコ生で垣間見るハックル氏の「シャーマン力」がかなり大きくなってきているように感じていましたので、当ブログをご覧の皆さまにもその辺りを感じて欲しいと思い、ご紹介させていただきました。


それでは本日のメニューはこちら!

前半

  • 物語とはなにか
  • 名前を与える
  • センサーを磨く生き方
  • センサーを磨くと世の中が分かる

後半

  • 実践編



前半

岩崎夏海クリエイター塾・第二回の授業で、クリエイションとは「換骨奪胎」であるというお話しがあり、以来、物語(価値の定まったコンテンツ)の構造を紐解く作業を通して価値を知ったり、クリエイターとしてどう在るべきか(プレゼンテーション)などについて学んできました。

因みに、換骨奪胎の段階は下記の通り
1.良いものを見分ける
2.構造を見抜く
3.他のものに移し替える

これまでの授業では、1.良いものを見分ける、2.構造を見抜く、ということに重点を置いて行われてきましたが、今回は、3.他のものに移し替える、という段階に進み、どのようにしてアウトプットに繋げていくのかについて授業が展開されました。
岩崎夏海クリエイター塾、いよいよクリエイションの核心に踏み込みます。


物語とはなにか

そもそも物語とはなにか、物語はなぜ生まれ、社会の中でどのような役割を担ってきたのでしょうか?

それは「恐怖の緩和」

人々が感じる得体の知れないものに対する恐怖を、前述の「シャーマン」が御託宣としての「神話」をソリューションとして提供することで和らげてきたということが原型となっているそうです。

冒頭でもご紹介した「シャーマン」という存在については、過去のブロマガを閲覧することで多面的に捉えることができます。

藻岩高校の講演で思ったこと(2,539字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar346601

「物語」の起源と役割(1,927字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar581396


人間が生きる上で恐怖心のセンサーが強いことが、生存を勝ちとるために必要なものであり、恐怖心の強い者が生き残り、今日の人々にその遺伝子が受け継がれてきました。
しかし、恐怖に縛られてしまうことにより、生きづらくなったり、社会が不安定になってしまうといった弊害があり、恐怖心がコインの裏表のように二面性を持つものであるとハックル氏は説きます。

科学の発展した現代においても、未知への恐怖はなくなりませんが、人は物の道理がわかるとすっきりすることから、そのために物語は与えられ、社会が円滑に運ぶように機能するということでした。


名前を与える

続いてハックル氏から、事象に物語を付与する最もプリミティブな形式はどういうものか、という問いかけがありました。

それは「名前」

何か「もやもやした事象」があり、その正体がわからないことで不安を覚えるとき、名前が与えられることで、人々はえも言われぬ安心を得ることができるそうです。
草食系男子、ニート、オタクを例に挙げ、それぞれ、性欲がない若い男性、部屋に引きこもり学習も仕事もしない、自己の興味に埋没し他人に心を開かないという、周囲から見ると理解不能な人物が増えている不安を解消してきたと解説されました。


センサーを磨く生き方

しかしこのような人物像が、顕在化し名前が与えられる前に認識することは非常に難しいので、とにかく人をカテゴライズしてみるのも一つの方法であると言います。
類型化し、単純化し、まず「分かった気になる」。
それを検証するトライ&エラーの中で、ピンそばにピタッと寄せていくような精度を獲得することができると説きます。

そして、シャーマンたるためには、
人々が無意識に違和感を感じているが、まだ顕在化していない、もやもやしているゾーンに入っていくことが重要で、それには明鏡止水のごとく振る舞い、心の波立ちを分析し、世の中の危機を察知する必要があるとのことでした。

この在り方を学ぶには、隆慶一郎氏の「死ぬことと見つけたり」を読むことが最適であるとのことです。

続いては「定点観測」の重要性についてのお話しがありました。
これは過去のブロマガでも紹介されていました。

長い年月をかけ、ずっと同じ場所から観察し続けるのだ。動き回ってはならない。動いてしまっては、微細な変化には気づけない。亀のように一つところにじっと佇んで、粘り強く観察することでしか、不可逆的な変化には気づけないのだ。
[連載第2回]「もしドラ」はなぜ売れたのか?「時代の潮目を読む方法」(2,700字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar11702

こうした、「センサーを磨く」生活はクリエイターであるためには重要ですが、現代にあって抑制的な生き方をすることは非常に難しいため、プラスアルファの利点を目指すような設定をするといいとのことです。

ハックル氏ご本人の例でいうと、「センサーを磨く」生活のためのアドバイスとなるような本を上梓し、ミリオンセラーを目指す「裏ミリオンセラープロジェクト」があります。

裏ミリオンセラープロジェクト
【特別版】 「『部屋』についてハックルさんと考えた」岩崎夏海(作家)×光嶋裕介(建築家)×井之上達矢...
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar392044


もう少し身近な例としてダウンタウン・松本人志氏のボウズ頭を挙げ、これを氏なりのセンサーを高める生き方のひとつと分析し、そこから読みとった本質をコントに活かしている例が紹介されました。


