2014年12月30日火曜日

サーファー波乗りたいしからクリエイター波乗りたいしへの道


僕はいま、有料メルマガを3つ購読している。
一つはホリエモンこと堀江貴文氏の「ブログでは言えない話」、もう一つが藤沢数希氏の「金融日記」、そしてハックル氏こと「もしドラ」著者である岩崎夏海氏の「ハックルベリーに会いに行く」だ。

その中でも、最も熱心に読んでいるのがハックル氏のメルマガで、今年(2014年)の7月から半年間は、氏が主宰する「岩崎夏海クリエイター塾」というものに参加させてもらってもいた。

そのハックル氏が毎週火曜日に連載中の「競争考」をとても楽しみにしているのだが、その記事がいつもにも増して興味深いものであった。
内容は、自分にとって苦手なことを行なうことで圧をかけ、成長へと向かう具体的な方策についてだ。
>>>競争考:その31「自分への圧のかけ方」(2,199字)
http://t.co/QMUYCn6E43 ※有料コンテンツです。

というわけで、今日は「成長への道程」というテーマで書いてみたい。成長とは何か。僕はなぜ、そしてどのように成長していくのか。

これはものすごく重要あると同時に、ひどく語ることが困難なテーマでもある。
なぜ成長について語ることが困難なのか。それは「成長の物語」が持つ二面性がネックになっている。その二面性とは、「成長」が最も人の心を引きつけるということと、最も人を苛立たせるということだ。

成長がなぜ人を惹きつけるのかは、ハックル氏のブロマガに詳しい
>>>競争考:その19「夕陽的とは何か?(後編)」
http://t.co/LmImbRetBZ ※有料コンテンツです。

それと同時に、成長は人を苛立たせる。なぜなら成長を認識しようとすると、その相手を理解しなくてはならない。成長する前は当然未熟なので、その未熟さを受け入れなければならないのだ。

その証拠に、僕のYouTubeチャンネルのあるサーフィン動画の評価を見てもらいたい。現時点で高評価25に対して低評価が31と上回っている。この動画を見ようとする人が、台風の大波を乗る様子を期待してくるのだから当然だ
>>>GoPro Surf:024 Scared By Big Swell 台風スウェルサーフィンで涙目:波乗りたいし
http://t.co/AHbSByBwv0

検索や関連動画でやってくる人たちの多くは、僕の未熟さに耐えられない。そしてそっとダウンサムをつけて去っていく。

しかし、波乗りたいしには一筋の光明が差している。その未熟さと苛立たしさを乗り越えて、波乗りたいしに興味を持ってくれる人がいる。
現時点(2014年12月30日)で767人の方が僕のYouTubeチャンネルを登録してくれている。
>>>チャンネルページはこちら
https://www.youtube.com/user/Howtobreaktherule

そこで僕は調子に乗って、更に大きな分野で挑戦することを考えた。だが、いい加減なコンテンツを作る訳にはいかない。そして、自分にとっても意味のある挑戦でなければならない。それは、クリエイティブな挑戦であるべきだと思ったのだ。

だが、そんな挑戦が具体的にどのようなものであるべきかを、なかなか見つけることができなかった。別チャンネルを作って幾つか動画をアップしてみたが、しっくりこなかった。サーフィンのように情熱を燃やすことができなかったのだ。

そんな時に、ハックル氏の「岩崎夏海クリエイター塾」開催を知った。僕はここぞとばかりに飛びついた。書籍を270万部も売り、クオリティの高いブロマガ(メルマガ)を2年以上、毎日、遅滞無く発行し続ける方に、直接教えを受けることができるこのチャンスを逃す訳にはいかないと感じた。

7月から始まった「岩崎夏海クリエイター塾」はすでに最終回を迎えたが、ここで受け取ったものの大きさは計り知れない。まだ自分でも整理しきれないほどのものを学んでいるので詳しい言及は避けるが、一番すごいと感じるのは、いま僕が必要としていることが全部話されるということ。

僕が岩崎夏海クリエイター塾に求めていたのは、過去の挫折の原因を知り、今を勝ち抜く力を身につけることだった。それが十全になされるばかりか、僕の想像のはるか上をいくものだった。毎回自分に対するカタルシスが、あぁそうだったのか、と突き抜けていくのだ。

