2015年1月30日金曜日

第二期岩崎夏海クリエイター塾 第一回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2015年1月17日に渋谷で行われた、ハックル氏(@huckleberry2008)こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する「第二期岩崎夏海クリエイター塾」の第一回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

第一期から引き続きの参加となった岩崎夏海クリエイター塾。十数名の方がリピート参加とのことでした。
第一期からご一緒させていただいている塾生の方のツイートをご紹介します。




ハックル氏は折にふれて「2015年は勝負の年」とおっしゃっていて、それを体現するように濃い授業内容となり、それがお二方のツイートにも現れています。

本日のメニューはこちら!

  • 価値について深く考えた結果、価値については考えない
  • マジシャンに学ぶクリエイションの外郭
  • クリエイションは「序列」である
  • 生きるとは問題解決すること
  • 美は「バランス」である


岩崎夏海クリエイター塾では基本概念「クリエイションとは換骨奪胎である」を軸にして授業が展開されていきます。
換骨奪胎の段階は下記の通り。
1.良いものを見分ける
2.構造を見抜く
3.他のものに移し替える


価値について深く考えた結果、価値については考えない
クリエイターを目指す者のなかに、名画「モナリザ」を良しとしない罠があり、その価値を疑ってかかろうとするのだそうです。

※画像はWikipediaからパブリックドメインのものを使用しています。

ハックル氏はこれを、クリエイターはいわばリレーの走者であり宅配業者であるから、自分自身が繋ぐバトンや運ぶ荷物の良し悪しについて検討したり判断する必要はない、と断じます。
歴史の中で「良い」とされたものに対する価値判断は必要なく、既存価値の肯定という谷を越える必要があるのだそうです。

そして二番目の「構造を見抜く」を言い換えれば、「それはなぜ素晴らしいのか」という「問い」であり、その答えを出してくれるのが、評論家という存在なのだとハックル氏は言います。
彼らはクリエイターの協力者であり、クリエイションに援用する限りにおいては、その評論や抜き出した構造を利用しても、問題が起きることはあまりないということです。

この「構造」とはどういったものなのでしょうか。
その一部としてハックル氏は「奥深さ」「細部へのこだわり」を挙げます。
人の見た目が眉毛一本で印象が変わるという、あるヘアメイクアーティストの言葉を借り、「見る」「違いを見抜く」ことが修練が必要な技術であるとし、また、ハックル氏が、映画『フォレスト・ガンプ』を幾度となく見返す中で発見した、奥深さ・細部へのこだわりのひとつが例示されました。
この映画の冒頭で画面を横切るバスに、1983年モデルの車の広告が掲げられているのですが、映画の中で年代が明示されている部分は他に無く、ジェニーが冒されていた原因不明の病気というのがエイズであることが暗示されているのだそうです。


マジシャンに学ぶクリエイションの外郭
Mr.マリック氏をはじめとして、なぜマジシャンはいかにも嘘をつきそうな、胡散臭さを感じさせる風体をしているのでしょうか。信用されるような格好をしたほうがいいのではないでしょうか。
同様に、ある結婚詐欺師を描いた映画『クヒオ大佐』でも、いかにも胡散臭い人物像が描かれています。
騙される人々は「人を騙すなら、信用されるためにきちんとした格好なり態度をするだろう」という予断を抱くのだと、ハックル氏は言います。

このように予断・予測が人の心理を大きく左右する例として、驚くことが怖いのではなく、恐ろしい出来事が起きるかもしれないと、予測することが怖いのだという、ヒッチコックの恐怖理論が挙げられました。
このように構造の相似形を見い出し、重ねていくことで、奥深いコンテンツを作り出すことができるのだそうです。


クリエイションは「序列」である
画家・山下清が軍階級で作品をランク付けしていたように、クリエイションには点数がつけられる、絶対的なクリエイションがあるという視点を持ち、世界で一番、二番のものを鑑賞する必要があると、ハックル氏は説きます。

そこで、文学の歴史における源流ともなっている『ドン・キホーテ』についてのお話しがありました。

著者アントニオ・セルバンテスは騎士道小説のくだらなさに辟易し、いかにしてそれらを貶めるかという視点で、先行する騎士道小説を読み込んで頭がおかしくなった老人の物語を書いたそうです。
今から400年前に著されながらも、「ゲーム脳」と呼ばれ、コンテンツ消費過多により社会不適合状態が引き起こされるという、現代的なテーマを持っているとハックル氏は指摘します。

ドストエフスキーはドン・キホーテを評して純粋さ、節を曲げない、付和雷同しない、信念を貫くといった点において「人間の生み出した最も美しい人間である」としたそうです。

