2014年9月30日火曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第六回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいしです。

2014年9月20日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏の主催する「岩崎夏海クリエイター塾」の第六回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

メニューはこちら!

前半
  • ルック&エモーション
  • 技術が向上する構図
  • 下積みのジレンマ
  • 秋元康氏の政治力

後半
  • ハックルブロマガの衝撃
  • 撮影技法による感情移入
  • タペストリー
  • 等価交換の法則
  • 既存の価値を超越せよ
  • 悪口のすゝめ

はじめに

冒頭で、私が書かせていただいた前回(第五回)のまとめブログに言及してくださり、そのなかで「ほとんど無意識のうちに喋っている状態なのかもしれない。そういうグルーヴ感がでているような状態が望ましく、調子がいい。」ということをおっしゃっていました。
確かに非常に濃い講義で、その分まとめに難儀してしまいましたが、今回もそれに違わず充実した内容でした。
というわけで、「映画『フォレスト・ガンプ』を観てくるように」という宿題にも関わらず、映画「ゴッドファーザー」の話しから始まる疾走感がたまらない第六回、スタートです!


ルック&エモーション

映画の魅力、ひいてはエンタテインメントの魅力とは一体どのようにして僕たちの前に立ち現れるのでしょうか。
それは、「ルック」と「エモーション」であり、このどちらにも共通することは、「無意識」に働きかけるということで、これを女性の魅力に例えるなら、「美人は『意識』に働きかける」けれど、「香りは『無意識』に働きかける」ので、抗い難いのだそうです。

「ルック」とは、1989年に発行された書籍「マスターズオブライトーアメリカン・シネマの撮影監督たちー」に登場する、映画「ゴッドファーザー」の撮影監督である、ゴードン・ウィリス氏が掲げる概念で、映画「ゴッドファーザー」のファーストシーンにおけるライティングを例に挙げ、雰囲気やパッと見が鑑賞者の無意識に大きな影響を与えていることが解説されました。

続いて「エモーション」を岩崎氏流にいうと「ヴィト、ええわぁ。。。」なのですが、これはヴィト・コルレオーネと葬儀屋(ボナセーラ)のエピソードを例に挙げ、この映画の表層をなす「マフィア物語」に対する深層の哲学である「人間の抗い難い魅力」、人間が人間を魅了するというのがどういうことなのかが敷衍されました。


技術が向上する構図
    
前述の「マスターオブライト」から、ハリウッドの衰退と再興、そして撮影監督の地位が大きくなっていった経緯についての記述を引き、健全な競争の原理の重要性を説きます。

1950年代のハリウッドは技術者の既得権益化が進んだことからその勢力を衰退させます。
しかし、テレビの勃興に伴う競争からレベルの高い監督が輩出されるようになり、ハリウッドへと還流することで再興を果たしたのだそうです。

この構図は、岩崎氏が現在最も力を注いでいるYouTubeでの取り組みと相似形をなしているように感じます。


下積みのジレンマ

岩崎氏は社会に出るにあたり、映像が好きであったことから一旦は映像業界へと進むことを検討したものの、映像業界に進んでもすぐにはカメラに触れないなどの徒弟制度の理不尽につきあたり、すぐに最前線にアサインできるという判断から放送作家の道へ進んだそうです。

現在、多くの人がエンタテインメントやクリエイティブに対する行き詰まりと閉塞感を感じているなか、最前線にアサインし、状況を選択することの重要性を説いています。

更に岩崎氏は、多くの人が「自分は自分の好きなことがわかっている」という「勘違い」をしていると指摘し、好きかどうかわからないというスタンスの方が上手くいくということを折にふれて主張しています。

こうした岩崎氏の経験や洞察が、今日に至りYouTubeでの取り組みに繋がり、その岩崎氏がTwitterでつぶやいたりブロマガで展開する考察はどれも有益と思えるものばかりです。
これらは不肖ながらYouTubeスターを目指す僕にとってはなくてはならないものです。
そんな岩崎氏のYouTubeでの取り組みについてのツイートを僕がまとめたものがございますので、拙まとですがどうぞご覧ください。

ハックル氏、YouTubeはじめるってよ - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/716341