センサーを磨くと世の中が分かる

前述のコントにしても、ハックル氏の分析力があってこそ本当の構造に気付けるのであって、ほとんどの人が無意識のうちに受け取っているにすぎません。

さらにハックル氏はシャーマンたるセンサーをもって、盲導犬事件における障害者特権への怨嗟、オニギリマネージャーへの批判やそれにまつわる炎上などの社会で起きている問題の真相に迫ります。

いずれも今までブロマガやニコ生などで一部が語られてきた内容ではありますが、この文脈で改めて語られてしまっては得心せざるを得ません。
これを台本無しでやってるのですから驚きます。
嘘だと思うかもしれませんが、後半までの休憩中に、ハックル氏の演壇に置いてあるメモが目に入ってしまった(決して意図的に覗いたわけではなく)のですが、そこには2、3語の殴り書きしかなく、しかもそのうちのひとつが「二十四の瞳」。
うん、全然関係ない(*´∇`*)
いやぁ、たまげました。


後半
実践編

前半では、シャーマンの社会における役割と、その在り方について学びました。
後半は、より実践的な内容になります。
「もやもやした事象」を顕在化し、社会に提示する役割においては、その困難さは下のような関係になっているそうです。

名前を与える>物語をつむぐ

名前を与えることは非常に難しく、物語をつむぐ方が少しやり易いということで、後半では受講生全員が「物語をつむぐ」ことに挑戦します。
物語は具体的にどのように作っていくのでしょうか。
授業は物語の「企画」を行なうような形で進みます。

過去のブロマガでは、「自信や自負というものをあまり持たないように心がけている」と前置きしながら、企画をすることについて「誰にも負けたくない」という思いを露わにする場面もあったハックル氏。
前半に引き続き、「クリエイター岩崎夏海」が獅子奮迅のごとく躍動します。

物語には必ず「型」があり、基本的な「型」は下のようになります。


  • 主人公がいる(名前がある)
  • 主人公に変化が訪れる
  • 主人公が選択を迫られる
  • 主人公が決断をくだす

この「型」に沿って7、8名の受講生が発表を行ない、それにハックル氏が助言を与える形で、それぞれのフェーズでどのように物語を組み立てるのかを学びます。


・主人公がいる(名前がある)

考え方:主人公はどんなキャラか

主人公を設定するにあたり、「名前に関する感度」という能力について説明がありました。
「名前に関する感度」とは、例えば松本人志氏が映画「ツインピークス」の出演者の名前を出して「『カイル・マクラクラン』てなんかいいよね」と言ったり、富野由悠季氏の「Gのレコンギスタ」が名前ありきで企画されたものであるようなことを指し、「名前に対する感度」が低いとクリエイターには向かないと説きます。

続いて、主人公の性質としては受動的であるほうがよく、能動的に何かを起こそうとすると、フラットではなくテーマになりづらいとのことでした。


・主人公に変化が訪れる
・主人公が選択を迫られる

考え方:どのような変化が起こるのか

鑑賞者の無意識に訴えるためには、現代性のある変化を与える必要があり、常識を疑うような問いかけをすることで深遠な哲学を物語に付与することができると、ハックルは言います。
講義の中でハックル氏から提示された考え方の一例を以下に記します。

弱者として扱われている対象が、実はすでに優遇されすぎているために無意識の反感を買っている。

社会の中で良くないと判断されているものの中にも、善いものとしての一面があったりする。

差別感情はどうあっても生まれてしまうものだが、差別心を持つことに対する罪悪感を持っているので、物語のなかで差別が繰り広げられていたり、その差別が原因で報いを受けたりするとこで、鑑賞者はカタルシスを得る。

本当は蔑みたい対象がいるけど、ほとんどの人は良心の咎から蔑むことができないので、登場人物に投影しその人物を蔑むようにするなど工夫する。


具体例として、小説「ドン・キホーテ」の一場面が紹介されました。
「ドン・キホーテ」は騎士道小説を読み過ぎて気狂いじみた中年男性が、遍歴の旅に出かける物語ですが、その道中、主人公が器量の悪い娼婦に求婚をします。
これを周囲の人が笑うというシーンがあるのですが、娼婦という存在自体をダメなものと指弾したり、娼婦を美化、聖化して捉えてしまう男性の滑稽さを主人公に仮託しているそうです。
さらに、「ドン・キホーテ」は差別感情をくすぐることこそが全てのギャグ、お笑いの源泉であることを教えてもくれているとのことでした。


・主人公が決断をくだす

考え方:どんな選択をするか

主人公がくだす決断は大きく分けて二つあり、「自分が死んで何かを守る」か「何かを捨てて自分が助かる」という生か死かのように極端なものを設定し、自分を犠牲にして信念を通すという選択が順当であるといいます。

なぜなら、人は生きていることに罪悪感を抱えながら生きているので、誰かが厄災の犠牲となることで「カタルシス」を感じてすっきりするからだそうです。

この「犠牲」と「カタルシス」の関係性については、ハックル氏ブロマガをご覧ください。

なぜ人々は御嶽山のできごとに大きな関心を寄せるのか?(2,090字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar635587



まとめ

顕在化していないけど人々がもやもやしている事象に対して物語や名前を与えて安心させるのがシャーマン(=クリエイター)の役割なんだ!