ドン・キホーテの価値についてはハックル氏の著書『小説の読み方の教科書』でも触れられています。
メインは『ハックルベリー・フィンの冒険』の読み解きですが、いかに『ドン・キホーテ』が今に至るまで数々の作品に影響を与え続けているかについて説明されていて、非常に興味深いものとなっています。

ドン・キホーテに挑戦する場合、まずは岩波少年文庫から出版されているダイジェスト版を読むことを勧められていました。
牛島信彦氏は、『ドン・キホーテ』を訳すために、30年かけて「日本語」を勉強したそうです。
その意味で日本は翻訳天国であり、脈々と連なる歴史的な名作が実力ある翻訳者によって訳されているため、原書を読むより素晴らしい読書体験ができるとハックル氏は言います。


松岡正剛氏が運営する書評サイト・千夜千冊でも『ドン・キホーテ』が紹介されていました。
松岡正剛の千夜千冊
ミゲル・デ・セルバンテス『ドン・キホーテ』
http://1000ya.isis.ne.jp/1181.html


後半

生きるとは問題解決すること
キリスト教における三大価値「真・善・美」のひとつでもある「美」。審美眼を磨くことが、問題解決能力を高めることに繋がると、ハックル氏は説きます。

しかしここでもまた、陥りやすい罠があります。それは「美しいとはなにか」という問いを立てたときに、「人それぞれである」とすることだとハックル氏は言います。

短期的解決と長期的解決の間では利益が相反しやすいことから、多くの人が短期的な解決策に甘んじてしまうのだそうです。
例えば、学校教育において美しさ、正しさが唯一とすると短期的に問題が生じるために「美しさは人それぞれ」という価値観が称揚されます。しかし、長期的に見ると審美眼を養う機会を失い、その結果、問題解決できない大人になってしまうのだとハックル氏は指摘します。


美は「バランス」である
審美眼を磨き、美を見抜く方法の具体例として、いくつかのお話がありました。
こちらはトピックのみと掲載といたします。

・広重のバランス
歌川広重『大はしあたけの夕立』や『四ツ谷内藤新宿』の構図における絶妙なバランスについて、
・エッジへの到達点の0.1mmの違い
・「shape」へのこだわり
・職人仕事における「仕舞い」
というキーワードを基に詳しい解説がありました。

・画集の紹介
赤瀬川原平・印象派の水辺
http://amzn.to/1EQdsJU
広重ベスト百景 赤瀬川原平が選ぶ
http://amzn.to/1EQdzW0

・アントニオ・ガウディは自然に学ぶ

・映画は画がいいと信用できる
コーエン兄弟監督作品や60年代の映画がいい
コーエン兄弟の監督作品の中でも、最も画がいいのは、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』http://goo.gl/NpKOsh

・松田美智子「サムライ 評伝 三船敏郎」
http://amzn.to/1uEcYpQ
三船敏郎の伝記。三船敏郎の演技の秘密について書かれている。

・ハックル氏は高校時代にいつもゴッホ、ルソー、ダリの画集を見ていた

・真島昌利「オーロラの夜」
「サルバドール・ダリの絵みたいに」と歌っている

・ユダヤ人型俳優の美しさ
ポールニューマン…代表作『スティング』
リチャード・ドレイファス…代表作『日の当たる教室』
リチャード・ドレイファスはアップルのCMでナレーションをしたことがある。
http://youtu.be/nmwXdGm89Tk


・スティーブ・ジョブズの審美眼
美しいものを穴が開くほど見る。
美しいもの、気に入ったものしか身の周りに置かない。
スティーブ・ジョブズ氏の美へのアプローチに関しては、ハックル氏のブロマガに関連記事があります。
デザインの時代が来る(2,670字) ※有料記事ですhttp://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar463952


最後になりましたが、次回から岩崎夏海クリエイターのレポートが簡易版(トピックの提示のみなど)のになる可能性がありますので、ご了承ください。
今後は、ハックル氏のオススメするコンテンツのインプットや、ハックル氏の膨大なコンテンツをまとめることに時間を振り分けていきたいと思います。


授業の中で言及された作品
※作品のリンクはAmazonアソシエイトリンクを使用しております。
フォレスト・ガンプ


ナニワ金融道


ドン・キホーテ岩波少年文庫ダイジェスト版


赤瀬川原平・印象派の水辺


広重ベスト百景 赤瀬川原平が選ぶ


松田美智子「サムライ 評伝 三船敏郎」


真島昌利「オーロラの夜」


江川卓「謎解き罪と罰」


岩崎夏海「小説の読み方の教科書」



最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

第一期岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html

2015年1月15日木曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第十二回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2014年12月20日に渋谷で行われた、ハックル氏(@huckleberry2008)こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する「岩崎夏海クリエイター塾」の第十二回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

第一期・岩崎夏海クリエイター塾最終回となった今回は、映画の起源から最先端を見通す興味深いものでした。
また後半は、宿題となっていた映画『インターステラー』を塾生がプレゼンテーションするという非常に刺激的な内容となりました。


本日のメニューはこちら!

