2014年10月31日金曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第八回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。

2014年10月18日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第八回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

前回(第七回)のブログをハックル氏がTwitter上で紹介してくださいました。
いつもありがとうございます。



自身の話し方を「わかりにくい」と評するハックル氏、そしてそれを受け取るためには、幾つかの壁を乗り越えなくてはいけないと言います。
ただ最近は、「わかりにくい」ことを積み重ねてきたことで、ここに来てわかりやすさに繋がっていく、そんな実感を持っています。
そうでもなければクリエイティブについて教えることは到底出来ないのではないでしょうか。
このジワジワ来る感じ、知的欲求の満たされ方が半端じゃないです。

それでは本日のメニューはこちら!

前半

  • アンコントローラブルな要素と向き合う
  • コンダクターであれ
  • 自分を消す
  • 気狂いのすゝめ
後半

  • 洗練された世界観を導き出す
  • 問題解決思考


前半

前半では、クリエイティブの鍵となる三つの姿勢と、それらを以ってクリエイティブに向かうために避けては通れない、「気狂いゾーン」という領域の存在についてお話しがありました。


アンコントローラブルな要素と向き合う

岩崎夏海クリエイター塾では、これまで過去の「価値の定まった」作品を紐解きながら、「価値とはなにか」を探ってきました。
これら「価値の定まった」作品は、製作における不確実性ーーアンコントローラブルな要素を乗り越えてきており、それは決して偶然ではないとハックル氏は指摘します。

前回(第七回)宿題の、映画「ゴッドファーザー」においては、ヴィト・コルレオーネを演じたマーロン・ブランドが、また、今回の宿題となっていた映画「ロッキー」では、脚本・主演であるシルヴェスター・スタローンの妻がアンコントローラブルな要素となったそうです。

マーロン・ブランドは「セリフを覚えると演技に集中できない」という謎の持論から、演技するときにカンペが用意されたというアンコントローラブルな要素を持っていたものの、当時40歳代で60歳代の設定であるドン・コルレオーネを演じるにあたり、口に綿を含んで演技するという解決策を編み出し、アカデミー賞・主演男優賞に輝きました。

そしてロッキーにおいてシルベスター・スタローンは、自身が主演することについては強情を貫きながら、脚本のエンディングについては妻ーー映画や脚本のプロではないーーに「こんなロッキー嫌いよ」と言われてニューシネマ的な暗い結末からハッピーエンドに変更するという柔軟性をもってアクシデンタルな一言に対応したそうです。
結果、ロッキーはシリーズとして大ヒットし、ニューシネマの終焉とハッピーエンド全盛のアーリーアダプターとなったといいます。

このように、クリエイティブはアンコントローラブルな要素をコントロールすることが必要な営為であり、メイキング映像を見ることが勉強になるとハックル氏は説きます。


コンダクターであれ

では、どのようにコントロールするのか。
このことについては、何故コッポラが30歳でゴッドファーザーを撮れたのかを手掛かりとして話しが進められます。
プロデュースとビジネスを学んでいたコッポラは、映画の製作に当たって信頼と権威を自分の味方にすることの重要性を知っていました。
では、バックボーンとなったのは誰か。
それは、原作者であるマリオ・プーゾであり、この49歳にして遅咲きのベストセラー作家となり、映画業界でも影響力を持っていた人物を味方につけることが、映画の成功に大きな役割を果たしたそうです。
このことを象徴するように、映画の冒頭で表示されるロゴの傍らには「MARIO PUZO'S」の文字が刻まれています。

さらに、いかに人を動かすかという点について、前述のマーロン・ブランドの例を引き合いに出し、信頼して任せることでその人のモチベーションや情熱を引き出すことができると言います。

その人にとってのモチベートは何かを考えるとき、お金や名声は誰もが求めるものであるが、ネガティブな側面もあるため、ポジティブなモチベートを引き出す必要があると言います。
ポジティブなモチベーションにつながるものは、何か。それは、やりがいや変化であるとし、特に人間は変化の奴隷といっても過言ではないとのことです。
変化を演出し、成長を促すコンダクターであれとハックル氏は説きます。


自分を消す

クリエイターを志向する人は、クリエイティブを自身の子供、分身であるという考えに陥りがちです。
これは浅い考えであるとハックル氏は指摘し、「腕のある料理人が、良質な素材を活かすために軽く茹でて塩をさっとふるだけ」のような一種の割り切りを持つべきと説きます。

