2014年12月3日水曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第十回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2014年11月22日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第十回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

前半では映画と音楽を通して、クリエイティブの本質に迫ります。
後半は、これまでの「本質」を巡る旅を一休みし、「表面」について学びます。

本日のメニューはこちら!

前半
  • クリエイティブの本質は演技に宿る
  • 感情の駆け引き
  • 不幸への志向
  • 生と死を超越する歌
  • 生きる構え

後半
  • 協力者を「倒す」6ステップ
  • 美的感覚を磨く


前半

クリエイティブの本質は演技に宿る
演技というのは、非常にクリエイティブな営みです。
そして演技のクリエイティビティとは、常に二つの問いに直面することで生まれるのです。

 ・自分を役に近づける
 ・役を自分に近づける

ユダヤ人俳優は前者、イタリア人俳優は後者からアプローチする傾向があるものの、やはりこの矛盾したふたつのアプローチを同時に行なうことになります。
この、相反する要素を携えていることはクリエイティブおいて重要な意味を持ちます。

「似ている」というのが「同じ」と「違う」を持ち、「夕陽」が「昼」でもあり「夜」でもあるというように、その境界線に人は否応なく惹かれるのです。


感情の駆け引き
宿題となっていた映画「セント・オブ・ウーマン(Scent of a Woman)」の名シーンから、演技の真髄を感じとることができます。

高校生のチャーリーと訪れたニューヨークのホテルで、スレード中佐はチャーリーを買い物に向かわせます。
心の引っ掛かりを覚えたチャーリーが途中で引き返すと、スレード中佐は軍服に身を包み、かねてから計画していた自殺を実行に移そうとしています。




ほぼインプロヴァイゼーションで行われたこのシーンでは、生と死を巡る崖っぷちで、ギリギリの感情の駆け引きが展開されます。
スレード中佐は「本気で自殺をしたいが本気で止めて欲しい」というアンビバレントな感情の中、死ぬきっかけと生きるきっかけを同時に探します。
そしてこの戦いの末にチャーリーもが死を覚悟したとき、人は引き裂かれた感情の発露を認知するのです。

この映画でアル・パチーノは演技の極北を見せつけ、ゴッドファーザー PART IIで逃していたアカデミー主演男優賞を受賞しました。

アリストテレスは演劇について、架空のものとして認知しながら、感情移入してしまう矛盾にこそ本質的スパークがあり、「嘘」こそが最大の舞台装置であるとします。
演技におけるリアリティとは、嘘であることを表現するということなのです。


不幸への志向
多くの人が武器のないままにクリエイションの世界に飛び込んできます。クリエイションを分析すればするほど、人生が世知辛く、本質的に耐えがたい苦痛に満ちていることがわかるのですが、それを理解していないのです。

人間は幸せになりたいとは思っていないのです。幸せな状態にあると死ぬことが辛くなるので、本能的にブレーキをかけるのです。これはフロイトの「タナトス」という言葉で定義されています。

だから人は少しずつ小さな不幸を集めていく必要があるのです。それがブルーハーツ「情熱の薔薇」の歌詞にも現れていますが、多くの人が十全に理解できません。

なるべく小さな幸せと
なるべく小さな不幸せ
なるべくいっぱい集めよう
そんな気持ち分かるでしょう

こういった本質に触れることは、パンドラの箱に手をかけるようなものでもありますが、人間という存在自体の虚しさを超越した「メタ視点」で捉え、エンタテインメントに落とし込むことで、人々に幸不幸の入り混じったしみじみとした感情を引き起こさせるのです。


生と死を超越する歌
森進一のヒット曲「襟裳岬」は、女性問題とそれを苦にした母親の自殺から苦境に立たされた森進一と、同様の問題を抱えていた吉田拓郎が互いにシンパシーを得て、共鳴するように乾坤一擲の曲を生みだし、大ヒットとなったものです。

この「人生って何なんだろう」というやるせない感情の元に吐き出される「えりぃ~~ものぉ」がロンギヌスの槍となって森進一を貫き、その様が鑑賞者にカタルシスを与えるのです。

この生と死の交錯する瞬間こそが人生の本質であり、森進一が「えりぃ~~ものぉ」と歌い上げ、フランク・スレード中佐が「I'm in the DARK!」と叫ぶとき、彼らは「素晴らしいもの」を超越した「クリエイティブの真髄」に到達しているです。

ハックル氏はこの瞬間を、「Touch」するという表現で、クリエイターがたどり着くべき境地として定義します。


生きる構え
そこまでしてクリエイションに向かわなければならないのかと問われれば、「仕方がない」と返すほかないこのクリエイターが果たすべき役割ですが、人々の犠牲になることで「Touch」に至ることができ、世知辛さの中に一服のしみじみとした感情を鑑賞者に引き起こすのです。

ここまで話されたような心持ちを得るには、ヘーゲルの「ジンテーゼ」という概念が役立ちます。

テーゼ(命題)とアンチテーゼ(反命題)を総合的に一つのテーゼとして説明できることを言う。
ジンテーゼとは - はてなキーワード
http://d.hatena.ne.jp/keywordtouch/%A5%B8%A5%F3%A5%C6%A1%BC%A5%BC


普段の生活とそのオポジット(対極)、そして課題と課題を拒むもの、両方を同時に達せられることは何か、という問いを立てることが重要なのです。

例えば、「伝える」ということについていえば、テーゼ・「伝える」に対するアンチテーゼ・「伝わらない」があり、このジンテーゼは「伝えようとしないほど伝わる」というものになります。


後半

協力者を「倒す」6ステップ
クリエイティブは一人ではできないため、協力者が必要です。
では質の高いクリエイションに向かうとき、その協力者とどのような関係を築けばいいでしょうか。