シャーマンとしての能力を磨くには抑制的な生活を送るのがいいけど、それだけだとキツいのでプラスアルファを目指すといいよ!

物語には型があって、それに沿って考えるといいよ!で、重要なテクニックが幾つかあって、それは常識を疑う問いかけから始まるよ!



終わりに

授業が終わってようやくゴッドファーザーのゴの字も出なかったことに気がつく充実の内容。
これもまさに「シャーマン」たるハックル氏が、受講生が必要としていることを読みとった賜物ではないでしょうか。
講義終了後は他の受講生の方と個人的懇親会を行ない、ハックル氏のハッスルぶりについて熱く語り合いました。

そんなシャーマン力みなぎるハックル氏が、来る11月8日(土)にエンタメサロンというイベントを行ないます。
ハックル氏という恐ろしいものの片鱗を味わってみてはいかがでしょうか!
岩崎夏海のエンタメサロン 2014年秋


次回は10月18日(土)
宿題は、下記の映画4本を見てくることです。
カッコーの巣の上で
ロッキー
真夜中のカーボーイ
スティング

それではみなさま、またあそぼーね!


岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html

2014年9月30日火曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第六回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいしです。

2014年9月20日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏の主催する「岩崎夏海クリエイター塾」の第六回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

メニューはこちら!

前半
  • ルック&エモーション
  • 技術が向上する構図
  • 下積みのジレンマ
  • 秋元康氏の政治力

後半
  • ハックルブロマガの衝撃
  • 撮影技法による感情移入
  • タペストリー
  • 等価交換の法則
  • 既存の価値を超越せよ
  • 悪口のすゝめ

はじめに

冒頭で、私が書かせていただいた前回(第五回)のまとめブログに言及してくださり、そのなかで「ほとんど無意識のうちに喋っている状態なのかもしれない。そういうグルーヴ感がでているような状態が望ましく、調子がいい。」ということをおっしゃっていました。
確かに非常に濃い講義で、その分まとめに難儀してしまいましたが、今回もそれに違わず充実した内容でした。
というわけで、「映画『フォレスト・ガンプ』を観てくるように」という宿題にも関わらず、映画「ゴッドファーザー」の話しから始まる疾走感がたまらない第六回、スタートです!


ルック&エモーション

映画の魅力、ひいてはエンタテインメントの魅力とは一体どのようにして僕たちの前に立ち現れるのでしょうか。
それは、「ルック」と「エモーション」であり、このどちらにも共通することは、「無意識」に働きかけるということで、これを女性の魅力に例えるなら、「美人は『意識』に働きかける」けれど、「香りは『無意識』に働きかける」ので、抗い難いのだそうです。

「ルック」とは、1989年に発行された書籍「マスターズオブライトーアメリカン・シネマの撮影監督たちー」に登場する、映画「ゴッドファーザー」の撮影監督である、ゴードン・ウィリス氏が掲げる概念で、映画「ゴッドファーザー」のファーストシーンにおけるライティングを例に挙げ、雰囲気やパッと見が鑑賞者の無意識に大きな影響を与えていることが解説されました。

続いて「エモーション」を岩崎氏流にいうと「ヴィト、ええわぁ。。。」なのですが、これはヴィト・コルレオーネと葬儀屋(ボナセーラ)のエピソードを例に挙げ、この映画の表層をなす「マフィア物語」に対する深層の哲学である「人間の抗い難い魅力」、人間が人間を魅了するというのがどういうことなのかが敷衍されました。


技術が向上する構図
    
前述の「マスターオブライト」から、ハリウッドの衰退と再興、そして撮影監督の地位が大きくなっていった経緯についての記述を引き、健全な競争の原理の重要性を説きます。

1950年代のハリウッドは技術者の既得権益化が進んだことからその勢力を衰退させます。
しかし、テレビの勃興に伴う競争からレベルの高い監督が輩出されるようになり、ハリウッドへと還流することで再興を果たしたのだそうです。

この構図は、岩崎氏が現在最も力を注いでいるYouTubeでの取り組みと相似形をなしているように感じます。


下積みのジレンマ

岩崎氏は社会に出るにあたり、映像が好きであったことから一旦は映像業界へと進むことを検討したものの、映像業界に進んでもすぐにはカメラに触れないなどの徒弟制度の理不尽につきあたり、すぐに最前線にアサインできるという判断から放送作家の道へ進んだそうです。

現在、多くの人がエンタテインメントやクリエイティブに対する行き詰まりと閉塞感を感じているなか、最前線にアサインし、状況を選択することの重要性を説いています。

更に岩崎氏は、多くの人が「自分は自分の好きなことがわかっている」という「勘違い」をしていると指摘し、好きかどうかわからないというスタンスの方が上手くいくということを折にふれて主張しています。

こうした岩崎氏の経験や洞察が、今日に至りYouTubeでの取り組みに繋がり、その岩崎氏がTwitterでつぶやいたりブロマガで展開する考察はどれも有益と思えるものばかりです。
これらは不肖ながらYouTubeスターを目指す僕にとってはなくてはならないものです。
そんな岩崎氏のYouTubeでの取り組みについてのツイートを僕がまとめたものがございますので、拙まとですがどうぞご覧ください。