その姿勢を学ぶのに、「演技」が役に立つとハックル氏は言います。
なぜなら演者の役割は自分を表現するのではなく、他者を表現する、見てきたものを話すようなものであるため、「模写」から始まるからだそうです。
クリエイティブは換骨奪胎であるという前提に立てば、まねることの効用は尽きることがなく、「クリエイティブは演技の中に宿る」ともハックル氏は言います。

この逆に、オリジナリティを大事にするダメなワナビーは、企画などのアイディアはパクってはいけないと思ってしまうし、自分には個性が無いという強迫観念から、人と違うことができない弱さから抜け出すことができないのだそうです。


気狂いのすゝめ

さて、このようにクリエイティブの鍵をつかんでいざクリエイティブに向かうとき、様々な障害が襲ってきます。
そこで必要になるのが、「彼だったらしょうがないよね」という周囲からのコンセンサスを得ることだと、ハックル氏は言います。
では、どのようにコンセンサスを得るのでしょうか。
それは、「気狂いゾーン」に踏み込むことである、とハックル氏は続けます。

「気狂いゾーン」を言い換えれば、「クリエイティブに対するまっとうな狂気」を持つことであり、さらに言えば、命をかけてやっている場面で対立する相手を殺し切ることの重要性を知っているか、ということでもあります。
前述のコッポラやマーロン・ブランドの例を始めとしたクリエイター達は、「クリエイティブに対するまっとうな狂気」という点で結びついていると言います。

そしてクリエイティブな領域は、そのような「気狂いゾーン」に包含されているのだそうです。

クリエイティブ ⊂ 気狂いゾーン

そして、ネット上での炎上について一家言持つハックル氏の直近の炎上案件をもとに、「気狂いゾーン」へ踏み込む具体的と、そこからある種の信頼を得る方法が提示されました。

多くの人がハックル氏に対し、ある「恨み」をもっているとハックル氏は分析します。
それはハックル氏は発言が自由である、という恨みであり、炎上時にハックル氏にアンチコメントを寄せてくる人は、ここぞとばかりに「恨み」を晴らそうとします。

その時にどんなことが起こるかというと、自己の義憤を周囲に見せつけることで彼(彼女)は満足し、恨みが燃焼される。そして恨みが燃焼されたあとで、必ず二つの感情がのこるのだそうです。
それは「ハックル氏は気狂いである」というものと「信頼」であるとハックル氏は言います。
特に後者の「信頼」が重要で、炎上後にはハックル氏の首尾一貫性にキラキラした信頼が残るのだそうです。

このように、自分自身がどのような人物であるのかを周囲に知らしめる言動を「ポジショニング」と言い、多くの人が無意識に行なっているこの「ポジショニング」を意識的に演出すること、さらにはそれを「気狂いゾーン」に寄せていくことがクリエイターには求められるとハックル氏は説きます。



後半

洗練された世界観を導き出す

後半では、物語をいかにして作るかということについて、ジョセフ・キャンベル(Joseph Campbell)の神話論をフォーマットとして製作する手法が紹介されました。
※神話論の詳細は省きます。
そしてこの構造に則って作られたコンテンツで有名なものとして、映画「スター・ウォーズ エピソード4」や小説「第九軍団のワシ」などが挙げられました。

この手法を採ることで物語の組み立てが容易になる反面、世界観が陳腐なものになりがちなため、さらにここでは、物語のテーマ設定が重要になるとして、洗練された世界観を生み出すためにはどうすべきかについて論じられます。


問題解決思考

前回の授業で、物語の役割が「恐怖の緩和」であることを学びました。
なぜ人々が恐怖を感じるのかといえば、ある種の類型を持った人間に無意識の不安を感じるからに他なりません。
そこでクリエイターは、その無意識の不安を炙り出すことが必要になるのだとハックル氏は言います。
そして、そのセンサーの感度を高める在り方として「オーバーフロー」状態を目指すということが提示されます。

ハックル氏はオーバーフロー状態を目指すに当たり、シシューポスの神話を引き合いに出します。

"神の罰により大岩を山頂まで押し上げるシシューポス
でも、やり遂げるとゴロゴロ麓まで転がされて
ハイ、もう一回といわれる
非常に不毛な訳だが
やってるうちに気持ちよくなったシシューポスが喜々として山を駆け下りていくという様なお話"
シシューポスの神話とは #hatenakeyword http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%B7%A5%E5%A1%BC%A5%DD%A5%B9%A4%CE%BF%C0%CF%C3