それは、「Win-Win」を越える関係ーー「倒す」。
さらに言えば「圧倒する」ことが必要です。

「倒す」ことを学ぶには、塩野七生「ローマ人の物語」のカエサルの章を読むといいでしょう。

クリエイションは内容が大切と思われがちですが、多くの人はその良し悪しを判断することができないためーーもちろん自分自身は判断できなければなりませんがーーもっと大切なことがあります。

それは、
1.外見
2.相手を理解する
3.弱点を演出する
4.予測と裏切り
5.三手先の嘘
6.感情を出す
というもの。順に見ていきましょう。

1.外見
ファッション、身のこなし、話しかた、話すタイミング、相づちの打ちかたが重要です。
こと声の発しかたについては、低音で相手の「肌のうぶ毛を震わせる」ように話します。
オタクの声が高いのは、相手に拒否を示す無意識の抵抗なのです。

2.相手のことを理解する
前提として、人は相手を理解したくないという壁があります。クリエイションに向かうためにはその壁を乗り越えなければなりません。
相手の来歴、目的、志向などをプロファイリングし、嘘をつき、説得し、誘惑するのです。人を人とも思わない姿勢と、「自分のための犠牲にする」という断固たる決意が重要です。

3.弱点を演出する
・気が狂っている
・感情的
・子どものようだ
・利己的
・ひとりよがり
などの欠点を演出します。特に「気狂い」であるというのは、「気狂いだからクリエイティブ」という交換の概念が働きやすくなります。
3年程度は気狂いとなる覚悟を決めて、人を倒す道を極めるべきです。

4.予測と裏切り
村西とおる監督の愛人とされるAV女優・黒木香がヒットした要因である、
・お嬢様「なのに」AV女優
・上品「なのに」わき毛
という「なのにの演出」を参考に、どのような予断を抱かせるのかの戦略を立てる必要があります。
自分がやろうとしていることのイメージを反転させるような予断を演出します。例えば「身なりのいい人が気狂い」などがわかりやすいでしょう。

5.三手先の嘘をつく
予断を抱かせるというのは、「ばれる嘘をつく」ということでもあります。そうすると相手に「利用できる」と思わせることになるのですが、ここで相手に嘘がばれていないと思っているフリをすることで、先んじることができます。

6.感情を出す
嫌われることを怖れるのは、自身の無価値性への怖れでしかありません。
これを乗り越えるには、自分が無価値であることを認めることが必要です。
感情を出すことによって人間関係が上手くいかなくなる先に「倒す」道があるのです。


美的感覚を磨く
これまで見てきたように、相手を「倒す」道を進む決意をした人間が、「Touch」していなければ、クリエイティブの道はうまくいきません。
これには「美」が助けとなるでしょう。

人間の目はすぐに汚れてしまうので、美のセンサーの感度を常にメンテナンスする必要があります。
美的感覚を養うというのは「違いを見抜く」ことであり、「美しい歪みとは何かがわかる」ということです。
「違いを見抜く」ことは田山幸憲「パチプロ日記」で紹介されているパチンコ台の釘を見る方法が、後者は「開運!なんでも鑑定団」の中島誠之助氏が持つ審美眼が参考になります。

この能力を磨くには、美しいものに囲まれる生活をすることが必要です。
「歪みの美しさ」を知るには、順に
・ポール・セザンヌ
・ゴッホ
・アンリ・ルソー、サルバドール・ダリ
がお勧めです。

アンリ・ルソーとサルバドール・ダリは、ハックル氏が高校生のころ折に触れて図書館にこもり画集を見ていたそうで、いま振り返ってみるとその経験が審美眼を養うこととなったということでした。

そして、審美眼を養う副次的な効用として、自分と接する人の能力を測ることができます。
ハックル氏に接する方の評価は、
・モテる or モテない
・頭がいい or 頭が悪い
・文章が上手い or 文章が下手
というようにさまざまな点で両極端に分かれるのだそうですが、そこで悪い評価を下してしまう人を「美的感覚が劣っている」と判断し、リストから除外することができるそうです。


まとめ
「演技」と「歌」から導き出される人生の本質は、やるせないほどに世知辛いものだ。でもその矛盾する要素に感情が引き裂かれるような場所にこそ、「Touch」は待っているんだ。

クリエイションは中身が大切?いえいえ、大事なのは「見た目」。そこをきっかけに、協力者をいかに「倒す」かを考え続けよう。美的感覚を養うことも忘れずにね!


終わりに
前回のまとめにも書いたのですが、11月はあらゆる面でハックル氏漬けの一ヶ月でした。

ハックル氏がクリエイティブについて語るとき、それは心の奥底にある大切なものをそっと掬い出してくれるようでもあり、触れたくなかったもの、思い出したくもないことをかき乱されるようでもあります。
そしてクリエイティブへの道のりは素晴らしく光り輝いても見えるし、とても苦しい受難の道にも思えます。

この相反する思いに魂を揺さぶられ、意識の変容を受け入れるとき、それが自身のこれまでの人生を質し、生活態度や身のこなし、話し方にまで影響を及ぼしていることに気がつきます。

この旅も残すところあと二回となりました。
どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。

今回授業の関連メディアはこちらです。
※Amazonアソシエイトリンクを使用させていただいております。

セント・オブ・ウーマン(Scent of a Woman)


ゴッドファーザー PART II


アリストテレス


フロイト


ブルーハーツ「情熱の薔薇」


森進一「襟裳岬」


ヘーゲル


黒木香「SMぽいの好き」
SMぽいの好き 黒木 香 [DVD]

田山幸憲「パチプロ日記」


中島誠之助「「開運!なんでも鑑定団」の十五年 」


塩野七生「ローマ人の物語」




最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html

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