ハックル氏、YouTubeはじめるってよ - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/716341

岩崎氏のYouTubeチャンネル HuckleTV:投稿時登録者数734人


秋元康氏の政治力
話しが逸れてしまいましたが、講義はクリエイションにおける自身のあり方、「プレゼンテーション」について進んでいきます。

岩崎氏の分析によると、秋元康氏はものづくりにおいて直感に対して鈍感だが、「打席に立ってとりあえず打つ能力」とそれに付随する「政治力」、「人のせいにする」ことに長けているということでした。
岩崎氏はこのなかでも「政治的であること」が重要で、相手に得をさせるために何をするかを考えることで、局面を打開できることが多くあると説きます。
これは岩崎氏が38歳で迎えたコペルニクス的転換よってある覚悟を持つことで、この「政治的アプローチの重要性」に辿りついたのだそうです。

覚悟、それは「自分を捨てる」というコンセプトを持つことであり、笑わせるよりも笑われる人が勝ちであることをデザインできるかにかかってきます。
しかしこれは尊厳を失うことにもなり、易しい道ではありません。

こうしたことを学ぶには、映画を観ること、特に役者のあり方を見ることが手助けになると岩崎氏は説きます。
なぜなら、役者の成長にとって最も重要なのが「自分を捨てる」アプローチであるからだそうです。

世阿弥の「若くしてまがいものの華が咲く」という言葉を引いて、エンタテインメントにおいては若いということだけで実力以上の称揚をされることが多くあり、それゆえに挫折を経験し、おちぶれて「自分を捨てる」アプローチを取れたものが、実力をつけ本物の華を咲かせることになるため、格好の教材となるのだと解説されました。


後半

ハックルブロマガの衝撃

さて、授業の後半は映画「フォレスト・ガンプ」についてですが、岩崎氏のブロマガ連載・週末に見たい映画シリーズで紹介されていました。
氏のブロマガを購読し続けて、幾度となく目から鱗が落ちる思いをしてきましたが、この記事で落ちた鱗はまさに最大級でした。
"多くの人が「フォレスト・ガンプ」を純然たるエンターテインメント映画だと考えているからだ。だから、そうした発見や気づきがあるというふうには、あまり考えていないのである。
しかしながらこの映画は、深い哲学的洞察をはらんでいる。ぼくは「フォレスト・ガンプ」を何度も見返す中で、そのことに気づいた。"
>>>週末に見たい映画#002「フォレスト・ガンプ」 (1,932字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar24178

岩崎氏が気づいた深い哲学的洞察とは、「被差別者の持つ差別感情」。
ブロマガでは、フォレストが決定的に差別心を顕にするシーンや、それぞれの登場人物に与えられたモチーフについて詳しく述べられているので、是非ともご覧になって、映画を見直していただきたいです。


撮影技法による感情移入

これ以降は前回と同様、名作としての「構造」を、岩崎氏が挙げるものの他、受講生が読みとったものを発表しそれに対して岩崎氏が見解を述べるという形式で講義が進行しました。

この映画は、とにかくカメラが動き続けるということが特徴で、その中でもドリーインという手法は登場人物の存在の大きさや尊さが感じられる効果があるそうです。
とりわけフォレスト・ガンプのお母さんが今際の際というシーンでは、彼の心情におけるお母さんの存在の大きさが真に迫ってくるように感じられ、鑑賞者は感情移入を避けることができないということでした。

それとは対象的に、ズームアウトは鑑賞者の感情移入を拒否する手法であるとして、映画「バリー・リンドン」で用いられていることが紹介されました。
また、スタンリー・キューブリック監督は、受け入れがたいものを描くときに、トレードオフとして画を美しくするという手法をとっているとのことでした。

この詳細は岩崎氏のブロマガでどうぞ。

週末に見たい映画#52「バリー・リンドン」(2,207字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar620754


タペストリー

続いて受講生から、個々のシークエンスが独立しながらも関連しあって進んでいくことが魅力になっているという発表がありました。

これはタペストリーという手法で、ストーリーになり得ない個々のシークエンスを、関連させながら紡いでいくことが物語の本質であり、このことは歴史を記述する上での取捨選択に似ているということでした。


等価交換の法則

前述したようにこの映画の持つ深遠な哲学的洞察は「被差別者の持つ差別感情」ですが、差別の本質に迫る上での重要な概念として、「等価交換の法則」が挙げられました。

「等価交換の法則」についての記述があるブロマガはこちら。

"多くの人が「この世には『等価交換の法則』がある」と思っていて、何かに恵まれていると何かが損なわれるものだ――と考えるからだ。それで、「天才に恵まれると人情が損なわれる」というのは、この等価交換の法則にぴたりと当てはまるので、「なるほど」と納得してしまうのである。"
>>>映画「風立ちぬ」が誤解される理由とその正しい見方について(3,132字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar300525

映画「フォレスト・ガンプ」のケースでは逆に「何かが損なわれると代わりに美しいものを得る」という交換になりますが、「障害者は心がキレイである」であったり「手足がない人はいいやつである」といったことが本質的には誤解であることを幾度となくあぶり出しています。