僕はレポートブログを書かせてもらっているのだが、これを書くことの効用もかなり大きい。その内容を2時間の中で受け取るのは非常に難しい。だがレポートを時間をかけて書くと、何度も氏が言わんとすることに「潜る」ことになるので、理解が進む 。
>>>波乗りたいし・岩崎夏海クリエイター塾レポート

というわけで波乗りたいしは、サーファーとしての成長に加え「クリエイター」としての成長をコンテンツとしたいと思う。そこで重要となるのが、冒頭で紹介した、「自分に圧をかける」ということだ。
>>>競争考:その31「自分への圧のかけ方」
http://t.co/QMUYCn6E43 ※有料コンテンツです。

クリエイターとしての成長にはこれも重要となるだろう。
>>>成長には負荷が不可避(2,098字)
http://t.co/DYCVCJtZ31 ※有料コンテンツです。


ということで長々と書いてきたが、畏怖するような存在でもあるハックル氏に教えを請い、自分に負荷をかけることで成長し、いつの日かそれが美しい物語としての軌跡を描いているようでありたいと願う。

そして一介のサーファーが描く物語は、こんなタイトルになるだろう。



『海辺の過負荷(カフカ)』

2014年12月20日土曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第十一回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2014年12月6日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する「岩崎夏海クリエイター塾」の第十一回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

2014年7月から始まった第一期・岩崎夏海クリエイター塾も残すところ二回となりました。
一週間後に衆議院総選挙を控え、時代の変化が確実になろうとしているなか行われた授業でメインテーマとなったのは、「物語を紡ぐ」ということでした。
物語の担い手たるクリエイターに求められるものは、一体どんなものなのでしょうか?

一時間目

  • 話すことで得られる気づき
  • クリエイター塾の役割
  • 浮遊層たるクリエイター
  • アベノミクスの行く先は格差の拡大
  • 進歩を予測する

二時間目

  • パロール(発話)


一時間目

話すことで得られる気づき
ハックル氏はあるとき、議論好きのお父様とのやりとりの中で、議論そのものよりも、話しながら自分自身と対話することが重要であることに気がついたそうです。
この気づきを得るためには、聞き流してくれる人の方が良く、伝えることではなく、話すことで自分の考えが整理されることに意味があるのだと言います。

以前、ハックル氏が体調不良の話をブロマガに書いたところ、考えが整理されて体調不良の原因に思い当たったのだそうです。
実際にその原因が正しいかどうかは別として、それが「説得力のある物語」であるかどうかが重要で、これはこれまでの授業で話された「神話」的な働きをしているとハックル氏は言います。

黒い★が教えてくれるもの(1,100字)
( 注:「★」は伏せ字です。お食事中のかたはご注意ください)
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar679042


クリエイター塾の役割
そして、クリエイター塾の塾生に求められるのは、物語の担い手・語り手となることであるとし、状況をgainする方策を提供し、なぜそれをやるのかを説得するために、相手も主体となれる物語を紡ぐことが必要だとハックル氏は説きます。

奇しくも政治が変化の局面を迎えようとしています。
政治の物語はーーその善し悪しは別として、なぜ人々の胸を打つのかを考えることで、どのような物語を紡ぐべきなのかが見えてきます。

多くの人が政治的な傾向として、すでに陳腐化しているものにすがりつこうとしていると、ハックル氏は指摘します。
日本という物語は陳腐化している。しかしながら、国体の維持ーー日本を大切にという物語には間違いがない。というところに安住してしまうのだと。

なぜでしょうか。
時代に甘やかされている、故に歴史に学ぶことができないので、日本がーーひいては自分が恵まれすぎていることを理解できないという病気に冒されていると、手厳しい言葉が並びます。
だから、より国体ーー陳腐化した日本という物語にすがるようになるのだと言います。

そのような人々は、「新しいもの」が来ていることを感じながらも乗っかっていけないのだそうです。
「新しいもの」とは、ホリエモンこと堀江貴文氏のような方の存在であったり、「日本という国体が沈む」という考えのことで、「日本人がババを引く」ことはもはや避けられないとハックル氏は言います。

