皆さまこんにちは、波乗りたいし(@naminori_taishi)です。
2014年10月18日に渋谷で行われた、ハックル氏こと岩崎夏海氏(以下ハックル氏)の主催する『岩崎夏海クリエイター塾』の第八回に参加したので、レポートをお届けしたいと思います。
前回(第七回)のブログをハックル氏がTwitter上で紹介してくださいました。
いつもありがとうございます。
波乗りたいしさんが、ブログに岩崎夏海クリエイター塾の様子をまとめてくれました。これを読んで気付いたのは、ぼくな結局分かる人には分かるけど分からない人には分からない話し方を選択してるといこと。 @naminori_taishi http://t.co/fiV79lFK3i
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2014, 10月 17
なぜそうしているかといえば、おそらくフィルタリング、つまりぼくに関係のない人が近づいてこないようにしてるということ。ヤクザが怖い顔をしてるのと一緒ですね @naminori_taishi
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2014, 10月 17
もう一つは、相手が自分の中で壁を乗り越えないと、本当の学びにはならないと思ってること。だから、ある程度分かりにくい必要があるんですね。 @naminori_taishi
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2014, 10月 17
自身の話し方を「わかりにくい」と評するハックル氏、そしてそれを受け取るためには、幾つかの壁を乗り越えなくてはいけないと言います。
ただ最近は、「わかりにくい」ことを積み重ねてきたことで、ここに来てわかりやすさに繋がっていく、そんな実感を持っています。
そうでもなければクリエイティブについて教えることは到底出来ないのではないでしょうか。
このジワジワ来る感じ、知的欲求の満たされ方が半端じゃないです。
それでは本日のメニューはこちら!
前半
- アンコントローラブルな要素と向き合う
- コンダクターであれ
- 自分を消す
- 気狂いのすゝめ
- 洗練された世界観を導き出す
- 問題解決思考
前半では、クリエイティブの鍵となる三つの姿勢と、それらを以ってクリエイティブに向かうために避けては通れない、「気狂いゾーン」という領域の存在についてお話しがありました。
アンコントローラブルな要素と向き合う
岩崎夏海クリエイター塾では、これまで過去の「価値の定まった」作品を紐解きながら、「価値とはなにか」を探ってきました。
これら「価値の定まった」作品は、製作における不確実性ーーアンコントローラブルな要素を乗り越えてきており、それは決して偶然ではないとハックル氏は指摘します。
前回(第七回)宿題の、映画「ゴッドファーザー」においては、ヴィト・コルレオーネを演じたマーロン・ブランドが、また、今回の宿題となっていた映画「ロッキー」では、脚本・主演であるシルヴェスター・スタローンの妻がアンコントローラブルな要素となったそうです。
マーロン・ブランドは「セリフを覚えると演技に集中できない」という謎の持論から、演技するときにカンペが用意されたというアンコントローラブルな要素を持っていたものの、当時40歳代で60歳代の設定であるドン・コルレオーネを演じるにあたり、口に綿を含んで演技するという解決策を編み出し、アカデミー賞・主演男優賞に輝きました。
そしてロッキーにおいてシルベスター・スタローンは、自身が主演することについては強情を貫きながら、脚本のエンディングについては妻ーー映画や脚本のプロではないーーに「こんなロッキー嫌いよ」と言われてニューシネマ的な暗い結末からハッピーエンドに変更するという柔軟性をもってアクシデンタルな一言に対応したそうです。
結果、ロッキーはシリーズとして大ヒットし、ニューシネマの終焉とハッピーエンド全盛のアーリーアダプターとなったといいます。
このように、クリエイティブはアンコントローラブルな要素をコントロールすることが必要な営為であり、メイキング映像を見ることが勉強になるとハックル氏は説きます。
コンダクターであれ
では、どのようにコントロールするのか。
このことについては、何故コッポラが30歳でゴッドファーザーを撮れたのかを手掛かりとして話しが進められます。
プロデュースとビジネスを学んでいたコッポラは、映画の製作に当たって信頼と権威を自分の味方にすることの重要性を知っていました。
では、バックボーンとなったのは誰か。
それは、原作者であるマリオ・プーゾであり、この49歳にして遅咲きのベストセラー作家となり、映画業界でも影響力を持っていた人物を味方につけることが、映画の成功に大きな役割を果たしたそうです。