この「等価交換の法則」は多くの人が持つ「既存の価値観」のうちのひとつであり、それに縛られることが物事の本質を見誤らせてしまうことは多くのあるのではないでしょうか。

「既存の価値観」に縛られた人物として、フォレストの片想いの相手であるジェニーが存在します。
彼女の持つ価値観とは、「信念を持って(クリエイターとして)生きることは美しい」、「愛がなければ(フォレストと)結婚してはいけない」、「父は敬わなくてはいけない」というものがありますが、結果的に彼女の人生は悪い方向へと進んでいきます。

長い時間をかけて、また自分が死に瀕していることがわかって初めてその全てのくびきから解き放たれ、好きではないガンプと結婚し、生家(父の象徴)に石を投げつけ、既存の価値観から抜け出ることができたのです。


既存の価値を超越せよ

講義の前半で、「人間が人間を魅了する」ということが話されました。
ではどのような人物が、僕らを魅了するのでしょうか。

魅力的な人物とは、通常の価値観を越えた深遠な価値観を持った人物、自分ができないことをやってのける、ある意味ではアレルギーと表裏一体となった感情を伴うものであると、岩崎氏は説きます。

具体的には「源氏物語」の光源氏(注:柏木と薫の件を引いていたと思われる)や、再度ヴィトー・コルレオーネを例に挙げて説明していました。

既存の価値を超越するということについて、ブロマガで言及されていました。

"多くの人が「自分は自らにいましめをしていて、そこから解放されたいと願いながら、それを果たせずにいる」と考えているからだ。そのため、それを果たしたエルサに対して、深い共感と強い憧れを抱くのである。自分がしたくてもできないことをする人――スターの姿を、この瞬間のエルサに見出すのだ。"
>>>週末に見たい映画#49「アナと雪の女王」(2,198字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar520839

さらに、ジブリ・スタジオを追ったドキュメンタリー番組で描かれていた宮崎駿氏の抱える苦しみーー組織として映画づくりを行なう以上は、低い地位で甘んじるクリエイター(従業員)の存在が必要不可欠であるが、同じクリエイターとしてそのように低い地位で甘んじていていいのだろうかという思いを抱いてしまうジレンマーーから、人間の価値には上下があるという醜い感情ーー厳然たる事実ではあるがーーを受け容れる必要があるということが話されました。


悪口のすゝめ

このように、憧れの対象となる人物というのは、受け入れがたいことを受け入れたり、自分ができないことをやってのけるため、常にアレルギーと表裏一体で、なかなか自分のコンセプトとしては取り入れがたいというのが実情です。

これを乗り越えるという意味で、「他人をバカにする」ことや「悪口を言う」ことも実は必要であると岩崎氏は主張します。

悪口というのはある種の後ろめたい行為で、誰にでもできるものではないということが分かる。しかし、それが後ろめたく誰にもできるものではないからゆえ、エンターテインメントとしての強い価値を持つようになったのだ。
>>>悪口のエンターテインメント性(2,421字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar162919


おわりに

実はぼくも悪口が大好きで、相手もなんとなくそんなことを思っているだろうなという悪口を話すとすごく盛り上がります。
また、会社で上司に他のメンバーの悪口を言うと、我が意を得たりとばかりに胸の内を吐露するのを目にしてきました。
チームのリーダーであり、メンバーを評価する立場であるがゆえに平等に接しなければならないといういましめがあり、無意識のうちに僕の悪口が刺さっていたのかと感心してしまいました。

また、そういうコンセプトを持つことで、仮にだれかが陰で自分の悪口を言っていたとしても、まあそんなものだろうという一種の懐の深さみたいなものも持てるのではないかと考えるようにもなりました。

楽しいと思いながらも少しばかり後ろめたい気持ちを抱えていましたが、これからも悪口をたくさん言うことでクリエイティビティを磨き、魅力的な人物になっていきたいと思います。


次回は10月04日(土)
宿題は映画「ゴッドファーザー」(1,2,3)を観てくることです。


またあそぼーね!


岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
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2014年9月27日土曜日

えっ?ライディング禁止令!?サーフィン初心者必見!ドジ井坂氏のワンデイサーフィントレーニング講座


みなさまこんにちは。
永遠のサーフィン初心者、波乗りたいしです。


2014年9月23日、千葉・鴨川で開催された、ドジ井坂氏のワンデイトレーニング講座に参加して参りました!


関連リンクはコチラ↓↓↓

ドジ井坂サーフィンスクール BeachSchool.com

ドジ井坂のトレーニング講座ブログ・トレーニング講座で何するの?


過去2回に渡り、ドジ井坂氏主催のサーフィンスクールを陸上トレーニング、海上トレーニングと受講し、サーフィンに重要な身体のバランス、PST(フィジカル・センス・トレーニング)や、ドジ井坂式パドリングについて学んできましたが、いよいよ今回はライディングを学ぶべく、意気揚々とワンデイトレーニングに臨んだものの、なんとライディング禁止を言い渡される衝撃の展開が!

一体、波乗りたいしになにが起きたのか?
そしてドジ先生の思惑は!?