岩崎氏のYouTubeチャンネル HuckleTV:投稿時登録者数734人


秋元康氏の政治力
話しが逸れてしまいましたが、講義はクリエイションにおける自身のあり方、「プレゼンテーション」について進んでいきます。

岩崎氏の分析によると、秋元康氏はものづくりにおいて直感に対して鈍感だが、「打席に立ってとりあえず打つ能力」とそれに付随する「政治力」、「人のせいにする」ことに長けているということでした。
岩崎氏はこのなかでも「政治的であること」が重要で、相手に得をさせるために何をするかを考えることで、局面を打開できることが多くあると説きます。
これは岩崎氏が38歳で迎えたコペルニクス的転換よってある覚悟を持つことで、この「政治的アプローチの重要性」に辿りついたのだそうです。

覚悟、それは「自分を捨てる」というコンセプトを持つことであり、笑わせるよりも笑われる人が勝ちであることをデザインできるかにかかってきます。
しかしこれは尊厳を失うことにもなり、易しい道ではありません。

こうしたことを学ぶには、映画を観ること、特に役者のあり方を見ることが手助けになると岩崎氏は説きます。
なぜなら、役者の成長にとって最も重要なのが「自分を捨てる」アプローチであるからだそうです。

世阿弥の「若くしてまがいものの華が咲く」という言葉を引いて、エンタテインメントにおいては若いということだけで実力以上の称揚をされることが多くあり、それゆえに挫折を経験し、おちぶれて「自分を捨てる」アプローチを取れたものが、実力をつけ本物の華を咲かせることになるため、格好の教材となるのだと解説されました。


後半

ハックルブロマガの衝撃

さて、授業の後半は映画「フォレスト・ガンプ」についてですが、岩崎氏のブロマガ連載・週末に見たい映画シリーズで紹介されていました。
氏のブロマガを購読し続けて、幾度となく目から鱗が落ちる思いをしてきましたが、この記事で落ちた鱗はまさに最大級でした。
"多くの人が「フォレスト・ガンプ」を純然たるエンターテインメント映画だと考えているからだ。だから、そうした発見や気づきがあるというふうには、あまり考えていないのである。
しかしながらこの映画は、深い哲学的洞察をはらんでいる。ぼくは「フォレスト・ガンプ」を何度も見返す中で、そのことに気づいた。"
>>>週末に見たい映画#002「フォレスト・ガンプ」 (1,932字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar24178

岩崎氏が気づいた深い哲学的洞察とは、「被差別者の持つ差別感情」。
ブロマガでは、フォレストが決定的に差別心を顕にするシーンや、それぞれの登場人物に与えられたモチーフについて詳しく述べられているので、是非ともご覧になって、映画を見直していただきたいです。


撮影技法による感情移入

これ以降は前回と同様、名作としての「構造」を、岩崎氏が挙げるものの他、受講生が読みとったものを発表しそれに対して岩崎氏が見解を述べるという形式で講義が進行しました。

この映画は、とにかくカメラが動き続けるということが特徴で、その中でもドリーインという手法は登場人物の存在の大きさや尊さが感じられる効果があるそうです。
とりわけフォレスト・ガンプのお母さんが今際の際というシーンでは、彼の心情におけるお母さんの存在の大きさが真に迫ってくるように感じられ、鑑賞者は感情移入を避けることができないということでした。

それとは対象的に、ズームアウトは鑑賞者の感情移入を拒否する手法であるとして、映画「バリー・リンドン」で用いられていることが紹介されました。
また、スタンリー・キューブリック監督は、受け入れがたいものを描くときに、トレードオフとして画を美しくするという手法をとっているとのことでした。

この詳細は岩崎氏のブロマガでどうぞ。

週末に見たい映画#52「バリー・リンドン」(2,207字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar620754


タペストリー

続いて受講生から、個々のシークエンスが独立しながらも関連しあって進んでいくことが魅力になっているという発表がありました。

これはタペストリーという手法で、ストーリーになり得ない個々のシークエンスを、関連させながら紡いでいくことが物語の本質であり、このことは歴史を記述する上での取捨選択に似ているということでした。


等価交換の法則

前述したようにこの映画の持つ深遠な哲学的洞察は「被差別者の持つ差別感情」ですが、差別の本質に迫る上での重要な概念として、「等価交換の法則」が挙げられました。

「等価交換の法則」についての記述があるブロマガはこちら。

"多くの人が「この世には『等価交換の法則』がある」と思っていて、何かに恵まれていると何かが損なわれるものだ――と考えるからだ。それで、「天才に恵まれると人情が損なわれる」というのは、この等価交換の法則にぴたりと当てはまるので、「なるほど」と納得してしまうのである。"
>>>映画「風立ちぬ」が誤解される理由とその正しい見方について(3,132字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar300525