その一見無意味に思えることにクリエイティビティを見い出す心性や、夢中になっているオーバーフロー状態を実生活の中で得る方法として、ハックル氏は「掃除」を挙げます。
掃除をしても結局はまた汚れるけれど、それでも夢中になってやるということが重要なのだと説きます。

そんなハックル氏が発見した、問題解決思考を鍛える3つのケース、
・自分のダメさの虜になったお笑い芸人
・倒錯した価値観のジェンダー研究家
・堀江氏(ホリエモン)に対してルサンチマンを持つワナビー
が紹介されました。

これらの人物それぞれについてハックル氏が行った分析に、簡単に触れたいと思います。

・自分のダメさの虜になったお笑い芸人
人は自分のダメさの虜になってしまうことがある。
自分の弱さを知っていることが素晴らしいと思っているために、いつまでたっても成長しない。
そこから抜け出すためには自分をフラットに見る、三人称で自分の短所や長所を語る視点を持つ。

・倒錯した価値観のジェンダー研究家
年齢はジェンダー的な問題ーー女性は若さに価値があるという風潮ーーがあるため隠したいが、嘘は吐きたくないという倒錯した価値観を抱えていることが、Twitterのプロフィールで年齢を「60年代生まれ」と記すことに現れている。
Twitterはこのような一貫していない人が自己満足している場である。
Twitterで問題を見つける能力を磨くことができる、なぜならTwitterは価値がない人間が醸成される土壌になっているからである。
自分自身をリトマス試験紙として、問題を炙り出す視点が必要。

・堀江氏(ホリエモン)に対してルサンチマンを持つワナビー
ホリエモンという存在に対して「なんであんなやつが」「ホリエモンは悪いことをしている」というルサンチマンを持つ。
自分は運がなく、もっと恵まれるべきで、様々な局面において、相手が自分に合わせるべきなどと考えるためにうまくいかないという悪循環に陥る。
救いようの無い人物ではあるが、社会の中で敗者となり、汚濁を飲んでくれているという側面もある。

クリエイターとしては、なぜそのような問題を抱えるに至ったのかを掘り下げていくことで、そこに隠れている深遠な哲学を伴った物語のテーマを見出すことができるのだと、ハックル氏は説きます。


まとめ

クリエイティブであるためにはアンコントローラブルと向き合う、コンダクターである、自分を消すというマインドを以って、気狂いゾーンに特攻んでいくことが大事だよ!

物語の型を使うと作品を作りやすいけど、洗練されたテーマを設定するには、無意識の不安をに対するセンサーを磨いて、問題を掘り下げていくことが重要だよ!


終わりに
コンテンツを作るための考え方ばかりでなく、物事の本質に迫ったりクリエイティブに向き合うための在り方みたいなものが併走しながらどんどんと深みを増していくというか、不可侵領域に入っていくというか、すごくワクワクする内容になってきました。

この授業の内容の90%くらいは包み隠さずお伝えしていると思います。
こういった形で公開することを許可してくださっているハックル氏の寛大さに感謝しつつ、残り4回となってしまった第一期授業に臨みたいと思います。

最後になりましたが、ハックル氏ご本人も告知されていたように、11月8日(土)に「岩崎夏海のエンタメサロン2014年秋」が開催されます。
このブログを読んで興味を持った方は是非ご参加ください!
もちろん僕も参加予定です!


最後までご覧くださいましてありがとうございます!

またあそぼーね!

岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html

2014年10月18日土曜日

岩崎夏海クリエイター塾 第七回に参加してきました!


皆さまこんにちは、波乗りたいしです。

2014年10月4日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第七回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。

前回(第六回)のブログをハックル氏がTwitter上で紹介してくださいました。
その中で、「知の向上」について語られております。








継続してハックル氏のコンテンツに触れていると、折にふれて「つながる」感じを得ることがあります。
同じ目的地でも道は複数あり、同じことを別の見方で見たり、同じことを言っているけど別の文脈で語られたりするので、いつも新たな学びがあるように感じます。

ハックル氏が塾やブロマガで伝えようとしていることは、そう簡単には身につかないでしょう。
しかし、だからこそやる価値があると思いますので、心して臨みたいと思います。


さて、今回の宿題は、「映画『ゴッドファーザー(1,2,3)』を見てくること」ということでした。
授業と授業の間は2週間ありますが、全編観ると9時間の超大作はかなりのボリューム。
小説版(上・下)も読みたかったのですが、結局上の後半、2部の始めまでしか読めませんでした。

週末に見たい映画#003「ゴッドファーザー」(2,222字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar25538

そして、授業はどうだったのかというと?