このことはハックル氏がポリタスに寄稿された記事に書かれています。
"日本という国は今よりも不幸せになるはずだ。"
【総選挙2014】今度の選挙でほとんどの人が対応を誤るたった一つの理由(岩崎夏海)|ポリタス 「総選挙」から考える日本の未来
http://politas.jp/articles/311


浮遊層たるクリエイター
こういったことは、声高に叫べば叫ぶほどに理解されないが、それ故に「出し抜く」ことができる「正論吐きの利」があるのだとハックル氏は言います。
このような混迷の時代にあって、クリエイターは富裕層ならぬ「浮遊層」となることが必要で、ある意味では卑怯ととられることもあるが、「利する方につく」という姿勢で、人として生き残るために物語を紡ぐのだと。
それは陳腐化した物語を捨てることでもあり、陳腐化した物語にすがりつく人々を出し抜き、リーダーシップをもって皆がまだ見えていない、新しい物語を紡ぐことが求められると説きます。


アベノミクスの行く先は格差の拡大
なぜ安部氏の物語は支持されるのでしょうか。
それは「日本を富ませる」という一点の論旨に集中しているところにあるとハックル氏は指摘します。

この「日本を富ませる」という政策は、言い換えれば他国を出し抜き、犠牲にするということであり、
競争を勝ち抜く
→富者を讃える
→トリクルダウン
という構図になります。
これは誰が一番喜ぶかというと、貧困層が一番乗っかりたい構図なのだと言います。
なぜなら他国を犠牲にして日本が儲かれば、自分が働かない状況に安住できるからだという、身も蓋もないものなのだそうです。

しかし実際にはこの政策で競争社会が激化し、富裕層は規制緩和などで更に富み、貧困層は競争にさらされ更に沈んでいくという、格差拡大が待っているとハックル氏は言います。
その理路をブロマガで説明されています。

"「競争に向いていない人」というのは、(中略)競争に負けるとすぐに「社会が悪い」と言い出す。「社会が不平等だから自分たちは負けたのだ」と責任転嫁する。そして「規制撤廃」を叫ぶ。「既得権益の打倒」を目指す。そうして、とことん自由な競争社会を志向するようになるのだ。
そうなると、競走に強い人はもちろん、競争に弱い人も「競争社会」を志向するようになる。おかげで、競争社会は雪だるま式に激化する。加速度的に進行するのだ。"
格差時代の箱船(2,702字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar685629

※引用は塾の後に発行されたものです


進歩を予測する
大きな物語が通用しない今、市井のシャーマンとして生きるためには、どんな物語を描くのか、誰に貢献するのか、どのようなメリットを感じさせ、非金銭的な豊かさを提供すればいいのかという視点が必要であるとハックル氏は言います。

そこで世の動きと呼応するように進化・発展してきた物語のスタイルを知り、さらにこれからの変化を予測することで、いま求められる物語を探ります。

例えば大航海時代にはロビンソン・クルーソーなどの冒険譚が、20世紀に入ると科学の進歩からSF(サイエンス・フィクションorスペース・ファンタジー)小説が流行しました。いつの時代も未踏の地へと誘う物語が人を惹きつけてきたのです。
これはこれまでも話されてきた、「アーリーアダプター」であるということにも繋がります。

そこで実践として、いま世の中の人が予測しているものーーこうなっていくだろうと予測している変化には、どうのようなものがあるかを予想して発表するということが行われました。

まずはハックル氏が例として幾つかの予測を挙げます。
ハックル氏:男女交際する人がますます減っていくだろう。
ハックル氏:YouTubeがコンテンツの価値を変えるだろう。
ハックル氏:4K映像の価値が上がるだろう。映画の価値は代替されないだろう。

続いて塾生が発表し、それに伴って起こるであろう社会の変化を、ハックル氏が一言コメントします。(コメントなしの場合もあります。)