  • 映画の本質は編集にあり
  • 映画をプレゼンテーションする



映画の本質は編集にあり
1894年、リュミエール兄弟が動画をスクリーンに投影する「シネマトグラフ・リュミエール」を開発したことによって、一度に多くの人々が鑑賞するスタイルの映画が生まれました。
しかしリュミエール兄弟は、目新しさがなくなって人々は興味を失い、賞味期限つきの栄光となるだろうと見切りをつけ、動画から離れていったそうです。

リュミエール兄弟 - Wikipedia
リュミエール兄弟は、アメリカのトーマス・エジソンと並び称せられるフランスの映画発明者。「映画の父」と呼ばれる。
http://goo.gl/oRCcne

それとは裏腹に、エイゼンシュテインによってモンタージュ理論が生み出され、記録としての役割しか持たなかった動画は、編集によってエモーションに訴えることができるという効果が発見されたことで、大きく発展していきます。
映画『戦艦ポチョムキン』の、階段を転げ落ちる乳母車と叫ぶ女性の有名なシーンで、鑑賞者はその意味を想像で補うのです。

セルゲイ・エイゼンシュテイン - Wikipedia
http://goo.gl/xK1IUb

その後、アメリカにおいて低級な娯楽とみなされていた映画産業を、移住してきたユダヤ人たちが成熟させ花開いていくのですが、前述の通り編集なくして映画なしとも言えるこの歴史の最先端に立つのが、クリストファー・ノーラン監督の映画『インターステラー』なのだとハックル氏は言います。

"「インターステラー」は、一見して現代映画の正当進化形だと感じた。"
「インターステラー」が橋渡すもの(2,140字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar681068


コンテンツとして歴史の浅い映画は、長い歴史を持つ演劇とは異なる進化を遂げたそうで、もっとも大きく異なるのが、演技における「外連味」なのだそうです。

日本人の99パーセントが知らない「演技とは何か?」ということ(2,164字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar549666

ハックル氏は、アリストテレスの"鑑賞者は自分が劇場にいることを知っている。つまり、そこで行われていることが嘘であることを分かっているにも関わらず感情を揺さぶられる"という論を引用し、この時、演技に宿る外連味が大きな意味を持つのだと言います。
翻って映画では演劇マジックが通用しない。動画は前述したように、記録であり、ジャーナルであるため、大げさな外連味は毒となってしまうのだそうです。


映画をプレゼンテーションする
プレゼンテーションにおいて、本質をえぐる→言葉に変える→人に話すという手順を踏む変換作業は、とてもクリエイティブな側面を持ち、「映画紹介芸」とも言えるとハックル氏は言います。
インターステラーを観に行ったという話を友人などにするとき、「どうだった?」がゴングとなってプレゼンテーションが始まる。それは、「話す」チャンス作るという意味でも重要なものになります。

プレゼンテーションは教室のホワイトボードに数字を書き、自分が話したい順番のところに名前を記入することで順番を決めます。
僕は一番手に名乗り出てプレゼンテーションを行ないました。
前述のブロマガで、愛とは何か、時間とは何か、という問いかけがされていると書かれていたのを参考にさせてもらい、愛と時間に関する自分なりの考察を発表しましたが、うまくオチをつけられず尻すぼみな展開に終わり、人前でアドリブで話すことの難しさを痛感しました。
このプレゼンテーションについては、書き起こしたものをハックル氏にいただいたアドバイスをもとに修正し、機会を見て公開したいと思います。

時間の関係で僕を含め8名の発表でしたが、それぞれの方の発表とそれに続くハックル氏のアドバイスはとても有用なものでした。
こちらは文章化しづらいので割愛させていただきます。


終わりに
2014年7月から始まった第一期・岩崎夏海クリエイター塾も、ついに最終回を迎えました。
月に二回の日程で行われてきたこの塾は、当初とは思いもよらない形で人生の深いところまで潜るようなものとなりました。
ハックル氏を通じて古今のクリエイターがその創作物と向き合う姿勢を知ることで、生き方そのものを考え直すことに繋がっていくのを感じるのです。

前回のレポートブログでもお伝えした通り、第二期・岩崎夏海クリエイター塾への参加も決定していますので、引き続きレポートブログを書くとともに、並行してハックル氏の尽きることないコンテンツをまとめることを始めようと思っています。

最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html