映画「フォレスト・ガンプ」のケースでは逆に「何かが損なわれると代わりに美しいものを得る」という交換になりますが、「障害者は心がキレイである」であったり「手足がない人はいいやつである」といったことが本質的には誤解であることを幾度となくあぶり出しています。

この「等価交換の法則」は多くの人が持つ「既存の価値観」のうちのひとつであり、それに縛られることが物事の本質を見誤らせてしまうことは多くのあるのではないでしょうか。

「既存の価値観」に縛られた人物として、フォレストの片想いの相手であるジェニーが存在します。
彼女の持つ価値観とは、「信念を持って(クリエイターとして)生きることは美しい」、「愛がなければ(フォレストと)結婚してはいけない」、「父は敬わなくてはいけない」というものがありますが、結果的に彼女の人生は悪い方向へと進んでいきます。

長い時間をかけて、また自分が死に瀕していることがわかって初めてその全てのくびきから解き放たれ、好きではないガンプと結婚し、生家(父の象徴)に石を投げつけ、既存の価値観から抜け出ることができたのです。


既存の価値を超越せよ

講義の前半で、「人間が人間を魅了する」ということが話されました。
ではどのような人物が、僕らを魅了するのでしょうか。

魅力的な人物とは、通常の価値観を越えた深遠な価値観を持った人物、自分ができないことをやってのける、ある意味ではアレルギーと表裏一体となった感情を伴うものであると、岩崎氏は説きます。

具体的には「源氏物語」の光源氏(注:柏木と薫の件を引いていたと思われる)や、再度ヴィトー・コルレオーネを例に挙げて説明していました。

既存の価値を超越するということについて、ブロマガで言及されていました。

"多くの人が「自分は自らにいましめをしていて、そこから解放されたいと願いながら、それを果たせずにいる」と考えているからだ。そのため、それを果たしたエルサに対して、深い共感と強い憧れを抱くのである。自分がしたくてもできないことをする人――スターの姿を、この瞬間のエルサに見出すのだ。"
>>>週末に見たい映画#49「アナと雪の女王」(2,198字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar520839

さらに、ジブリ・スタジオを追ったドキュメンタリー番組で描かれていた宮崎駿氏の抱える苦しみーー組織として映画づくりを行なう以上は、低い地位で甘んじるクリエイター(従業員)の存在が必要不可欠であるが、同じクリエイターとしてそのように低い地位で甘んじていていいのだろうかという思いを抱いてしまうジレンマーーから、人間の価値には上下があるという醜い感情ーー厳然たる事実ではあるがーーを受け容れる必要があるということが話されました。


悪口のすゝめ

このように、憧れの対象となる人物というのは、受け入れがたいことを受け入れたり、自分ができないことをやってのけるため、常にアレルギーと表裏一体で、なかなか自分のコンセプトとしては取り入れがたいというのが実情です。

これを乗り越えるという意味で、「他人をバカにする」ことや「悪口を言う」ことも実は必要であると岩崎氏は主張します。

悪口というのはある種の後ろめたい行為で、誰にでもできるものではないということが分かる。しかし、それが後ろめたく誰にもできるものではないからゆえ、エンターテインメントとしての強い価値を持つようになったのだ。
>>>悪口のエンターテインメント性(2,421字)
※有料コンテンツです
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar162919


おわりに

実はぼくも悪口が大好きで、相手もなんとなくそんなことを思っているだろうなという悪口を話すとすごく盛り上がります。
また、会社で上司に他のメンバーの悪口を言うと、我が意を得たりとばかりに胸の内を吐露するのを目にしてきました。
チームのリーダーであり、メンバーを評価する立場であるがゆえに平等に接しなければならないといういましめがあり、無意識のうちに僕の悪口が刺さっていたのかと感心してしまいました。

また、そういうコンセプトを持つことで、仮にだれかが陰で自分の悪口を言っていたとしても、まあそんなものだろうという一種の懐の深さみたいなものも持てるのではないかと考えるようにもなりました。

楽しいと思いながらも少しばかり後ろめたい気持ちを抱えていましたが、これからも悪口をたくさん言うことでクリエイティビティを磨き、魅力的な人物になっていきたいと思います。


次回は10月04日(土)
宿題は映画「ゴッドファーザー」(1,2,3)を観てくることです。


またあそぼーね!


岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html


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