塾生:人工知能が発達するだろう。
ハックル氏:人間の仕事が減るだろう。

塾生(波乗りたいし):バーチャル(VR・SR)が発達するだろう。
ハックル氏:人間存在の意義を脅かすことになるだろう。

塾生:旅行が盛んになるだろう。
塾生:延命措置を望まない人が増えるだろう。

このような変化を土台に、実際にその変化が訪れたらどのような問題が起きるだろうかという「問いたて」をすることが、物語を紡ぐのに役立つとハックル氏は言います。


二時間目

パロール(発話)
後半は、前半の冒頭で話された「話す」ことの重要性を敷衍します。
「話す」ことによるメリットを最大限に活かすためには、アイディアを発表するスキームを早くする、思いついたらすぐに話すというパロール(発話)が重要となるのだそうです。

ということで、ハックル氏によるパロールの実践として、まだ誰にも話していない「ここだけの話」がありました。
※この話の正式発表は数ヶ月先になるそうです。

パロールを実践する環境を整える、話す相手を作ることも重要で、宮崎駿監督は話す内容に応じて、望ましいリアクションをしてくれるであろう話し相手を選んでいたそうです。
ハックル氏の場合はそれをブログで実践しており、ボールを投げることで社会の感触を確かめていたのだそうです。


まとめ
パロールが重要だ!そのための環境を整えることもクリエイティブな活動の一環としてとらえ、自分の考えを整理することで「説得力のある物語」を生み出すんだ!

「市井のシャーマン」たるクリエイターとして物語を紡ぐには、陳腐化した物語を捨て、世知辛さを受け止めたうえで、フラットな視点で未来を見ることが求められるぞ!


終わりに
冒頭のごあいさつでも書きましたが、2014年7月から始まった第一期・岩崎夏海クリエイター塾も残すところ二回、つまり次回で最終回となりました。
この半年で、クリエイター塾のまとめブログを書くことにしたり、SNSでの活動を始めたり、自身の生活を変えたりと、いろんな変化がありました。
それでもまだ、自分の心の中で何かがゴトゴトと音を立ているのを感じ、もっと継続してハックル氏に学びたいと思い、第二期・岩崎夏海クリエイター塾への参加を決めました。
岩崎夏海先生を始め、関係者や塾生の方々におかれましては、どうぞよろしくお願いいたします。


岩崎夏海クリエイター塾、第2期開講のお知らせ

岩崎夏海クリエイター塾、第2期開講のお知らせ。
http://genjiyamaro.com/archives/684


最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html

2014年12月13日土曜日

Mom's 1st Birthday ママも1歳サプライズやってみたω


皆さまこんにちは、波乗りたいしです。


以前ネットで話題となっていた、パンパースによる宣伝動画「MOM’S 1ST BIRTHDAY ママも1歳、おめでとう」を見て、これはやらなくては!と思っていました。
そこで、息子であるもとむくん1歳の誕生日にサプライズを仕掛けました!


公式サイトはこちらです
http://www.jp.pampers.com/moms-1st-birthday


話題のパンパース公式動画はこちら


いろいろなサイトで紹介されていました。

Rocket News24
『赤ちゃんの1歳はママの1歳』をテーマにした日本の宣伝動画に海外ユーザーが「ボロ泣きした!」「妻が夫から一番聞きたい言葉」と感動の嵐に!!
http://rocketnews24.com/2014/10/08/495160/


Huffingtonpost
「ママも、おめでとう」赤ちゃんの誕生日にパパが仕掛けたサプライズ【動画】
http://huff.to/1ALYvb6


ねとらぼ
赤ちゃんの1歳はママの1歳 パパからのサプライズに思わず涙 - ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1408/05/news105.html


僕が仕掛けたサプライズの様子はこちら!
Mom's 1st Birthday ママも1歳サプライズやってみたω ベビちゃんねる

僕が仕掛けたサプライズは、誕生日に自宅へ帰ってきたら壁に妻ともとむくんの1年間の写真が飾ってあるというもの。
誕生日当日は妻のご両親が経営する実家の料理店で、親兄弟を呼び誕生会を開催する予定でした。

そこで、自宅を出て歩いて10分程度の実家に向かい、誕生会が終わるまでのどこかで写真をセットする必要がありました。
抜け出すチャンスは一箇所のみ、予約していたケーキを取りに行く時でした。
急いで写真をセットし、何食わぬ顔で――妻には遅いと思われていたようですが――誕生会を開始。