このことを象徴するように、映画の冒頭で表示されるロゴの傍らには「MARIO PUZO'S」の文字が刻まれています。
さらに、いかに人を動かすかという点について、前述のマーロン・ブランドの例を引き合いに出し、信頼して任せることでその人のモチベーションや情熱を引き出すことができると言います。
その人にとってのモチベートは何かを考えるとき、お金や名声は誰もが求めるものであるが、ネガティブな側面もあるため、ポジティブなモチベートを引き出す必要があると言います。
ポジティブなモチベーションにつながるものは、何か。それは、やりがいや変化であるとし、特に人間は変化の奴隷といっても過言ではないとのことです。
変化を演出し、成長を促すコンダクターであれとハックル氏は説きます。
自分を消す
クリエイターを志向する人は、クリエイティブを自身の子供、分身であるという考えに陥りがちです。
これは浅い考えであるとハックル氏は指摘し、「腕のある料理人が、良質な素材を活かすために軽く茹でて塩をさっとふるだけ」のような一種の割り切りを持つべきと説きます。
その姿勢を学ぶのに、「演技」が役に立つとハックル氏は言います。
なぜなら演者の役割は自分を表現するのではなく、他者を表現する、見てきたものを話すようなものであるため、「模写」から始まるからだそうです。
クリエイティブは換骨奪胎であるという前提に立てば、まねることの効用は尽きることがなく、「クリエイティブは演技の中に宿る」ともハックル氏は言います。
この逆に、オリジナリティを大事にするダメなワナビーは、企画などのアイディアはパクってはいけないと思ってしまうし、自分には個性が無いという強迫観念から、人と違うことができない弱さから抜け出すことができないのだそうです。
気狂いのすゝめ
さて、このようにクリエイティブの鍵をつかんでいざクリエイティブに向かうとき、様々な障害が襲ってきます。
そこで必要になるのが、「彼だったらしょうがないよね」という周囲からのコンセンサスを得ることだと、ハックル氏は言います。
では、どのようにコンセンサスを得るのでしょうか。
それは、「気狂いゾーン」に踏み込むことである、とハックル氏は続けます。
「気狂いゾーン」を言い換えれば、「クリエイティブに対するまっとうな狂気」を持つことであり、さらに言えば、命をかけてやっている場面で対立する相手を殺し切ることの重要性を知っているか、ということでもあります。
前述のコッポラやマーロン・ブランドの例を始めとしたクリエイター達は、「クリエイティブに対するまっとうな狂気」という点で結びついていると言います。
そしてクリエイティブな領域は、そのような「気狂いゾーン」に包含されているのだそうです。
クリエイティブ ⊂ 気狂いゾーン
そして、ネット上での炎上について一家言持つハックル氏の直近の炎上案件をもとに、「気狂いゾーン」へ踏み込む具体的と、そこからある種の信頼を得る方法が提示されました。
多くの人がハックル氏に対し、ある「恨み」をもっているとハックル氏は分析します。
それはハックル氏は発言が自由である、という恨みであり、炎上時にハックル氏にアンチコメントを寄せてくる人は、ここぞとばかりに「恨み」を晴らそうとします。
その時にどんなことが起こるかというと、自己の義憤を周囲に見せつけることで彼(彼女)は満足し、恨みが燃焼される。そして恨みが燃焼されたあとで、必ず二つの感情がのこるのだそうです。
それは「ハックル氏は気狂いである」というものと「信頼」であるとハックル氏は言います。
特に後者の「信頼」が重要で、炎上後にはハックル氏の首尾一貫性にキラキラした信頼が残るのだそうです。
このように、自分自身がどのような人物であるのかを周囲に知らしめる言動を「ポジショニング」と言い、多くの人が無意識に行なっているこの「ポジショニング」を意識的に演出すること、さらにはそれを「気狂いゾーン」に寄せていくことがクリエイターには求められるとハックル氏は説きます。
後半
洗練された世界観を導き出す
後半では、物語をいかにして作るかということについて、ジョセフ・キャンベル(Joseph Campbell)の神話論をフォーマットとして製作する手法が紹介されました。
※神話論の詳細は省きます。
そしてこの構造に則って作られたコンテンツで有名なものとして、映画「スター・ウォーズ エピソード4」や小説「第九軍団のワシ」などが挙げられました。
この手法を採ることで物語の組み立てが容易になる反面、世界観が陳腐なものになりがちなため、さらにここでは、物語のテーマ設定が重要になるとして、洗練された世界観を生み出すためにはどうすべきかについて論じられます。
問題解決思考
前回の授業で、物語の役割が「恐怖の緩和」であることを学びました。