動画も鋭意編集中!
近日公開予定!
当日の様子を動画にしてYouTubeで公開しました!
記事中に埋め込んでありますので、ぜひご覧ください。


本日のメニューはこちら!

  • 姿勢を再確認
  • サーフィンはオフバランス→リカバリの連続
  • ボード上の正しいバランスは?
  • ライディング禁止令?〜ハイラインを目指せ!〜
  • プロと上級者の違い!?
  • パドリング・アップデート

■姿勢を再確認

まずは陸上トレーニングからスタートします。
始めに、こちらの動画でも行われている正しい姿勢を再確認します。

ドジ井坂氏サーフィンスクールで初心者脱出!陸トレ編1/3 サーフィン:波乗りたいし



■サーフィンはオフバランス→リカバリの連続

次にボード上でのバランスのリカバリについて学びます。
サーフィンはオフバランス→リカバリの連続のスポーツであるにも関わらず、多くのサーファーがどうやってバランスをリカバリするのか分からず、身体に力を入れてしまって余計にバランスを崩してしまっているそうです。

ボード上でのバランスやそれに必要な柔軟性はセンス・才能によるところが大きいことは確かであるものの、それを身体の使い方を学ぶことによって補うというのが、PST(フィジカル・センス・トレーニング)の本懐でもあります。

具体的には、膝を曲げ→腰(お尻)を後ろに突き出し→背中を反るという動作になります。
やってみると分かるのですが、何度も練習しないと上手くできません。
しかし、これが波の上でできなければ、ワイプアウトを繰り返してしまいます。


■ボード上の正しいバランスは?


ボード上でのバランスのポイントはご存知「おへそバランス」です。
テイクオフシートの前足を置く場所を思い出してください、前足荷重でなければ失速するバランスなのです。

そしてテイクオフ体操の重要な一面は、常に上半身が前を向いていることにあります。
これが腰の可動性を高め、スピードを出す重心に移行したり、多くのサーファーが苦手としているバックサイドのライディングにおいて、波に対する身体の開きに繋がる姿勢を、テイクオフ練習の段階から身体に染み込ませるのです。

ここまでの様子はこちらの動画にて公開しております。



■ライディング禁止令?〜ハイラインを目指せ!〜


陸上トレーニングがひと段落し、海上トレーニングに移行します。
海に入り、僕のテイクオフを見たドジ先生は、すぐに僕の課題を見出し、指示をくれました。

それは、腹ばいのまま波に乗り、加速するラインーーハイラインを探すことに集中するようにというものでした。

ハイラインにボードを持っていくためには、おへそバランスの重心から波側へ、そして加速するためには前側にバランスを移動する必要があります。
更に、GoProで撮影したものを確認することで、加速するラインのイメージを叩き込む。
それを知らないうちに立っても、加速するライディングはできないし、前述した前足荷重のバランスができていなければ失速するだけ、というのがドジ先生の「ライディング禁止令」の理由だったのです。

まさにこれこそが自分のサーフィンに不満を感じていたポイントで、どうやって波の上で加速していくのか、全くイメージができていませんでした。その結果、波の力に頼ったり、ボードを無理に動かすライディングになっていたのだと思い至りました。

海上トレーニングの様子はこちらの動画にて公開しております。



■プロと上級者の違い!?


一度海から上がって問題点と対策についてミーティングを行い、マルキに移動。
そこでは某プロや複数の上級者がフリーサーフィンしていました。

受講生が課題をこなす傍らで彼らのライディングをドジ先生が撮影し、某プロのライディングこそが本物であり、氏を手本として居合わせた「上級者」たちとの違いは何なのか、ということをテーマに解説してくれました。

派手なアクションに見えても、上半身を振り回しているだけだったり、上半身が横を向いて重心が後ろ気味なために、腰が前に出てこないので次のアクションへのスピードが出なかったり、バランスを崩してしまうなどといった、少しの違いがプロとの大きな差を生んでいる例を詳しく解説してくれました。

これまで、いろんなサーフィンを見ても、上級者とプロの本質的な違いがどこにあるのか分からないでいましたが、同じように上手く見えるサーファーも、実は問題を抱えていることが多く、それをどう見分けるのかという視点を得ることができたのは非常に大きな収穫でした。


■パドリング・アップデート


前回のレポート動画でもドジ井坂式パドリングについてお伝えしましたが、今回のトレーニングでアップデートがありました。

ドジ井坂氏サーフィンスクールで初心者脱出!海トレ編 サーフィン:波乗りたいし




これまで腕をゆっくりと最後まで押しきるイメージを身につけるために、腕を前に戻すときに手を水面から出さない方法をとっていましたが、そのイメージが身についたということなのか、水から出してもいいということになりました。
基本的なことは今までと変わらず、肘の内側(だけ)を意識しながら上に引き上げ、肩甲骨を寄せながら前に戻す。
身体を漕ぐ手の側に傾け、肘から先を外側に回して手を水面から抜くように戻します。

あとは、パドリングのときにGoProで撮影している画面が左右にぶれているので、頭をぶれさせないようにと注意がありました。


■おわりに

これまで陸上トレーニングと海上トレーニングを別々に一回ずつ受講してきましたが、このワンデイトレーニングでは、陸上で習得した理論・身体の使い方を海ですぐに実践でき、フィードバックを得ることができるのが大きな魅力だと感じました。
今回学んだことをしっかりと身につけて、またトレーニングに参加したいと思います。


それではみなさま、またあそぼーね!