問題はサプライズの様子を撮影するカメラをいつ設置するか、ということでした。
僕が考えていたシナリオは、自宅に帰る途中で妻に夕食の買い物に寄ってもらい、僕ともとむくんは先に帰ってカメラを設置するというもの。
GoProとiPhoneで別角度の映像を撮影するつもりで、予行練習をしていました。

ところが、お義父さんが荷物が多いからと車で送ってくれることになり、その時間を作ることができなくなってしまいました。

車が自宅マンションの下についたとき、苦肉の策として僕はとっさに「(荷物が多くて大変だから)荷物は俺が全部運ぶから下で荷物を見てて!」と言いました。
自宅は3階建てマンションの3階なので、階段で運ばなくてはならないのです。

妻は少し訝しげな顔をしながらも、一旦は了承してくれました。
ところが3階についたところで、妻が荷物を持って階段を上がってくるではないですか。
慌ててGoProだけを予定していた場所に設置し、録画をスタートした瞬間に妻が玄関から入ってきました。

ギリギリでしたが、何とかサプライズに成功(・∀・)!!
妻も喜んでくれたようで良かったです。


それでは皆さま、またあそぼーね!


2014年12月3日水曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第十回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2014年11月22日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第十回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

前半では映画と音楽を通して、クリエイティブの本質に迫ります。
後半は、これまでの「本質」を巡る旅を一休みし、「表面」について学びます。

本日のメニューはこちら!

前半
  • クリエイティブの本質は演技に宿る
  • 感情の駆け引き
  • 不幸への志向
  • 生と死を超越する歌
  • 生きる構え

後半
  • 協力者を「倒す」6ステップ
  • 美的感覚を磨く


前半

クリエイティブの本質は演技に宿る
演技というのは、非常にクリエイティブな営みです。
そして演技のクリエイティビティとは、常に二つの問いに直面することで生まれるのです。

 ・自分を役に近づける
 ・役を自分に近づける

ユダヤ人俳優は前者、イタリア人俳優は後者からアプローチする傾向があるものの、やはりこの矛盾したふたつのアプローチを同時に行なうことになります。
この、相反する要素を携えていることはクリエイティブおいて重要な意味を持ちます。

「似ている」というのが「同じ」と「違う」を持ち、「夕陽」が「昼」でもあり「夜」でもあるというように、その境界線に人は否応なく惹かれるのです。


感情の駆け引き
宿題となっていた映画「セント・オブ・ウーマン(Scent of a Woman)」の名シーンから、演技の真髄を感じとることができます。

高校生のチャーリーと訪れたニューヨークのホテルで、スレード中佐はチャーリーを買い物に向かわせます。
心の引っ掛かりを覚えたチャーリーが途中で引き返すと、スレード中佐は軍服に身を包み、かねてから計画していた自殺を実行に移そうとしています。




ほぼインプロヴァイゼーションで行われたこのシーンでは、生と死を巡る崖っぷちで、ギリギリの感情の駆け引きが展開されます。
スレード中佐は「本気で自殺をしたいが本気で止めて欲しい」というアンビバレントな感情の中、死ぬきっかけと生きるきっかけを同時に探します。
そしてこの戦いの末にチャーリーもが死を覚悟したとき、人は引き裂かれた感情の発露を認知するのです。

この映画でアル・パチーノは演技の極北を見せつけ、ゴッドファーザー PART IIで逃していたアカデミー主演男優賞を受賞しました。

アリストテレスは演劇について、架空のものとして認知しながら、感情移入してしまう矛盾にこそ本質的スパークがあり、「嘘」こそが最大の舞台装置であるとします。
演技におけるリアリティとは、嘘であることを表現するということなのです。


不幸への志向
多くの人が武器のないままにクリエイションの世界に飛び込んできます。クリエイションを分析すればするほど、人生が世知辛く、本質的に耐えがたい苦痛に満ちていることがわかるのですが、それを理解していないのです。

人間は幸せになりたいとは思っていないのです。幸せな状態にあると死ぬことが辛くなるので、本能的にブレーキをかけるのです。これはフロイトの「タナトス」という言葉で定義されています。