なぜ人々が恐怖を感じるのかといえば、ある種の類型を持った人間に無意識の不安を感じるからに他なりません。
そこでクリエイターは、その無意識の不安を炙り出すことが必要になるのだとハックル氏は言います。
そして、そのセンサーの感度を高める在り方として「オーバーフロー」状態を目指すということが提示されます。
ハックル氏はオーバーフロー状態を目指すに当たり、シシューポスの神話を引き合いに出します。
"神の罰により大岩を山頂まで押し上げるシシューポス
でも、やり遂げるとゴロゴロ麓まで転がされて
ハイ、もう一回といわれる
非常に不毛な訳だが
やってるうちに気持ちよくなったシシューポスが喜々として山を駆け下りていくという様なお話"
シシューポスの神話とは #hatenakeyword http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%B7%A5%E5%A1%BC%A5%DD%A5%B9%A4%CE%BF%C0%CF%C3
その一見無意味に思えることにクリエイティビティを見い出す心性や、夢中になっているオーバーフロー状態を実生活の中で得る方法として、ハックル氏は「掃除」を挙げます。
掃除をしても結局はまた汚れるけれど、それでも夢中になってやるということが重要なのだと説きます。
そんなハックル氏が発見した、問題解決思考を鍛える3つのケース、
・自分のダメさの虜になったお笑い芸人
・倒錯した価値観のジェンダー研究家
・堀江氏(ホリエモン)に対してルサンチマンを持つワナビー
が紹介されました。
これらの人物それぞれについてハックル氏が行った分析に、簡単に触れたいと思います。
・自分のダメさの虜になったお笑い芸人
人は自分のダメさの虜になってしまうことがある。
自分の弱さを知っていることが素晴らしいと思っているために、いつまでたっても成長しない。
そこから抜け出すためには自分をフラットに見る、三人称で自分の短所や長所を語る視点を持つ。
・倒錯した価値観のジェンダー研究家
年齢はジェンダー的な問題ーー女性は若さに価値があるという風潮ーーがあるため隠したいが、嘘は吐きたくないという倒錯した価値観を抱えていることが、Twitterのプロフィールで年齢を「60年代生まれ」と記すことに現れている。
Twitterはこのような一貫していない人が自己満足している場である。
Twitterで問題を見つける能力を磨くことができる、なぜならTwitterは価値がない人間が醸成される土壌になっているからである。
自分自身をリトマス試験紙として、問題を炙り出す視点が必要。
・堀江氏(ホリエモン)に対してルサンチマンを持つワナビー
ホリエモンという存在に対して「なんであんなやつが」「ホリエモンは悪いことをしている」というルサンチマンを持つ。
自分は運がなく、もっと恵まれるべきで、様々な局面において、相手が自分に合わせるべきなどと考えるためにうまくいかないという悪循環に陥る。
救いようの無い人物ではあるが、社会の中で敗者となり、汚濁を飲んでくれているという側面もある。
クリエイターとしては、なぜそのような問題を抱えるに至ったのかを掘り下げていくことで、そこに隠れている深遠な哲学を伴った物語のテーマを見出すことができるのだと、ハックル氏は説きます。
まとめ
クリエイティブであるためにはアンコントローラブルと向き合う、コンダクターである、自分を消すというマインドを以って、気狂いゾーンに特攻んでいくことが大事だよ!
物語の型を使うと作品を作りやすいけど、洗練されたテーマを設定するには、無意識の不安をに対するセンサーを磨いて、問題を掘り下げていくことが重要だよ!
終わりに
コンテンツを作るための考え方ばかりでなく、物事の本質に迫ったりクリエイティブに向き合うための在り方みたいなものが併走しながらどんどんと深みを増していくというか、不可侵領域に入っていくというか、すごくワクワクする内容になってきました。
この授業の内容の90%くらいは包み隠さずお伝えしていると思います。
こういった形で公開することを許可してくださっているハックル氏の寛大さに感謝しつつ、残り4回となってしまった第一期授業に臨みたいと思います。
最後になりましたが、ハックル氏ご本人も告知されていたように、11月8日(土)に「岩崎夏海のエンタメサロン2014年秋」が開催されます。
このブログを読んで興味を持った方は是非ご参加ください!
もちろん僕も参加予定です!
今朝のブロマガは無料公開中です。
なぜぼくは教えるのか?(1,749字) http://t.co/eyTWp1eh40 #blomaga
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2014, 10月 31
最後までご覧くださいましてありがとうございます!