ツイート内容に訂正があります。
(訂正)
岩崎夏海クリエイターサロン

岩崎夏海エンタメサロン


衝撃のゴッドファーザーへの言及ゼロ。
ハックル氏のスタンドが「ザ・ワールド」であることが判明しました。

しかし、そんなことも忘れてしまうくらいの充実の授業内容。
そして今回のレポートをまとめていて、すごく感じたのは「シャーマン」としてのハックル氏の能力がとてつもないものであるというでした。

シャーマンとは古代から続く最も伝統ある職業の一つなのだけれど、その場の空気を読んで居合わせた人々に最も必要とされている言葉を述べるということを仕事としていた。
シャーマンとして生きる(2,832字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar15110


今回の文脈で言えば、ハックル氏がシャーマンたることというよりも、「クリエイターはシャーマンたるべし」というお話しでしたが、最近のブロマガニコ生で垣間見るハックル氏の「シャーマン力」がかなり大きくなってきているように感じていましたので、当ブログをご覧の皆さまにもその辺りを感じて欲しいと思い、ご紹介させていただきました。


それでは本日のメニューはこちら!

前半

  • 物語とはなにか
  • 名前を与える
  • センサーを磨く生き方
  • センサーを磨くと世の中が分かる

後半

  • 実践編



前半

岩崎夏海クリエイター塾・第二回の授業で、クリエイションとは「換骨奪胎」であるというお話しがあり、以来、物語(価値の定まったコンテンツ)の構造を紐解く作業を通して価値を知ったり、クリエイターとしてどう在るべきか(プレゼンテーション)などについて学んできました。

因みに、換骨奪胎の段階は下記の通り
1.良いものを見分ける
2.構造を見抜く
3.他のものに移し替える

これまでの授業では、1.良いものを見分ける、2.構造を見抜く、ということに重点を置いて行われてきましたが、今回は、3.他のものに移し替える、という段階に進み、どのようにしてアウトプットに繋げていくのかについて授業が展開されました。
岩崎夏海クリエイター塾、いよいよクリエイションの核心に踏み込みます。


物語とはなにか

そもそも物語とはなにか、物語はなぜ生まれ、社会の中でどのような役割を担ってきたのでしょうか?

それは「恐怖の緩和」

人々が感じる得体の知れないものに対する恐怖を、前述の「シャーマン」が御託宣としての「神話」をソリューションとして提供することで和らげてきたということが原型となっているそうです。

冒頭でもご紹介した「シャーマン」という存在については、過去のブロマガを閲覧することで多面的に捉えることができます。

藻岩高校の講演で思ったこと(2,539字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar346601

「物語」の起源と役割(1,927字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar581396


人間が生きる上で恐怖心のセンサーが強いことが、生存を勝ちとるために必要なものであり、恐怖心の強い者が生き残り、今日の人々にその遺伝子が受け継がれてきました。
しかし、恐怖に縛られてしまうことにより、生きづらくなったり、社会が不安定になってしまうといった弊害があり、恐怖心がコインの裏表のように二面性を持つものであるとハックル氏は説きます。

科学の発展した現代においても、未知への恐怖はなくなりませんが、人は物の道理がわかるとすっきりすることから、そのために物語は与えられ、社会が円滑に運ぶように機能するということでした。


名前を与える

続いてハックル氏から、事象に物語を付与する最もプリミティブな形式はどういうものか、という問いかけがありました。

それは「名前」

何か「もやもやした事象」があり、その正体がわからないことで不安を覚えるとき、名前が与えられることで、人々はえも言われぬ安心を得ることができるそうです。
草食系男子、ニート、オタクを例に挙げ、それぞれ、性欲がない若い男性、部屋に引きこもり学習も仕事もしない、自己の興味に埋没し他人に心を開かないという、周囲から見ると理解不能な人物が増えている不安を解消してきたと解説されました。