2014年9月19日金曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第五回に参加してきました!


2014年9月6日に渋谷で行われた、ハックル氏(@huckleberry2008)こと岩崎夏海氏の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第五回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

今回は、前半が映画『パルプ・フィクション』について、後半が『クリエイションにおけるプレゼンテーション』についてという構成で講義が行われました。





これまでの講義の中でクリエイションにおける最も重要な概念のひとつとして繰り返し提示されてきた、『クリエイションは換骨奪胎である』という概念。
これをより深く理解し、名作を名作として受け取る感性を身につけるために、なぜその作品が評価されているのかということについて考えることが必要です。
そこで、テーマとなった映画『パルプ・フィクション』における名作としての構造を、岩崎氏が挙げるものの他、受講生が読みとったものを発表しそれに対して岩崎氏が見解を述べるという形式で前半の講義が進行しました。

候補として挙げられたものは下記の通り。

・アーリーアダプターとしてのパルプ・フィクション(H)
・会話の魅力(S)
・時系列をシャッフルした編集(S)
・上下関係のめまぐるしい入れ替わり(S)
・場違い感のある会話(S)
・SEXが大きな軸(H)

(H)…ハックル氏
(S)…受講生


アーリーアダプターとしてのパルプ・フィクション(H)

まずは岩崎氏から、この映画の特徴として、出演者のギャラが非常に少なかったということが提示されました。
これにどんな意味があるかというと、まだ無名だったり、人気が低迷している俳優・女優が出演し、好演の結果映画が話題となり、あるものは出世作、あるものは再ブレイクを果たす作品となったため、出演者に対するアーリーアダプター性を持っているということでした。
その俳優・女優を語るときに、必ずこの映画が語られることとなり、そのことがこの映画の名作として評価を高めていくことになるとのことでした。


会話の魅力(S)

次に、受講生から映画の中で交わされる会話が魅力的である、ということが提示されました。
岩崎氏はこれに同意し、これが『バディもの』と呼ばれる物語形式であるとしました。

『バディもの』とは岩崎氏の著書である『小説の読み方の教科書』のなかで、ドン・キホーテの昔から脈々と受け継がれてきた手法であることが解説されています。
また、これまでの講義のなかでも『バディもの』の魅力は『会話』にあると言及されてきましたが、さらに踏み込んで『会話は価値観の擦り合わせ』であるということが提示されました。

この映画では、登場人物が幾つかの組み合わせでバディを形成し、その会話ーーまたはそれにともなう行動ーーのなかでそれぞれの価値観を明らかにし、人物像に立体感と共感を生んでいます。

岩崎氏のブロマガでは、中でもブルース・ウィリス演じる白人ボクサーのブッチ・クリッジに焦点を当て、このキャラクターの存在こそが映画『パルプ・フィクション』を不朽の名作として押し上げる要因となったということが解説されています。

週末に見たい映画#007「パルプ・フィクション」(2,454字) ※有料コンテンツですすhttp://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar80126 


週末に見たい映画#43「年末年始に見たい映画5位から1位」(2,807字)  ※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar422132


特に後者のブロマガでは、ブッチの行動がこの映画の持つ深遠な哲学を読み取るヒントとなると述べられています。

"なぜ自分を殺そうとしたマフィアのボスを助けたのか?〔中略〕しかし結果的に、ブッチのこの行動が、他ならぬブッチ自身を助けることになる。ここのメッセージを読み取ろうとするとき、この映画の放つ深遠なテーマというものに気づかされ、唖然とさせられたのだった。"

ブロマガにはこの『深遠なテーマ』について詳しい記述はありませんが、講義ではブッチが持つ『ある信念』に基づく会話と行動について言及があり、おそらくそれが『深遠なテーマ』に繋がる、またはそのものなのではと想像しました。

ブッチは恋人であるファビアンとの会話の中で、ブッチ自身が持つ価値観ーー『ある信念』ーーを擦り合わせ、それに基づく行動を起こし、物語が大きく展開します。
そしてマフィアのボスであるマーセルスとバディーー敵対する二人ですが、その関係性のうちにストーリーが展開するという意味でバディとみなしますーーを演じますが、その中でもブッチは『ある信念』に基づき、マーセルスを助けます。

このとき、観客は無意識のうちにこれまでの会話の中でブッチの持つ価値観を刷り込まれているので、その行動を自然で『彼らしい』ととらえ、共感するのです。

また、ブッチに助けられたマーセルスはブッチの裏切りを赦しますが、この『赦し』というのはキリスト教的テーマとして重要な意味を持つということでした。

後述するエピソードの中でも、会話が物語に重大な影響を与え、映画を魅力的にしているケースをみていきます。


時系列をシャッフルした編集(S)

続いて別の受講生から、時系列がシャッフルされた編集に価値があるのでは、という提案がありましたが、岩崎氏の見解ではこれは表層的なもので、そんなに価値はないということでした。
僕もこのことについて発表しようと考えていたので残念でした。