だから人は少しずつ小さな不幸を集めていく必要があるのです。それがブルーハーツ「情熱の薔薇」の歌詞にも現れていますが、多くの人が十全に理解できません。

なるべく小さな幸せと
なるべく小さな不幸せ
なるべくいっぱい集めよう
そんな気持ち分かるでしょう

こういった本質に触れることは、パンドラの箱に手をかけるようなものでもありますが、人間という存在自体の虚しさを超越した「メタ視点」で捉え、エンタテインメントに落とし込むことで、人々に幸不幸の入り混じったしみじみとした感情を引き起こさせるのです。


生と死を超越する歌
森進一のヒット曲「襟裳岬」は、女性問題とそれを苦にした母親の自殺から苦境に立たされた森進一と、同様の問題を抱えていた吉田拓郎が互いにシンパシーを得て、共鳴するように乾坤一擲の曲を生みだし、大ヒットとなったものです。

この「人生って何なんだろう」というやるせない感情の元に吐き出される「えりぃ~~ものぉ」がロンギヌスの槍となって森進一を貫き、その様が鑑賞者にカタルシスを与えるのです。

この生と死の交錯する瞬間こそが人生の本質であり、森進一が「えりぃ~~ものぉ」と歌い上げ、フランク・スレード中佐が「I'm in the DARK!」と叫ぶとき、彼らは「素晴らしいもの」を超越した「クリエイティブの真髄」に到達しているです。

ハックル氏はこの瞬間を、「Touch」するという表現で、クリエイターがたどり着くべき境地として定義します。


生きる構え
そこまでしてクリエイションに向かわなければならないのかと問われれば、「仕方がない」と返すほかないこのクリエイターが果たすべき役割ですが、人々の犠牲になることで「Touch」に至ることができ、世知辛さの中に一服のしみじみとした感情を鑑賞者に引き起こすのです。

ここまで話されたような心持ちを得るには、ヘーゲルの「ジンテーゼ」という概念が役立ちます。

テーゼ(命題)とアンチテーゼ(反命題)を総合的に一つのテーゼとして説明できることを言う。
ジンテーゼとは - はてなキーワード
http://d.hatena.ne.jp/keywordtouch/%A5%B8%A5%F3%A5%C6%A1%BC%A5%BC


普段の生活とそのオポジット(対極)、そして課題と課題を拒むもの、両方を同時に達せられることは何か、という問いを立てることが重要なのです。

例えば、「伝える」ということについていえば、テーゼ・「伝える」に対するアンチテーゼ・「伝わらない」があり、このジンテーゼは「伝えようとしないほど伝わる」というものになります。


後半

協力者を「倒す」6ステップ
クリエイティブは一人ではできないため、協力者が必要です。
では質の高いクリエイションに向かうとき、その協力者とどのような関係を築けばいいでしょうか。

それは、「Win-Win」を越える関係ーー「倒す」。
さらに言えば「圧倒する」ことが必要です。

「倒す」ことを学ぶには、塩野七生「ローマ人の物語」のカエサルの章を読むといいでしょう。

クリエイションは内容が大切と思われがちですが、多くの人はその良し悪しを判断することができないためーーもちろん自分自身は判断できなければなりませんがーーもっと大切なことがあります。

それは、
1.外見
2.相手を理解する
3.弱点を演出する
4.予測と裏切り
5.三手先の嘘
6.感情を出す
というもの。順に見ていきましょう。

1.外見
ファッション、身のこなし、話しかた、話すタイミング、相づちの打ちかたが重要です。
こと声の発しかたについては、低音で相手の「肌のうぶ毛を震わせる」ように話します。
オタクの声が高いのは、相手に拒否を示す無意識の抵抗なのです。

2.相手のことを理解する
前提として、人は相手を理解したくないという壁があります。クリエイションに向かうためにはその壁を乗り越えなければなりません。
相手の来歴、目的、志向などをプロファイリングし、嘘をつき、説得し、誘惑するのです。人を人とも思わない姿勢と、「自分のための犠牲にする」という断固たる決意が重要です。

3.弱点を演出する
・気が狂っている
・感情的
・子どものようだ
・利己的
・ひとりよがり
などの欠点を演出します。特に「気狂い」であるというのは、「気狂いだからクリエイティブ」という交換の概念が働きやすくなります。
3年程度は気狂いとなる覚悟を決めて、人を倒す道を極めるべきです。