センサーを磨く生き方

しかしこのような人物像が、顕在化し名前が与えられる前に認識することは非常に難しいので、とにかく人をカテゴライズしてみるのも一つの方法であると言います。
類型化し、単純化し、まず「分かった気になる」。
それを検証するトライ&エラーの中で、ピンそばにピタッと寄せていくような精度を獲得することができると説きます。

そして、シャーマンたるためには、
人々が無意識に違和感を感じているが、まだ顕在化していない、もやもやしているゾーンに入っていくことが重要で、それには明鏡止水のごとく振る舞い、心の波立ちを分析し、世の中の危機を察知する必要があるとのことでした。

この在り方を学ぶには、隆慶一郎氏の「死ぬことと見つけたり」を読むことが最適であるとのことです。

続いては「定点観測」の重要性についてのお話しがありました。
これは過去のブロマガでも紹介されていました。

長い年月をかけ、ずっと同じ場所から観察し続けるのだ。動き回ってはならない。動いてしまっては、微細な変化には気づけない。亀のように一つところにじっと佇んで、粘り強く観察することでしか、不可逆的な変化には気づけないのだ。
[連載第2回]「もしドラ」はなぜ売れたのか?「時代の潮目を読む方法」(2,700字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar11702

こうした、「センサーを磨く」生活はクリエイターであるためには重要ですが、現代にあって抑制的な生き方をすることは非常に難しいため、プラスアルファの利点を目指すような設定をするといいとのことです。

ハックル氏ご本人の例でいうと、「センサーを磨く」生活のためのアドバイスとなるような本を上梓し、ミリオンセラーを目指す「裏ミリオンセラープロジェクト」があります。

裏ミリオンセラープロジェクト
【特別版】 「『部屋』についてハックルさんと考えた」岩崎夏海(作家)×光嶋裕介(建築家)×井之上達矢...
http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar392044


もう少し身近な例としてダウンタウン・松本人志氏のボウズ頭を挙げ、これを氏なりのセンサーを高める生き方のひとつと分析し、そこから読みとった本質をコントに活かしている例が紹介されました。


センサーを磨くと世の中が分かる

前述のコントにしても、ハックル氏の分析力があってこそ本当の構造に気付けるのであって、ほとんどの人が無意識のうちに受け取っているにすぎません。

さらにハックル氏はシャーマンたるセンサーをもって、盲導犬事件における障害者特権への怨嗟、オニギリマネージャーへの批判やそれにまつわる炎上などの社会で起きている問題の真相に迫ります。

いずれも今までブロマガやニコ生などで一部が語られてきた内容ではありますが、この文脈で改めて語られてしまっては得心せざるを得ません。
これを台本無しでやってるのですから驚きます。
嘘だと思うかもしれませんが、後半までの休憩中に、ハックル氏の演壇に置いてあるメモが目に入ってしまった(決して意図的に覗いたわけではなく)のですが、そこには2、3語の殴り書きしかなく、しかもそのうちのひとつが「二十四の瞳」。
うん、全然関係ない(*´∇`*)
いやぁ、たまげました。


後半
実践編

前半では、シャーマンの社会における役割と、その在り方について学びました。
後半は、より実践的な内容になります。
「もやもやした事象」を顕在化し、社会に提示する役割においては、その困難さは下のような関係になっているそうです。

名前を与える>物語をつむぐ

名前を与えることは非常に難しく、物語をつむぐ方が少しやり易いということで、後半では受講生全員が「物語をつむぐ」ことに挑戦します。
物語は具体的にどのように作っていくのでしょうか。
授業は物語の「企画」を行なうような形で進みます。

過去のブロマガでは、「自信や自負というものをあまり持たないように心がけている」と前置きしながら、企画をすることについて「誰にも負けたくない」という思いを露わにする場面もあったハックル氏。
前半に引き続き、「クリエイター岩崎夏海」が獅子奮迅のごとく躍動します。

物語には必ず「型」があり、基本的な「型」は下のようになります。


  • 主人公がいる(名前がある)
  • 主人公に変化が訪れる
  • 主人公が選択を迫られる
  • 主人公が決断をくだす

この「型」に沿って7、8名の受講生が発表を行ない、それにハックル氏が助言を与える形で、それぞれのフェーズでどのように物語を組み立てるのかを学びます。


・主人公がいる(名前がある)