上下関係のめまぐるしい入れ替わり(S)

さらに、別の受講生から、
人物の上下関係が目まぐるしく入れ替わることが魅力的という発表がありました。

これについて岩崎氏は賛意を示し、この世界の本質は混沌であり、人間の役割はそこに秩序(バランス)をもたらすことであるが、価値観の擦り合わせが行われるときにバランスを崩し、訪れるカタストロフィみたいなものに人は無意識に惹かれるという説明がありました。
その絶妙な組み合わせ、ものごとの均衡と破綻、計算と非計算が表裏一体となったまだら模様を描くその様が、この映画の魅力となっているということでした。

また、クリエイションにおいては、ギリギリまでコントロールした上で生まれる破綻が大きな価値を持つことが多くあるそうで、映画史に残る即興ーーインプロ(英語:improvisation)として、いくつかの映画から、そのワンシーンが例に挙げられました。


場違い感のある会話(S)

次に別の受講生から、緊張感のあるシーンとちぐはぐな会話が魅力的であるという発表がありました。

しかし、岩崎氏の見解では、むしろ自然であるように細心の注意を払っているために、非常に魅力的になっているということでした。

特にマフィアのボスを裏切った白人たちを始末するため、ジュールスとビンセントが目的の部屋に着いたとき、時間が早いからと階段ホールに移動してそれまでの話しの続きをするシーンがいいと評価されていました。

さらにその次のシーンで、ジュールスに問い詰められる白人が、What?(えっ?)を連発することで肩を撃たれますが、会話の中で無意識のうちに相手に与えるメッセージ・無意識に受け取る影響があるということを、タランティーノ監督がよく理解していることが分かり、観客には無意識の共感という形で伝わるという解説がありました。


SEXが大きな軸(H)

最後に岩崎氏から、この映画の大きな軸となっているのが『SEX』である、ということが提示されました。

ジュールスとビンセントの間で交わされる、『フットマッサージはアウト(≒SEX)か』という会話、白人を問い詰めるジュールスの『Does he look like a bitch?』という発言、そしてミアの相手をするビンセントの葛藤。
このように会話の中でボスのマーセルスが不可侵領域である、という価値の擦り合わせ(前フリ)が行われてきたにも関わらず、オカマにおカマを掘られるというオチ(カタストロフィ)が発生。
マーセルスがブッチに八百屋を持ちかける席で放った、『Fuck pride!(プライドがなんだ)』というセリフが頭の中を駆け巡ります。


まとめ

前回の講義の中で、評価の高いコンテンツは二層のレイヤーを持つというお話しがありました。
それに映画『パルプ・フィクション』を当てはめて考えると、表層の『単純明快な「おはなし」』は、一風変わった編集のお洒落な音楽のマフィア映画ですが、深層の『深遠な哲学』を追究していく過程で、ほとんどの人が無意識のうちに受け取っている『価値』を日の目にさらすことができます。
魅力的な会話による前フリ、均衡と破綻を繰り返しながら転がるように進む物語、全ての価値観を覆すカタストロフィ、そして信念を持って行われる救済、からの赦し。
登場人物と物語が立体感を持ち、たった1時間の講義の中で、この映画に対する意識が大きく変わり、何倍も面白く感じるようになりました。

今回は受講生の方々の発表も取り入れながらの講義となりましたが、記憶とメモを頼りに書いていますので、誤解している部分がありましたらご指摘ください。


クリエイションにおけるプレゼンテーション

後半は、前半と同じくらいの濃い内容で『クリエイションにおけるプレゼンテーション』について講義が行われました。

ここで言う『プレゼンテーション』とは、いわゆる企画発表という狭義としてのものではなく、クリエイターとしてどのように振る舞うのか、という意味で、これまでの講義のなかでも折にふれて言及されてきました。

これは岩崎氏の持つ知見のなかでも最も重要なもののひとつであると感じ、この場で詳らかにすることは気が引けますので、ここではトピックの列挙のみに留めさせていただきます。

今後、岩崎氏の同意がいただければ、別の形でまとめた記事を作成しようと思います。


  • 作品以外の部分でいかにして戦うか
  • 言葉への執念
  • 相手の意に沿うプレゼンテーション
  • コンテンツはキャッチボール
  • サプライズを演出する
  • 下僕キャラ
  • ハックから読み取る信念の在り方
  • 無意識の部分を知る


終わりに

今回もかなり濃い内容で、あっという間の2時間半でした。
懇親会は二回に一回というのが定着しつつあるのですが、帰りがけに別の受講生の方と、ハックル先生抜きでも受講生だけで飲むのも悪くないのではという話が出ましたので、もし参加したい方がいらっしゃいましたら、僕(錦織)かK上さんにお声がけください!

次回は9月20日の開催、テーマは映画『フォレスト・ガンプ』です。

フォレスト・ガンプに関連するブロマガ

週末に見たい映画#002「フォレスト・ガンプ」 (1,932字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar24178


週末に見たい映画#43「年末年始に見たい映画5位から1位」(2,807字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar422132


岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html