4.予測と裏切り
村西とおる監督の愛人とされるAV女優・黒木香がヒットした要因である、
・お嬢様「なのに」AV女優
・上品「なのに」わき毛
という「なのにの演出」を参考に、どのような予断を抱かせるのかの戦略を立てる必要があります。
自分がやろうとしていることのイメージを反転させるような予断を演出します。例えば「身なりのいい人が気狂い」などがわかりやすいでしょう。

5.三手先の嘘をつく
予断を抱かせるというのは、「ばれる嘘をつく」ということでもあります。そうすると相手に「利用できる」と思わせることになるのですが、ここで相手に嘘がばれていないと思っているフリをすることで、先んじることができます。

6.感情を出す
嫌われることを怖れるのは、自身の無価値性への怖れでしかありません。
これを乗り越えるには、自分が無価値であることを認めることが必要です。
感情を出すことによって人間関係が上手くいかなくなる先に「倒す」道があるのです。


美的感覚を磨く
これまで見てきたように、相手を「倒す」道を進む決意をした人間が、「Touch」していなければ、クリエイティブの道はうまくいきません。
これには「美」が助けとなるでしょう。

人間の目はすぐに汚れてしまうので、美のセンサーの感度を常にメンテナンスする必要があります。
美的感覚を養うというのは「違いを見抜く」ことであり、「美しい歪みとは何かがわかる」ということです。
「違いを見抜く」ことは田山幸憲「パチプロ日記」で紹介されているパチンコ台の釘を見る方法が、後者は「開運!なんでも鑑定団」の中島誠之助氏が持つ審美眼が参考になります。

この能力を磨くには、美しいものに囲まれる生活をすることが必要です。
「歪みの美しさ」を知るには、順に
・ポール・セザンヌ
・ゴッホ
・アンリ・ルソー、サルバドール・ダリ
がお勧めです。

アンリ・ルソーとサルバドール・ダリは、ハックル氏が高校生のころ折に触れて図書館にこもり画集を見ていたそうで、いま振り返ってみるとその経験が審美眼を養うこととなったということでした。

そして、審美眼を養う副次的な効用として、自分と接する人の能力を測ることができます。
ハックル氏に接する方の評価は、
・モテる or モテない
・頭がいい or 頭が悪い
・文章が上手い or 文章が下手
というようにさまざまな点で両極端に分かれるのだそうですが、そこで悪い評価を下してしまう人を「美的感覚が劣っている」と判断し、リストから除外することができるそうです。


まとめ
「演技」と「歌」から導き出される人生の本質は、やるせないほどに世知辛いものだ。でもその矛盾する要素に感情が引き裂かれるような場所にこそ、「Touch」は待っているんだ。

クリエイションは中身が大切?いえいえ、大事なのは「見た目」。そこをきっかけに、協力者をいかに「倒す」かを考え続けよう。美的感覚を養うことも忘れずにね!


終わりに
前回のまとめにも書いたのですが、11月はあらゆる面でハックル氏漬けの一ヶ月でした。

ハックル氏がクリエイティブについて語るとき、それは心の奥底にある大切なものをそっと掬い出してくれるようでもあり、触れたくなかったもの、思い出したくもないことをかき乱されるようでもあります。
そしてクリエイティブへの道のりは素晴らしく光り輝いても見えるし、とても苦しい受難の道にも思えます。

この相反する思いに魂を揺さぶられ、意識の変容を受け入れるとき、それが自身のこれまでの人生を質し、生活態度や身のこなし、話し方にまで影響を及ぼしていることに気がつきます。

この旅も残すところあと二回となりました。
どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。

今回授業の関連メディアはこちらです。
※Amazonアソシエイトリンクを使用させていただいております。

セント・オブ・ウーマン(Scent of a Woman)


ゴッドファーザー PART II


アリストテレス


フロイト


ブルーハーツ「情熱の薔薇」


森進一「襟裳岬」


ヘーゲル


黒木香「SMぽいの好き」
SMぽいの好き 黒木 香 [DVD]

田山幸憲「パチプロ日記」


中島誠之助「「開運!なんでも鑑定団」の十五年 」


塩野七生「ローマ人の物語」




最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html