考え方:主人公はどんなキャラか

主人公を設定するにあたり、「名前に関する感度」という能力について説明がありました。
「名前に関する感度」とは、例えば松本人志氏が映画「ツインピークス」の出演者の名前を出して「『カイル・マクラクラン』てなんかいいよね」と言ったり、富野由悠季氏の「Gのレコンギスタ」が名前ありきで企画されたものであるようなことを指し、「名前に対する感度」が低いとクリエイターには向かないと説きます。

続いて、主人公の性質としては受動的であるほうがよく、能動的に何かを起こそうとすると、フラットではなくテーマになりづらいとのことでした。


・主人公に変化が訪れる
・主人公が選択を迫られる

考え方:どのような変化が起こるのか

鑑賞者の無意識に訴えるためには、現代性のある変化を与える必要があり、常識を疑うような問いかけをすることで深遠な哲学を物語に付与することができると、ハックルは言います。
講義の中でハックル氏から提示された考え方の一例を以下に記します。

弱者として扱われている対象が、実はすでに優遇されすぎているために無意識の反感を買っている。

社会の中で良くないと判断されているものの中にも、善いものとしての一面があったりする。

差別感情はどうあっても生まれてしまうものだが、差別心を持つことに対する罪悪感を持っているので、物語のなかで差別が繰り広げられていたり、その差別が原因で報いを受けたりするとこで、鑑賞者はカタルシスを得る。

本当は蔑みたい対象がいるけど、ほとんどの人は良心の咎から蔑むことができないので、登場人物に投影しその人物を蔑むようにするなど工夫する。


具体例として、小説「ドン・キホーテ」の一場面が紹介されました。
「ドン・キホーテ」は騎士道小説を読み過ぎて気狂いじみた中年男性が、遍歴の旅に出かける物語ですが、その道中、主人公が器量の悪い娼婦に求婚をします。
これを周囲の人が笑うというシーンがあるのですが、娼婦という存在自体をダメなものと指弾したり、娼婦を美化、聖化して捉えてしまう男性の滑稽さを主人公に仮託しているそうです。
さらに、「ドン・キホーテ」は差別感情をくすぐることこそが全てのギャグ、お笑いの源泉であることを教えてもくれているとのことでした。


・主人公が決断をくだす

考え方:どんな選択をするか

主人公がくだす決断は大きく分けて二つあり、「自分が死んで何かを守る」か「何かを捨てて自分が助かる」という生か死かのように極端なものを設定し、自分を犠牲にして信念を通すという選択が順当であるといいます。

なぜなら、人は生きていることに罪悪感を抱えながら生きているので、誰かが厄災の犠牲となることで「カタルシス」を感じてすっきりするからだそうです。

この「犠牲」と「カタルシス」の関係性については、ハックル氏ブロマガをご覧ください。

なぜ人々は御嶽山のできごとに大きな関心を寄せるのか?(2,090字) http://ch.nicovideo.jp/huckleberry/blomaga/ar635587



まとめ

顕在化していないけど人々がもやもやしている事象に対して物語や名前を与えて安心させるのがシャーマン(=クリエイター)の役割なんだ!

シャーマンとしての能力を磨くには抑制的な生活を送るのがいいけど、それだけだとキツいのでプラスアルファを目指すといいよ!

物語には型があって、それに沿って考えるといいよ!で、重要なテクニックが幾つかあって、それは常識を疑う問いかけから始まるよ!



終わりに

授業が終わってようやくゴッドファーザーのゴの字も出なかったことに気がつく充実の内容。
これもまさに「シャーマン」たるハックル氏が、受講生が必要としていることを読みとった賜物ではないでしょうか。
講義終了後は他の受講生の方と個人的懇親会を行ない、ハックル氏のハッスルぶりについて熱く語り合いました。

そんなシャーマン力みなぎるハックル氏が、来る11月8日(土)にエンタメサロンというイベントを行ないます。
ハックル氏という恐ろしいものの片鱗を味わってみてはいかがでしょうか!
岩崎夏海のエンタメサロン 2014年秋


次回は10月18日(土)
宿題は、下記の映画4本を見てくることです。
カッコーの巣の上で
ロッキー
真夜中のカーボーイ
スティング

それではみなさま、またあそぼーね!


岩崎夏海クリエイター塾レポート・リンク集
http://blogger.naminoritaishi.com/p/huckleberry.html